【モスクワ時事】ロシアの国営通信社がロシア軍のウクライナ侵攻開始の2日後に誤って配信した、戦勝を前提に準備されたとみられる論説記事が、プーチン大統領の本音を反映していると内外で話題になっている。記事は直ちに削除されたが、プーチン氏が安全保障上の理由からではなく、ウクライナはロシアの一部になるべきだという一方的な歴史観に基づいて侵攻に踏み切ったことを示唆する内容だった。
ロシア大統領「要求すべて満たせ」 ウクライナ停戦協議、譲歩せず
政権の意向を代弁する国営ロシア通信は、2月26日に「ロシアと新たな世界の到来」と題する記事を配信した。記事は「ロシアは歴史的完全性を回復しつつある」と主張。「ロシアの軍事作戦はウクライナに新たな時代を開いた」と強弁した。
また、ロシアとウクライナが分かれた1991年のソ連崩壊を「われわれの歴史における大惨事」と表現し、「一時的な分離を長期にわたって許せば、先祖の記憶を裏切るだけでなく、子孫から呪われるだろう」と強調。「プーチン氏はウクライナ問題の解決を次世代に委ねない歴史的責任を自ら負ったのだ」と持ち上げている。
さらに、戦勝を前提に「今や問題はない。ウクライナはロシアに戻ったのだ」「ロシア世界の一部としての自然な状態に戻される」といった記述が並んだ。
プーチン氏は軍事作戦決行の理由として、ウクライナの政権が東部の親ロシア派に対しジェノサイド(集団虐殺)を行っており、ロシアの安全保障も脅かされていると主張した。しかし実際には、歴史的に関係が深い「兄弟国」のウクライナを勢力圏に引き戻し、ロシアを中心とした「帝国」を築く野望を持っていると疑われている。プーチン氏は昨年7月、両国の「歴史的一体性」に関する論文も発表していた。
東スラブ民族を中心とするロシア、ウクライナ、ベラルーシは、9世紀末からキエフを中心に成立したキエフ公国を源流に持つ。キエフ公国は10世紀にキリスト教を国教として栄えたが、モンゴルの襲来で13世紀に滅んだ。その後、モスクワ大公国が台頭。モスクワが政治の中心地となり、ロシア帝国の成立へとつながった。