緊張が続くウクライナ情勢をめぐり、ロシア大統領府は、共通点を交渉の過程で探っていくとして、アメリカと安全保障をめぐる交渉を本格的に始めたい意向を示しました。プーチン政権は、近く、安全保障について対応を示すとしていて、当面は、その内容が焦点です。

ウクライナ情勢を巡りロシアのラブロフ外相は、16日、ロシアが重視するNATO=北大西洋条約機構の不拡大をめぐる問題では妥協しないと強調しました。

その一方、ロシアが求めてきた、NATOによる中・短距離ミサイルの配備の制限などに関して「欧米側は、これらの問題について真剣な対話を行う用意があることを表明した。前向きな一歩と見なす」と一定の評価を行いました。

また、ロシア大統領府のペスコフ報道官は、16日「プーチン大統領は、外交交渉を行う意思と準備があることを強調している。共通点は、交渉の過程で探っていかなければならない」と述べ、アメリカと安全保障をめぐる交渉を本格的に始めたい意向を示しました。

一方、ロシア国防省は、15日、ウクライナとの国境近くに展開していた軍の一部の部隊が演習を終えて撤収を始めると発表しています。

アメリカなどは、ロシアとの交渉を具体的に進めるためにはロシアが軍の部隊をまず撤収させるべきだとしています。

プーチン政権は、安全保障をめぐり、近く、対応を示すとしていて、当面は、ロシア側が準備ができているとする10ページに及ぶ草案の内容と、これをもとにして交渉が始まるのかが焦点です。

ロシア外務省報道官「米英のメディアが偽情報」

アメリカがロシアによる侵攻の可能性はまだ十分ありえるなどとしていることについてロシア外務省のザハロワ報道官は、16日自身のSNSで「偽情報を流すアメリカやイギリスのメディアには、ロシアによる「侵攻」の次の計画がいつかぜひ教えてほしい。私はその日に休暇をとりたい」と痛烈に皮肉りました。

G7 緊急の外相会合へ

G7=主要7か国の議長国ドイツは、緊張が続くウクライナ情勢を受けて、今月19日に緊急の外相会合を開催すると発表しました。

外相会合は、今月18日から20日にかけてドイツ南部で開かれる「ミュンヘン安全保障会議」にあわせて行われ、各国の緊密な連携を確認するとしています。

イギリス外相がウクライナなど訪問へ

イギリスのトラス外相は、ウクライナやポーランド、それにドイツを今週、訪問すると発表しました。

一連の訪問で、ウクライナのクレバ外相やポーランドのラウ外相と会談し、ウクライナへの支援を改めて表明し、ロシアによる侵攻に反対する立場を一致して打ち出したいとしています。

また、G7=主要7か国の緊急の外相会合や国際会議が開かれるドイツのミュンヘンを19日に訪れるということです。

トラス外相は、「ロシアに対しては、外交の道を選ぶよう促したい。しかし、侵攻の道を続けるのであれば、ロシアにとって経済的なコストを伴う大きな結果をもたらし、国際社会からものけ者にされるだろう」などという考えをウクライナで予定している演説で表明することにしています。

ウクライナ「国民統合の日」で屈しない姿勢

ウクライナの国境周辺でロシア軍が大規模な部隊を展開させ緊張が続く中、ウクライナ政府は16日を「国民統合の日」に制定し、人々が団結してロシアからの圧力に屈しない姿勢を示しました。

このうち首都キエフでは市内に多くの国旗が掲げられたほか、広場や沿道に市民が集まって国歌を歌うなどし、国の独立と主権を守ろうと訴えていました。

集会に参加した男性は「団結こそ私たちの強さだ。ウクライナは必ず勝利する」と力を込めていました。

また、別の男性は、ロシア軍の一部が撤収したと伝えられていることについて「実際に撤収していればいずれ明らかになるはずだが、状況ははっきりしない」と話し懐疑的な見方を示していました。

モスクワ市民「挑発しているのはアメリカ」

一方、プーチン政権の動向が注目される中、ロシアの首都モスクワでは市民の間からさまざまな声が聞かれました。

このうち女性の1人は「挑発しているのはアメリカのほうだ。いつも、あらゆる挑発行為を組織的に行ってきた」と話し、アメリカこそが、軍事的な緊張を高めているとして批判していました。

一方、高齢の男性は、プーチン大統領がアメリカなどと協議を続ける姿勢を示したことについて「平和的な交渉に向けた動きが始まったことは良いことだ」と話し、外交によって事態が打開することに期待を寄せていました。

またウクライナ人の友人が多くいるという女性は「人々が冷静に考え、軍事行動を起こさないことを願う。戦争はあってはならないことだ」と話していました。