ロシアによる軍事侵攻でウクライナ情勢が緊迫する中、政府は24日の参院予算委員会の合間を縫って国家安全保障会議(NSC)を開催した。立憲民主党が審議を一時中断して政府対応を優先する「政治休戦」を申し出たのを受けたものだ。立民に背中を押された形で、事態急変に機敏に対応できない政府・与党の動きの鈍さが目立った。
「かなり緊迫した状態だ。国家安全保障会議を今すぐに開くべきではないか。私たちは柔軟に対応する」。立民の蓮舫氏は午後の予算委で質問に立つとこう切り出し、政府が情報収集や邦人保護の取り組みなどを急ぐなら協力すると提案した。
国内外のメディアは同日昼ごろ、ロシアのプーチン大統領がウクライナへの軍事行動を発表したと報じるなど、局面が大きく変わったことを相次いで伝えていた。蓮舫氏の発言はこうした切迫した状況に即したものだった。
これを受け、予算委は休憩となり、政府は首相官邸でNSCを開催。約1時間10分後に予算委は再開され、首相は「ご配慮いただいたことに感謝申し上げる」と謝意を示した。
緊急事態の場合、真っ先に情報が入ってくる政府が与党に審議中断を含めて打診し、与党が水面下で野党に働き掛ければ、より迅速に対応できた可能性もある。
ただ、今回は「そうした段取りを付けていなかった」(自民党関係者)という。むしろ、立民側の政治休戦の申し出に対し、参院自民党は一時、予算委の再開を急ぐよう現場に指示していた。
自民党幹部の一人は「国会対応が下手だ」と顔をしかめた。別の幹部も「ぐだぐだだ。事前に野党に『国際情勢が緊迫しているので柔軟に対応してもらいたい』とこちらから言っておくべきだった」と声を落とした。
北朝鮮が弾道ミサイルを発射した2017年3月にも、旧民進党の提案で参院予算委がいったん休憩となり、NSCが開かれたことがある。旧民進の流れをくむ立民としては、危機管理能力をアピールした形だ。予算委の野党筆頭理事を務める立民の白真勲氏は記者団に「人命優先。国益を考え、しっかり対応すべきだ」と語った。