日産自動車、仏ルノー、三菱自動車の3社連合(アライアンス)は27日、電気自動車(EV)開発など電動化に向けて、今後5年間で230億ユーロ(約2兆9581億円)を投資すると発表した。
発表資料によると、3社連合は2030年までに5つのEV専用共通プラットフォームを投入することを計画している。同年までに35車種の新型EVを開発し、そのうちの90%の車種がこの共通プラットフォームをベースにする計画だ。共通プラットフォームは小型車や軽自動車、商用車など用途やサイズごとに準備する。
ルノーのジャンドミニク・スナール会長はオンライン会見で、過去数年間の100億ユーロ(約1兆3000億円)を超える電動化投資に対し、今回発表した投資額は「大きな数字」と評価した上で、3社が協調して投資を最適化することができるのが「アライアンスの強み」と語った。
また、3社は30年までにグローバルで220ギガワット時のバッテリー生産能力を確保することを目指し、共通のバッテリー戦略を強化する。昨年11月の時点で日産は自社の目標を130ギガワット時としていた。共通のパートナー企業との協業を通じてコストを引き下げ、バッテリーのコストを26年に50%、28年には65%削減することを目指す。
アライアンスの発表の骨子 |
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・30年に向け、アライアンスはEVとコネクテッド・モビリティに注力 ・26年までにプラットフォームの共用化率を80%まで向上を目指す ・日産が全固体電池の技術開発をリード、28年半ばまでに量産開始して将来的にエンジン車と同等のコストを実現しEVシフト加速 ・ルノーは、一体型の共通電気・電子アーキテクチャーの開発をリード ・26年までに2500万台をアライアンスのクラウドに接続 |
ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生アナリストは法規制が厳格化していく中で、電動化に向けてアライアンスを活用できるのが3社の強みだとし、プラットフォームの共通化などは「発表前から協業を進めていたからできること」だと評価した。一方で、3社とも本業に不安が残るとし、経営を立て直さなければ確実に電動化を進める原資が窮乏することになろうと述べた。
日産は世界に先駆けて量産EV「リーフ」を10年に市場投入したものの、EV販売は伸び悩んだ状態が続いている。その間、世界的な脱炭素の流れは大きく加速し、海外の自動車メーカーはEVシフトを鮮明にさせつつある。
ブルームバーグNEFと調査会社マークラインズのデータによると、20年のEV世界販売では米テスラが前年に続き1位を獲得。独フォルクスワーゲンと中国の上汽通用五菱汽車が前年から大きく台数を伸ばし、それぞれ2位と3位となった。日産は10位で、前年の4位から大きく順位を落とした。
てこ入れが急務となる中、日産は11月に電動化を柱とする長期ビジョンを発表。電動化加速に向け5年間で2兆円を投資する計画を示したほか、15車種のEVを含む23車種の電動車の導入や電池生産能力の大幅な引き上げなどの目標も掲げていた。
この日の会見には各社で最高経営責任者(CEO)を務めるルノーのルカ・デメオ氏、日産の内田誠氏、三菱自の加藤隆雄氏が揃って出席。スナール会長は、過去の危機を乗り越えて今は競争力を高める方向に向かっているアライアンスは「堅固で強く、破壊されることはない」との見方を示した。その上で、今後数週間でアライアンスの競争力向上に向けた新たな発表があると語った。