ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる10日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
“ロシア軍 被害大きく大規模部隊の確保は困難” 米シンクタンク
アメリカのシンクタンク、「戦争研究所」は9日、ロシア軍がこれまでの戦闘で大きな被害を受けているなどとして、今後数か月にわたって、ウクライナ東部で大規模な部隊を確保するのは困難だと分析しています。
特に、ウクライナの首都キーウ周辺から撤退した部隊は、戦闘する能力をほとんど失っていると分析しています。
また、ロシア軍は士気などの面で深刻な問題に直面しているとし、ウクライナ東部での今後の作戦には大きな疑問が残るとしています。
ウクライナ東部 大規模な車列が移動 衛星画像が公開
人工衛星を運用するアメリカの企業「マクサー・テクノロジーズ」は、ウクライナ東部で大規模な車列が移動している様子を捉えた衛星画像を公開しました。
この画像は8日、第2の都市ハルキウから東に80キロほど離れた、ロシア軍が掌握しているとみられる地域で撮影されたものです。
画像には、装甲車やトラックなど多数の軍用車両が南へ向かって連なって移動している様子が写っていて、車列は少なくとも12キロに及んでいるということです。
ワシントンのシンクタンク「戦争研究所」のバロス研究員は、この画像についての分析をツイッタ-に投稿し、写っているのはロシア軍の装甲車やトラックなどだとしたうえで、ロシア軍が軍事作戦の重点を移しているとする東部のドンバス地域に向けて移動しているとみられるとしています。
ウクライナ代表団「東部で勝ち実質的な交渉の立場を」
ウクライナ代表団のポドリャク大統領府顧問は、9日夜に出演した国内のテレビ番組の中で「大規模な戦闘のための準備はできている。東部ドンバス地域などで戦闘に勝たなくてはならず、そうなってから実質的な交渉の立場を得ることができる」と述べ、徹底抗戦を続ける考えを示しました。
そのうえで「大統領どうしはそのあとに会談を行うだろう。実現には2週間かかるかもしれないし、3週間かかるかもしれない」と述べました。
ゼレンスキー大統領「外交で解決の機会あるなら逃したくない」
ウクライナでは、避難するために多くの人が集まっていた東部の駅がミサイルで攻撃を受けて子ども5人を含む合わせて52人が死亡するなど、市民の犠牲が増え続けています。イギリス国防省は、ロシア軍が市民を巻き添えにする危険性が高いインフラ攻撃を続け、道路脇に仕掛ける簡易の爆弾も使っていると分析し、ロシアへの非難がさらに強まっています。
ゼレンスキー大統領は9日、首都キーウの大統領府でAP通信のインタビューに応じ「国民に拷問を加えた人たちと誰も交渉を望んではいない」と述べる一方「外交で解決する機会があるのなら逃したくはない」と強調し、ロシア軍による攻撃で市民が巻き込まれる中でも交渉を通じた停戦は模索していく姿勢を示しました。
そのうえでゼレンスキー大統領は「要衝マリウポリや東部地域の戦闘で立場が強くなれば交渉のテーブルが近づき、有利な交渉ができる」と述べ、停戦交渉で弱い立場に置かれないようロシアへの反撃を続けるとして、欧米に対しさらなる軍事支援を求めました。
ブチャから避難の女性「ロシア兵の行為 人間のものとは思えず」
多くの住民が犠牲となったウクライナの首都キーウ近郊のブチャから隣国ポーランドに逃れたタチアナ・ガルクーシャさん(26)が7日、NHKのインタビューに応じました。
ガルクーシャさんは、ロシア軍がウクライナに侵攻した2日後のことし2月末、身の危険を感じて家族とともに車で避難。避難した時の様子を振り返り、「移動している途中、前方から炎上しながら道を逆走する車を見ました。乗っている人は生きていないようで、彼らを救うことはできませんでした。自分たちも同じ目にあわないよう無事に避難できるよう祈りながら移動しました」と話しました。
そしてブチャの状況について、現地に残っていた住民から聞いた話として「住民たちは長くシェルターに隠れていたため食料や水がなくその場で多くの人が亡くなりました。また、亡くなった人の遺体に爆弾がしかけられていることもあり、遺体を埋めようと持ち上げただけで爆発し、犠牲になる住民もいました」と証言しました。
さらに、「ロシア兵が子どもたちの目の前で親を撃ち殺すケースもありました。彼らは『ロシア側の主張を認めれば命は奪わない』などと子どもたちに迫ったといいます。残された子どもたちはこれからどうやって生きていけばいいのでしょうか。ロシア兵の行為は人間のものとは思えずまるで獣のようです。人の命を軽んじているとしか思えません」と語り、ロシア兵の残虐行為に対し怒りをあらわにしました。
ウクライナ内相“多くの家に爆発物 恐ろしい状況“
ウクライナの公共放送は動画投稿サイト、ユーチューブで現地の状況を連日、英語で国内外に発信しています。9日に公開された放送では、東部ドネツク州のクラマトルスクで、8日、鉄道の駅がミサイル攻撃を受け、子ども5人を含む少なくとも52人が死亡したことについて取り上げています。
また北部のチェルニヒウ州ではロシア軍から銃撃を受けた複数の遺体が見つかったとしていて、両手を縛られていたり後頭部を撃たれたりしているケースもあると伝えています。
さらに首都があるキーウ州では専門の部隊がこれまでにおよそ1万にのぼる爆発物の処理にあたったとしています。現地を視察したデニス・モナスティルスキー内相は連日、4000を超える爆発物を発見しているとしたうえで「多くの家に爆発物が仕掛けられている。恐ろしい状況だ」と話しています。
英 ジョンソン首相 キーウでゼレンスキー大統領と会談
イギリスのジョンソン首相は、9日、ウクライナの首都、キーウを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談しました。イギリスの首相官邸によりますと、会談で、ジョンソン首相はウクライナに対するさらなる軍事支援として、装甲車両120台や、対艦ミサイルシステムなどを供与する方針を伝えたということです。
ジョンソン首相は、前日の8日、対戦車ミサイルなど1億ポンド、日本円で160億円余りに相当する軍事支援をすでに打ち出しています。またゼレンスキー大統領もイギリスによる支援に謝意を示したうえで「制裁という形でロシアに圧力をかける必要がある。そして、いまこそロシアのエネルギー資源を完全に禁輸するときだ」と各国に強く呼びかけました。
ジョンソン首相のキーウへの訪問は、EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長とボレル上級代表に続くもので、ロシアによる軍事侵攻後、G7=主要7か国の首脳としては初めてです。
“避難民への資金協力を” 各国が1兆2000億円余の支援表明
ロシアによる軍事侵攻によって住まいを追われ、ウクライナの国内外に避難している人たちへの資金協力を呼びかける会合が9日、ポーランドの首都ワルシャワで開かれました。会合はEU=ヨーロッパ連合とカナダの呼びかけで開かれ、EUのフォンデアライエン委員長は、大勢の市民が殺害されているのが見つかったウクライナのブチャを前日に訪れたことに触れ「ブチャのひどい状況にはことばもない。ウクライナの人々は私たちの自由のために戦っている。ウクライナのために立ち上がろう」と述べました。会合では各国政府や企業などが合わせておよそ90億ユーロ、日本円で1兆2000億円余りの支援を表明しました。
少なくとも市民1766人が死亡 国連人権高等弁務官事務所
国連人権高等弁務官事務所は、ロシアによる軍事侵攻が始まったことし2月24日から今月8日までに、ウクライナで少なくとも1766人の市民が死亡したと発表しました。このうち139人は子どもだということです。また、けがをした人は2383人にのぼるということです。多くの人たちは砲撃やミサイル、空爆などによって命を落としたり、負傷したりしたということです。
今回の発表には、ロシア軍の激しい攻撃を受けている東部マリウポリなどで、確認がとれていない犠牲者の数は含まれておらず、国連人権高等弁務官事務所は、実際の数はこれよりはるかに多いとしています。
444万人余が国外に避難 国連難民高等弁務官事務所
UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、8日の時点で444万人余りとなっています。主な避難先はポーランドがおよそ256万人、ルーマニアがおよそ67万人、ハンガリーがおよそ41万人、モルドバがおよそ40万人などとなっています。またロシアに避難した人は、およそ38万人となっています。