[東京 16日 ロイター] – 岸田文雄首相は16日夜の記者会見で、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアに対する追加制裁措置として、貿易上の優遇措置を保障する「最恵国待遇」の撤回を表明した。日本勢が権益を一部保有するサハリンの石油・ガスプロジェクトに関しては「エネルギー安定供給上、重要」との認識を示し、エネルギー安全保障を考慮しながら、可能な限り主要7カ国(G7)と同調して制裁措置に取り組むと語った。
ロシアに対する追加制裁として、「最恵国待遇」撤回のほか、輸出入管理の一段の強化、資産凍結の対象範囲拡大、デジタル資産による制裁回避への対応なども実施する。
一方、日本企業や経済産業省が権益を保有するサハリンの石油・ガスプロジェクト「サハリン1」「サハリン2」に関し、「長期的に低価格でエネルギーを調達できる権益をわが国がもっているプロジェクト」であり、「エネルギー安定供給上、重要」だと述べた。
その上で「エネルギー安全保障の観点をしっかり追求しながら、可能な限り制裁措置をG7に同調させていく、こうした取り組みを進めていきたい」と語った。
岸田首相は、ウクライナ情勢における中国の役割に関して「一刻も早くロシアの侵略を止め、ロシア軍を撤退させるために、国際社会は結束しなければならない。国際秩序のありようが問われている事態において、中国にも責任ある行動を求めたい」と述べた。
<円安は消費者に負担増も、価格上昇の要因は円安より原材料価格>
岸田首相は、外為市場での円安が経済に与える影響について、一般論として「輸出企業の収益が改善する一方、輸入物価の上昇を通じて中小企業や消費者の生活には負担増となり得る」と指摘した。
一方、足元の輸入物価上昇は、世界的な原材料価格上昇の影響の方が大きいとの見方を示し、今後とも「原油価格や原材料価格、食材価格の状況を注視しながら機動的な政策を用意していくことが重要」と話した。
燃油高騰対策としては、政府が決定した緊急対策の効果をまずは確認する必要があると指摘。今後さらに価格が高騰する状況になった場合は、「トリガー条項を含めあらゆる方策を排除せず、何が最も効果的な方策か検討したい」と述べた。
<「第6波の出口見えてきた」、18都道府県のまん延防止を解除へ>
岸田首相は、新型コロナウイルスについて「第6波の出口ははっきりみえてきた」と述べ、新型コロナウイルス感染拡大防止のため18都道府県に適用している「まん延防止等重点措置」について21日の期限で解除する方針を示した。
まん延防止措置を解除するのは、北海道、青森、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、石川、岐阜、静岡、愛知、大阪、京都、兵庫、香川、熊本の18都道府県。来週21日の期限で終了する。約2カ月半ぶりに全国で重点措置がとられていない状況となる。
新型コロナウイルス感染症への4回目のワクチン接種については、必要量を確保できる見通しだとし、コロナ治療薬について300万回分を新たに確保すると表明した。
観光支援策「県民割」は4月1日から地域ブロックへと拡大する一方、全国的なGoToキャンペーンの再開は慎重に検討すると述べた。
(杉山健太郎、竹本能文)