ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地で、ロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。
戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる13日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
ウクライナから国外に避難した人465万人余
UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、12日の時点で465万人余りとなっています。
主な避難先は
▼ポーランドがおよそ267万人
▼ルーマニアがおよそ71万人
▼ハンガリーがおよそ43万人
▼モルドバがおよそ42万人などとなっています。
また、11日時点で
▼ロシアに避難した人は、およそ43万人となっています。
フィンランド NATO加盟申請に前向き スウェーデンも判断の意向
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続く中、フィンランドのマリン首相は、訪問先のスウェーデンで記者会見し、NATO=北大西洋条約機構への加盟申請について、「ロシアによる軍事侵攻を受けてヨーロッパの安全保障の枠組みは大きく変わった。NATOの抑止力でしか安全の保証を得る方法はない」などと述べ、前向きな姿勢を示しました。
今後、議会で議論を進め、数週間以内に結論を出したいとしています。また、マリン首相と一緒に会見を行ったスウェーデンのアンデション首相も、十分な検討が必要だとしたうえで、早急に判断する意向を示しました。
プーチン大統領 “ロシアへの制裁措置 欧米側に跳ね返っている”
ロシアのプーチン大統領は、13日、北極圏の開発に関する関係閣僚との会合に出席し、このなかで「欧米諸国がロシアのエネルギー資源を含む通常の協力関係を拒否したことによって、すでに何百万人というヨーロッパの人々に影響を及ぼしている。エネルギー危機を引き起こし、アメリカにも影響がでている。物価があらゆるところで上昇していて、こうした国々にとって、前例のないことだ」と述べ、ロシアへの制裁措置が欧米側に跳ね返っているとして、強気の姿勢を示しました。
また、プーチン大統領は「ロシアの石油、天然ガス、石炭について、われわれは国内市場での消費を増やし、本当に必要としている世界のほかの国へ供給を増やすことができる」と述べ、制裁に対抗し、ロシアと友好的な関係にある国を念頭に、エネルギーを供給していきたい考えを示しました。
「統制に欠け調整できていないことが侵攻を妨げている」
イギリス国防省は13日、ウクライナの戦況分析を公表し、ロシア軍の活動について「統制に欠け、調整ができていないことがこれまでの侵攻を妨げている」と指摘しています。そして、新たに軍事侵攻の指揮を執ることになったと伝えられているドボルニコフ司令官について、軍の指揮や統制の一元化を図るねらいがあるという見方を示しています。
そのうえで、「ウクライナ軍の強い抵抗に加え侵攻前の非効率な計画で作戦の見直しを迫られていることを証明している」としています。
プーチン大統領が会見で強気の姿勢を示した背景
ロシアのプーチン大統領が12日の記者会見で、強気の姿勢を示した背景について、ロシアの外交・安全保障政策に詳しい笹川平和財団の畔蒜泰助主任研究員は、中国とインドが、欧米の対ロシア制裁に同調していないことをあげています。
畔蒜主任研究員は、プーチン大統領について「全体として強気な姿勢を崩していない。欧米などから制裁を科されてはいるが、『ロシアは孤立化させられない』という強気な発言が際立っていた」と指摘しました。
その背景として、「中国とインドが必ずしも欧米の制裁に同調していないことを念頭に置いている」と述べ、プーチン大統領の主張の根底には「世界は欧米中心ではなく、多極化している」という考え方があると指摘しています。
また、「特別軍事作戦が始まったあと、プーチン大統領が初めて停戦合意の条件について言及したことに注目すべきだ。ただ、ウクライナ側がこの条件をのめるわけがない。プーチン大統領が重要と考える5月9日の戦勝記念日までに問題が解決する可能性は、ほぼゼロだと思う」としています。
そのうえで、「ロシア側としては、それまでにできる限り軍事的な成果をあげることが当面の焦点になる」と述べ、東部を中心にロシア軍の攻撃が激化するという見方を示しました。
イギリスの新聞「タイムズ」が、プーチン大統領がロシアの治安機関の職員およそ150人を解任したなどと報じたことについては、「真実かどうか確かめようがない」と慎重にこたえました。
そのうえで、「これまでにロシア大統領府のペスコフ報道官がロシア軍に相当の被害があったと言っている。また、軍事作戦を統括する司令官を改めて任命したと報じられた。軍事作戦の第1段階が失敗したことを、プーチン政権も認めていることを示しているのではないか」と分析しました。
人工衛星画像 “ロシア軍 東部攻勢で配備か”
人工衛星を運用するアメリカの企業「マクサー・テクノロジーズ」は、ロシア軍の車両などが、ロシア西部からウクライナ東部にかけて展開している様子を捉えた衛星画像を公開しました。
衛星画像などでは、今月11日、ロシア西部、ベルゴロド州のソロティからウクライナの国境に向かう幹線道路などで、軍用の車両やテントが展開されているのが捉えられたとしています。
また、今月12日、ウクライナ東部のハルキウ州のビリフワトカ付近の幹線道路では、ロシア軍の数十の車両が連なっている様子が確認されたとしています。
「マクサー・テクノロジーズ」は、撮影された衛星画像からは戦車なども含まれていることが確認できるとしていて、ロシア軍がドンバス地域での新たな軍事作戦に向けた備えを進めているとみられると分析しています。
ロシア国防省 “東部ハルキウ州のウクライナ軍の施設を破壊”
ロシア国防省は13日、ウクライナ各地をミサイルなどで攻撃し、東部ハルキウ州にあるウクライナ軍の施設を破壊したなどと発表しました。
また、国防省のコナシェンコフ報道官は、東部の要衝マリウポリについて、ロシア軍と親ロシア派の武装勢力の攻撃によって、ウクライナ軍の兵士1000人以上が武器を捨てて投降したと主張し、マリウポリの掌握に向け、戦闘を優位に進めていると強調しています。
一方、これについて、ウクライナ国防省の報道官は「そうした情報はない」としています。
ロシア軍撤退後のブチャの様子は…
多くの民間人の殺害が伝えられた、首都キーウ近郊のブチャに13日、NHKの取材班が入りました。
ブチャは、およそ1か月にわたってロシア軍に占拠され、市長は、殺害されたとみられる400人以上の住民の遺体が見つかったことを明らかにしています。
このうち、中心部にある教会の裏では、これまでに埋葬された57人の遺体が見つかり、ウクライナの検察当局は遺体を掘り起こし、どのように殺害されたのか、また、後ろ手に縛られた痕や拷問された痕などがないか調べていました。
これらの遺体は路上に放置されていたため、住民が収容し、教会の裏に埋葬したということで、さらに数十人の遺体が今も地中に残されているとみられています。
ロシア軍が撤退したあと、ブチャではウクライナ軍による地雷の撤去などが進み、住民が戻り始めているものの、焼け焦げた住宅や原形をとどめないほど破壊された建物が至る所で見られ、激しい戦闘の爪痕が残されています。
ニュージーランド 中央銀行が政策金利を0.5%引き上げ
ウクライナ情勢によって一段と強まっているインフレを抑え込むため、ニュージーランドの中央銀行は、政策金利を0.5%引き上げることを決め、各国の中央銀行が金融引き締めを加速させています。
中央銀行にあたるニュージーランド準備銀行は13日、金融政策を決める会合を開き、政策金利を0.5%引き上げて、1.5%にすることを決めました。
利上げは去年10月の会合から4回連続で、0.5%の利上げ幅は2000年5月以来、およそ22年ぶりの大きさになります。
ニュージーランドでは、先月の食品の価格を示す指数が、前の年の同じ月と比べて7.6%上昇して10年8か月ぶりの高い水準になるなど、物価が一段と上昇していて、中央銀行は声明で「ロシアのウクライナ侵攻が供給網の混乱を悪化させ価格の高騰を引き起こした」としています。
ウクライナ情勢で、世界ではエネルギー価格の高騰などインフレ圧力が強まっていて、各国の中央銀行が金融引き締めを加速させています。
ウクライナ ロシア寄り野党幹部を拘束 捕虜の交換呼びかける
ウクライナの治安当局は12日、フェイスブックに投稿し、ロシアのプーチン大統領と親交が深いロシア寄りの野党の幹部、メドベチュク氏を拘束したことを明らかにしました。
投稿された写真では、迷彩服を着たメドベチュク氏が確認できます。
AFP通信によりますと、メドベチュク氏は軍事機密をロシア側に流出させたなどとして、国家に反逆した疑いで去年から自宅に軟禁されていましたが、ロシアが軍事侵攻を始めた後、逃亡していたということです。
ゼレンスキー大統領も12日、フェイスブックに拘束されたメドベチュク氏の写真を投稿し「特別作戦が行われた。よくやった」などとコメントしています。
さらに、その後公開したビデオメッセージでは、「彼は48日間も隠れていて、ウクライナから脱出しようとしていた」とメドベチュク氏の状況について説明したうえで「ロシアに対し、この男とロシアにいるわが国の少年少女との交換を提案する」として、捕虜の交換を呼びかけました。
隣国モルドバではワイナリーが避難民支援
ウクライナの隣国モルドバでは、国境を越えて避難してきたウクライナの人たちを市民や民間企業が支えています。
国境を接する東部パランカにあるワイナリーでは、戦闘が始まって以降、併設するホテルの部屋を、避難してきた人たちに無償で食事とともに提供しています。
ワイナリーでは、これまでウクライナで育てられたぶどうを仕入れ、モルドバ産と合わせて醸造していたことから、つながりのあるウクライナの人たちの力になりたいと延べ3000人余りを受け入れてきました。
オクサーナ・ブランさん(46)は先月、南部オデーサから2人の子どもなどと逃れてきました。
人づてにワイナリーを知り、連絡したところ受け入れてもらったということで、夫や両親が残っているオデーサにいつでも戻れるよう、ここに滞在しているということです。
ブランさんは、「ここには平和があり、安全な場所に来ることができました」と話していました。
この施設は、ワインを楽しみたい観光客が多く利用していることからワインに合う肉料理などが多く提供されていますが、現在は、避難する子どもたちも食べることができるメニューも用意するよう心がけているということです。
支配人のボトナリさんは、「モルドバで、これだけ歓迎してくれるとは思わなかったと、多くの人たちに感謝の言葉をかけてもらいました。いつまで続けることができるか分かりませんが、1人でも多くの人を助けたいです」と話していました。
ウクライナ大統領「ロシアの作戦 世界の誰も理解できない」
ロシアのプーチン大統領が、ウクライナへの軍事侵攻を続けていく考えを示したことについて、ウクライナのゼレンスキー大統領は、13日に公開したビデオメッセージで、「ロシアでは、作戦が計画どおりに進んでいると改めて説明されたが、このような作戦を世界の誰も理解することができない。わずか1か月余りで自国の兵士の多くの命を犠牲にする計画が、どうしたら出てくるのか。誰が計画を承認するのか」と、強く非難しました。
松野官房長官「ロシアの責任 厳しく問われなければならない」
松野官房長官は、午前の記者会見で「多数のむこの民間人の殺害は、重大な国際人道法違反で断じて許されず、厳しく非難する。残虐な行為の真相は明らかにされなければならず、ロシアの責任は厳しく問われなければならない」と述べました。
そのうえで、「『ジェノサイド』を含む重大な犯罪を犯した者を訴追し,
処罰する国際刑事裁判所の検察官は、ウクライナ側と協力して『ジェノサイド』を含む捜査を開始している。わが国としても検察官による捜査の進展を期待している」と述べました。
米 世界の人権報告書 “専制主義が脅かしている”
アメリカ国務省は、世界の人権状況に関する報告書を発表し、「専制主義が人権と民主主義を脅かしており、それが最も顕著なのはロシアによるウクライナへの攻撃だ」として、ロシアを強く非難しました。
アメリカ国務省は12日、去年1年間の世界各国の人権状況をまとめた報告書を発表しました。
この中には、ロシアがウクライナに侵攻したことしに入ってからの状況は反映されていませんが、冒頭で世界各地で人権侵害が続いていると指摘したうえで「人権と民主主義を脅かす専制主義がはびこっていて、それが最も顕著なのはロシアによるウクライナへの理不尽な攻撃だ」として、ロシアを強く非難しています。
そのうえで、ロシアでは反体制派や人権活動家、ジャーナリストが不当に拘束されるなど、報道や表現の自由が著しく抑圧されていると指摘しています。
ウクライナ公共放送 “ロシア側が殺害した遺体を地下道に”
ウクライナの公共放送は動画投稿サイト、ユーチューブで12日、ロシア軍の激しい攻撃が続いている東部マリウポリで、ロシア側が殺害した市民の遺体を市の郊外の地下道に集めていると伝えました。
運び込まれる遺体は連日数百体に上るうえ、その後は移動式の火葬施設で遺体を燃やし、集団墓地に埋めているということで「市内で行われた戦争犯罪のあとを隠すためだ」と伝えています。
米 バイデン大統領「ジェノサイド」と非難
アメリカのバイデン大統領は12日、ウクライナでのロシア軍の攻撃について「集団虐殺」を意味する「ジェノサイド」ということばを初めて使って非難しました。
演説後、記者団から「『ジェノサイド』とみなす十分な証拠があるということか」と問われ「先週とは状況が違ってきている。ロシアによるおぞましい行為の証拠が次々に明るみに出ている。国際的に見て『ジェノサイド』に当たるかどうかは弁護士の判断に任せるが、私にはそう見える」と述べ、集団虐殺を意味する「ジェノサイド」に当たるとの考えを強調しました。
ウクライナ交渉団「交渉は継続 立場を変えていない」
ロシアとの停戦交渉を行っているウクライナの交渉団のアラハミア氏は12日、SNSで「ウクライナの安全保障に関する交渉はオンラインで継続している。ウクライナ側はイスタンブールでの交渉内容を堅持していて、立場を変えていない」として、停戦をめぐるロシア側との交渉がオンライン形式で継続していることを明らかにしました。
OPCW「化学兵器に関する未確認の情報に懸念」
ウクライナ東部のマリウポリでロシア軍が有毒物質を使った攻撃を行ったという情報が出ていることについて、OPCW=化学兵器禁止機関は12日、声明を出しました。
声明では「マリウポリでの化学兵器の使用に関してメディアで伝えられた未確認の情報について懸念している。今後も関係する締約国と連絡をとり状況を監視していく」としています。
ルーマニア 避難の子どもたちにウクライナ語で授業
ウクライナの隣国、ルーマニアの首都ブカレストでは、南部オデーサから避難してきた小学校の教師8人が毎日、市内の高校の空いている教室を借りてウクライナ語で授業を行っています。子どもたちの数は増え続け、現在は避難してきている4歳から11歳までの260人余りが通っています。
4歳の男の子は「英語の授業が好き。頭がよくなり、消防士になりたい」と話していました。教師の1人、アナスタシヤ・コノワロワさん(30)は「子どもたちは幸せな子ども時代を失ってしまいましたが、母国語で教育を受ける権利は失ってほしくありません」と話していました。
米国防総省 “ロシア軍の戦力、侵攻前と比べ80%余りに”
アメリカ国防総省の高官は12日、ウクライナに投入されているロシア軍の戦力について、侵攻を始める前と比べて80%余りに低下したと推定されると指摘しました。
この高官は東部ハルキウ州にあるイジュームの北側およそ60キロの地点でロシア軍の車列が確認できるとして、部隊への補給などを目的としているとの認識を重ねて示しました。
ウクライナ軍が投稿「白い煙が見えたあと、地面に倒れ動けなく」
マリウポリで戦闘を続けるウクライナ軍のアゾフ大隊は12日、SNSの「テレグラム」に新たなビデオメッセージを投稿しました。有毒物質による攻撃を受けたという市民や兵士3人が登場し「白い煙が見えたあとで耳鳴りがして脈が速くなり、地面に倒れて動けなくなった」などと話しているほか「被害者にはのどの炎症や血圧の上昇などが起きている」と話す医師の証言も紹介されています。
現地の部隊の司令官は「有毒物質への接触は最小限に抑えられ死者は出なかった」と述べたうえで、現時点では化学兵器などが使われた証拠は見つかっていないことを明らかにしました。
米国務長官“化学兵器の使用 確認できず”
ロシア軍が有毒な物質を使ったという情報が出ていることについてアメリカのブリンケン国務長官は12日の会見で「何も確認できる状況にない」と述べて現時点で化学兵器の使用は確認できていないと明らかにしました。
そのうえでブリンケン長官は「実際に何が起きたのか見極めるため、各国と直接連絡をとっている。これは、ロシアによる侵攻が始まる前からわれわれが懸念していたことだ」と述べました。
英紙「ロシアの治安機関FSBが職員約150人解任」
イギリスの新聞「タイムズ」は12日までにロシアのプーチン大統領が、ロシアの治安機関FSB=連邦保安庁の職員およそ150人を解任し一部の職員を逮捕する処分を行ったと報じました。
それによりますと、処分された職員は、ウクライナなど旧ソビエト諸国の国をロシアの勢力圏にとどめるための活動を任務とする対外諜報の1つの部署に所属していたということです。
記事では、FSBが軍事侵攻の前にウクライナの状況について、クレムリンに虚偽の情報を報告したことなどが処分を行った背景にあると伝えています。
マリウポリから避難している人たちから心配の声
ロシア軍が攻勢を強めるウクライナ東部マリウポリから国外に避難している人たちからは現地に残る親族の安否を心配する声があがっています。
ウクライナの隣国ルーマニアに避難しているアナトリーさん(63)とアーラさん(63)の夫婦は、先月29日にマリウポリから逃れ、現在は首都ブカレスト市内の一般の家庭から部屋の提供を受け、避難生活を送っています。
夫婦がかつて住んでいたマリウポリの集合住宅は空爆されたということで、夫のアナトリーさんは「自宅は破壊されてしまい、帰る場所がありません。家に帰りたいという願いは、かなえられません」と話していました。
マリウポリから逃れた当時もロシア軍による激しい攻撃が続いていて、妻のアーラさんは市内の別の地域で一人で暮らしている85歳の母親を残して避難することを余儀なくされました。
アーラさんは「今の気持ちをことばに表すことは難しいです。夢なら覚めてほしいです」と母親の身を案じていました。
東部ドネツク州から避難の家族「自分を守る手段が何もない」
キーウ中央駅で東部ドネツク州から避難してきた家族に話を聞きました。
ゾヤ・バスティナさん(69)は、50人以上が死亡したクラマトルスクの駅の攻撃の前日に、同じ駅を使って避難し、先に避難していた娘のビクトリアさん(45)と孫のアルトゥールさん(16)と合流しました。
畑で野菜を育てながら静かに暮らしていたというゾヤさんは、この30年間、旅行をしたこともなく、軍事侵攻が始まってからも自宅にとどまっていましたが、まもなく東部での戦闘が一層激しくなる恐れがあることから、住み慣れたふるさとを離れることを決意したと、時折、涙ぐみながら話していました。
また化学兵器が使用される懸念が強まっていることについて、「恐怖が増しています。本当におそろしい。自分を守るための手段が何もない」と話し、NATO=北大西洋条約機構には飛行禁止区域を設けるなどより踏み込んだ対応をとってほしいと訴えていました。
ロシア軍が東部などに戦力を集中させつつあることについては、ウクライナ軍が撃退してくれると信じていると話していました。
これから知人の家で避難生活を送るということですが、「家に帰りたい。少なくとも夏の始まりぐらいには」と話し、一刻も早く平和が戻ることを願っていました。
ウクライナ軍の旅団 SNSに「最後の戦い」真偽は分からず
ロシア軍が攻勢を強めているウクライナ東部のマリウポリで戦闘を続けるウクライナ軍の旅団は11日、フェイスブックに「弾薬がなくなりつつあり、11日がおそらく最後の戦いになる。死ぬか捕虜になるかのどちらかだ」などと投稿しました。
これについてマリウポリの市当局は11日、「部隊のフェイスブックのページがハッキングを受けた。投稿は偽の情報だ」などと部隊の投稿の内容を否定しました。
その後、現地の旅団はSNSに新たな投稿はしておらず、情報の真偽は明らかになっていません。
国連 “少なくとも1892人の市民が死亡”
国連人権高等弁務官事務所は、ロシアによる軍事侵攻が始まったことし2月24日から今月11日までに、ウクライナで少なくとも1892人の市民が死亡したと発表しました。
このうち153人は子どもだということです。
また、けがをした人は2558人にのぼるということです。
ウクライナから41万人余避難のモルドバ 市民や民間企業が支援
ウクライナの隣国モルドバでは、国境を越えて避難してきたウクライナの人たちを市民や民間企業が支えています。
UNHCR=国連難民高等弁務官事務所によりますと、モルドバには今月11日の時点で41万人余りが避難しています。
このうち国境を接する東部パランカでは、臨時の託児所が設置され、地元の人たちがボランティアで子どもたちの世話をするなどして避難していたウクライナの母親たちを支援しています。
また、近くにあるワイナリーでは戦闘が始まって以降、併設するホテルの部屋を避難してきた人たちに無償で食事とともに提供しています。
ヨーロッパの中でも経済規模が小さいモルドバでは、多くの避難民の受け入れで財政がひっ迫していて、各国の間ではモルドバを支援する動きも広がっています。