【イスタンブール時事】ウクライナに侵攻するロシア軍は10日、東部を中心に都市への攻撃を続けた。ウクライナのベネディクトワ検事総長は英スカイニューズ・テレビに対し、これまでに北部キーウ(キエフ)州で1222人の遺体が見つかったと明らかにした。東部は砲撃などで犠牲者が増えている。プーチン政権は作戦全体を統括する総司令官を任命。5月9日の旧ソ連の対ドイツ戦勝記念日を1カ月後に控え、「成果」を得る狙いとみられる。
8日に駅がミサイルで攻撃された東部クラマトルスクでは、住民がバスなどで避難を急いだ。広範囲で被害が出たことからクラスター弾使用説が消えていない。
英BBC放送は9日、クリミア半島や南部チェチェン共和国などを管轄するロシア軍の南部軍管区(司令部ロストフナドヌー)トップのアレクサンドル・ドボルニコフ上級大将が、ウクライナ侵攻の総司令官に任命されたと伝えた。これまでは調整役がおらず、各方面がそれぞれ作戦を担っていたとされる。
上級大将は、ショイグ国防相らと並ぶ階級。BBCによると、ドボルニコフ氏は2015年からのシリア軍事介入の総司令官として「豊富な経験」(欧米当局者)を有する。内戦で市民の犠牲を顧みず、弱体化したアサド政権の形勢挽回を指揮した軍人だ。
プーチン政権は首都キーウを含む北部の短期制圧に失敗し、ロシア軍は「重大な損失」(ペスコフ大統領報道官)を被った。このままで「戦勝ムード」を醸成するのは難しく、確実な「戦果」を得ようと、東部の親ロシア派支配地域の周辺を総攻撃するという見方が強い。