伊藤純夫

  • 為替市場は円安で反応、政策修正観測の沈静化は不透明
  • 0.25%死守、タイミングに「違和感はない」-IHSマークイット

日本銀行は10日、指定した利回りで国債を無制限に買い入れる指し値オペを発動すると発表し、長期金利の上限0.25%程度の死守と金融緩和の継続姿勢を明確にした。直後の為替市場では円安が進んでおり、黒田東彦総裁らの情報発信に変化が表れるのか、市場関係者は注視している。

日銀が指し値オペを発表、新発10年国債で0.25%-14日にオファー

  インフレ高進に対応するために米欧の中央銀行が金融緩和政策からの転換に乗り出す中で、市場では日銀による緩和修正観測が広がっていた。黒田総裁ら日銀幹部はこれまで、日本の消費者物価が低水準にあることなどを理由に政策修正に否定的な見解を繰り返している。

  IHSマークイットの田口はるみ主席エコノミストは、中期的な金利も徐々に上がってきており、指し値オペ実施のタイミングに「違和感はない」と指摘。先行き海外の金利上昇の影響で国内金利も上昇する可能性があり、「今後もこういったオペレーションを行う可能性はある」と語った。

日本銀行本店Photographer: Toru Hanai/Bloomberg

  日銀は3月に行った政策点検で、長期金利の変動幅が50ベーシスポイント(BP、1BP=0.01%)以内であれば景気への影響は限定的と分析した。若田部昌澄副総裁は3日の記者会見で、上下0.25%内での長期金利変動は「経済に対する影響という意味で望ましくないとは考えていない」と明言していた。

長期金利、「現状の動きを問題視していない」-若田部日銀副総裁 

  日銀が長期金利上昇を抑制する姿勢を明確に示したことで、今後は指し値オペを受けた長期金利の動向に注目が集まる。イールドカーブコントロール(長短金利操作)は長期金利を低水準に抑制することで実質金利を引き下げ、景気を刺激する政策だが、過度な抑圧が「悪い円安」の進行や市場機能の低下につながる懸念がある。

  田口氏は、米国が複数回の利上げに踏み出すとみられている中で、「0.25%という水準をどれだけ死守しなければいけないと考えているのか、今後の日銀のコメントも注目する必要がある」と述べた。