【ジュネーブ=森井雄一】ウクライナに侵攻したロシア国内で事業を継続する多国籍企業への批判が強まっている。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領がこうした企業を演説で名指しし、ネット上で不買運動の呼びかけが広がるケースもあり、各社が対応に苦慮している。
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「ウクライナの子どもたちが死に、街が破壊されても、ロシアでのビジネスが成り立っている」
スイスで19日に開かれた反戦集会にオンラインで参加したゼレンスキー氏は、同国の食品大手ネスレを非難した。これに呼応して、ツイッターには、「ウクライナ侵攻へのスポンサーをやめろ」「我が家にネスレ製品はいらない」といったメッセージが並んだ。
ロイター通信によると、ネスレのロシアでの昨年の売上高は17億スイス・フラン(約2200億円)に上る。ネスレはロシアの侵攻後、投資や広告を中止するなど事業を大幅に縮小する一方、「従業員の雇用に対する責任がある」として現地工場の稼働は続けた。だが批判の高まりを受け、チョコレート菓子「キットカット」といった商品の大半を販売停止にするなど、追加の対応を余儀なくされた。
「撤退計画はない」としていたオーストリアの銀行ライファイゼンは、ゼレンスキー氏から名指しされると一転して「撤退検討」を米メディアに明らかにした。英食品・日用品大手のユニリーバや米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)、仏製薬大手サノフィなども批判にさらされた。
「戦争を止めるためには、暴力以外のあらゆることを実施すべきだ」と強硬な対応を求める専門家は多い。多国籍企業は、ロシア市場を失うリスクと、事業継続でこうむる悪評との間で厳しい判断を迫られている。