予想を上回る米消費者物価指数(CPI)の伸びを受け、市場では米連邦公開市場委員会(FOMC)が3月の定例会合より前に利上げに動く、または3月会合で0.5ポイントの利上げに踏み切るとの観測が強まっている。だが米金融当局者らは、依然としてそうした選択肢を取ることには慎重な姿勢だ。
米消費者物価7.5%上昇に加速-40年ぶりの伸び率、予想も上回る (3)
物価上昇ペースは年内に鈍化するとの見解をパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が示したのはつい先月のことであり、緊急利上げをすればパニックに陥っているとのシグナルを与え、金融当局がインフレ抑制であまりに大きく後れを取っているとの批判を認めることになりかねない。またパウエル議長はFOMC内でのコンセンサス形成を重視する姿勢を示している。3月15、16両日に予定されている会合より前に急いで行動を起こす必要があるとのシグナルを発している当局者は現在誰もいない。
3月会合より前に利上げすれば、当局の資産購入プログラムの完了前倒しにもつながり、準備できていない国民に打撃を与える可能性が強まる。当局としては3月の政策決定前に一層のデータを入手したい考えだ。
1月の米CPIが前年同月比7.5%上昇と40年ぶりの高い伸びとなったことを受け、FOMCが緊急利上げに動くとの観測が10日に強まった。また短期金融市場では、3月会合での0.5ポイント利上げを織り込む確率が大きく上昇した。
米利上げ、今年7回とトレーダー織り込む-世界的に債券利回り上昇
セントルイス連銀のブラード総裁は10日、ブルームバーグ・ニュースとのインタビューで、7月1日までに合計1ポイントの政策金利引き上げを支持すると表明。それには2000年以来となる0.5ポイントの利上げも含む。
ブラード総裁、大幅利上げを支持-7月1日までに合計1ポイント (3)
ただ中道派の当局者は0.5ポイントの利上げに懐疑的なようで、利上げサイクルの開始時点で積極的に動く必要はほとんどないとの考えを示唆している。
サンフランシスコ連銀のデーリー総裁は10日、マーケットニュースに対し、0.5ポイントの利上げについて「私は望ましいとは考えていない」と言明。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の影響が根強く残っているほか、いつでも行動を起こす用意ができているとの明確なメッセージを当局が既に送っているためだと理由を説明した。「緩和策の引き揚げを市場は既に織り込み済みであり、それはつまり市場が金融当局の明確なコミュニケーションに耳を傾けているということだ」と総裁は語った。
リッチモンド連銀のバーキン総裁も、0.5ポイント利上げに慎重な姿勢を示している。同総裁は0.5ポイント利上げについて「概念的にはオープン」だとしつつ、「現時点でその必要性が際立っていると私は考えているか、それについて確信する必要があるだろう」と述べた。
バーキン総裁、0.5ポイント利上げ「概念的に」オープンでも確信必要
原題:Fed Doesn’t Yet Favor a Half-Point Hike or an Emergency Move(抜粋)