【ブリュッセル時事】ロシアのウクライナ侵攻開始から1カ月の節目で訪欧したバイデン米大統領は26日、ワルシャワで演説し、「民主主義と専制主義」の対決を前面に打ち出し、戦い抜く覚悟を示した。だが、ウクライナで戦闘が終結する兆しは見えず、難民の急増により人道危機は深まっている。バイデン氏が目指す「民主主義の勝利」に向けて、同盟国や友好国の結束をいかに維持するかが焦点となる。
◇続く冷戦
「ウクライナはロシアの勝利とはならない」。演説に集まったウクライナやポーランドの人々を前に、バイデン氏はこう断言した。また、ロシアとの対決を「自由と抑圧、ルールに基づく秩序と暴力による統治との戦いだ」と位置付けた。
演説では、ポーランド出身のローマ教皇で東欧の民主化運動の精神的支柱となった故ヨハネ・パウロ2世の言葉や、1989年のベルリンの壁崩壊などに触れ、冷戦時代の東西対立に言及。「民主主義のための戦いは冷戦終結で決着しなかった」と語り、ウクライナを支援する民主主義国の団結を呼び掛けた。
◇日欧の緩み警戒
ロシア軍の侵攻は想定通りに進展しておらず、「戦闘はしばらく続く。数週間、数カ月かかることもあり得る」(米シンクタンク外交問題評議会のグラハム特別研究員)という見方が出ている。バイデン氏は24日、ブリュッセルで記者会見し、「制裁を維持し、今後数カ月、年内は継続していく。それが彼(プーチン・ロシア大統領)を止めることになる」と語った。事態の長期化をにらみ、「最も重要なことは結束し続けることだ」とも指摘した。
長期戦を見据える上で米側が警戒するのが日米欧の結束の緩みだ。欧州諸国にはエネルギーをロシアに大きく依存する国がある。日本もロシア極東サハリン沖の資源開発に権益を持つ。バイデン氏が結束を声高に叫ぶのは、足元が盤石ではないことの裏返しでもある。
◇1カ月で難民400万人
東欧各国で懸念が強まるのが戦火を逃れるウクライナ難民の存在だ。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、ウクライナから周辺国への難民は侵攻1カ月で400万人近くに達しようとしている。
25日、ポーランド南東部ジェシュフでバイデン氏に難民の状況を説明した米国際開発局(USAID)のサマンサ・パワー局長は「第2次大戦以来、最悪の国外脱出だ」と人道危機の懸念を伝えた。バイデン氏も26日の演説で「民主主義国全てが難民支援の責任を持つ」と訴えた。