ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が始まってから2か月余りとなります。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる25日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

リビウ州知事「ロシア軍 鉄道変電所にミサイル攻撃」

ウクライナ西部のリビウ州の知事は25日、鉄道の変電所がロシア軍によるミサイル攻撃を受け爆発が起きたことを明らかにしました。また、AP通信は、ウクライナ中部と西部にある合わせて5つの鉄道施設が攻撃を受けたとも伝えています。

ウクライナ西部、リビウ州のコジツキー知事は、SNSへの投稿で、25日午前、リビウから東に40キロ離れたクラスネにある鉄道の変電所が、ロシア軍によるミサイル攻撃を受け、爆発が起きたと明らかにしました。この投稿が行われた時点で、人的被害の情報は確認されていないとしています。

また、AP通信は、ウクライナの国営鉄道の話としてウクライナ中部と西部にあるあわせて5つの鉄道施設がロシア軍による攻撃を受けたと伝えています。これに関連して、アメリカのブリンケン国務長官とオースティン国防長官は、24日に鉄道を使って首都キーウを訪れたことを明らかにしています。

ゼレンスキー大統領「米との会談 有意義だった」

ウクライナのゼレンスキー大統領は、25日に公開した動画で、アメリカのブリンケン国務長官やオースティン国防長官との会談について「会談は3時間以上にわたる十分な長さで、有意義だった。勇気づけられ、効果的だった」と評価しました。

また「われわれはウクライナ軍を強化し、軍の優先的なニーズをすべて満たすためのさらなる手段についてアメリカと合意した」と述べました。

一方、ゼレンスキー大統領は、キリスト教の復活祭の24日にもロシア側の攻撃が続き、子どもを含む多くの市民が犠牲になったと主張し、「なぜ復活祭でこのような不幸が必要なのだろうか」と非難しました。

ロシア「市民の避難保証」 ウクライナ「信頼できない」

ロシア国防省は25日声明を発表し、多くの市民が避難しているとされるウクライナ東部マリウポリのアゾフスターリ製鉄所について「25日の現地時間午後2時からロシア側は軍事行動を中止し、部隊を安全な位置まで撤退させ女性や子どもなどの市民が避難できるよう保証する」としています。

アゾフスターリ製鉄所をめぐり、ロシアのプーチン大統領は、21日、攻撃を中止し一帯の包囲を続けるよう指示した一方、ウクライナ側は24日、攻撃は続いていると非難していて、避難のための停戦が実現するかどうかは不透明です。

一方、ウクライナのベレシチュク副首相は、25日、SNSのテレグラムで、ロシア側の発表は信頼できないとした上で「人道回廊は、双方の合意によって設置されることが重要で、一方的に発表されたものは安全が保証されず、人道回廊とはいえない」と主張しました。

※現地時間午後2時は日本時間25日午後8時。

英国防省「ロシアにとってまだ大きな前進はない」

イギリス国防省は、25日、公表したウクライナの戦況分析で「ロシアは東部ドンバス地域の完全な占領に重点を移して以降、いくつかの地域でわずかに前進をしている。補給面や戦闘の支援が十分に得られていないため、ロシアにとってまだ大きな前進はない」と分析しました。
また、「マリウポリのアゾフスターリ製鉄所を攻撃するよりも包囲することに決めたロシアの判断は多くのロシア軍の部隊が市内に足止めされ、再配置できないことを意味する。ウクライナによるマリウポリの防衛でロシア軍の多くの部隊は消耗し戦闘の効率が低下している」と指摘しています。

「アゾフ大隊」製鉄所のシェルターの様子とする新たな映像公開

マリウポリで戦闘を続けるウクライナの「アゾフ大隊」は、拠点としているアゾフスターリ製鉄所のシェルターの様子とする新たな映像を公開しました。
映像では、暗闇の中で避難生活を続ける市民たちが、兵士に対して「あと数日で水も食べ物もなくなりそうだ。どうやって生きていけばいいのか」と訴えています。
また、シェルター内部の様子も撮影されていて、天井や壁などの至る所にカビが生え、洗濯物が10日間たってもなかなか乾かないとしています。
このほか、おむつがないため、1歳の赤ちゃんが透明な袋のようなものをおむつの代わりにしている様子も見られ、避難している女性は「赤ちゃんは肌がかぶれて赤くなり、苦しんでいます」と話していました。
別の女性は「子どもや高齢者、障害者へのいじめがいつまで続くのか。どうか助けてほしい。もう我慢の限界だ」と必死な表情で訴えていました。

米政府 ウクライナに対し日本円で4300億円あまりの軍事支援

アメリカ国防総省によりますと、アメリカ政府はことし2月にロシアによる軍事侵攻が始まって以降、4月22日までにウクライナに対して34億ドル、日本円で4300億円あまりの軍事支援を行っているということです。
軍事支援には▽携帯型の地対空ミサイル「スティンガー」1400基あまりや、▽対戦車ミサイル「ジャベリン」5500基あまり、▽りゅう弾砲90門、それに▽自爆型の無人攻撃機「スイッチブレード」700機あまりなどが含まれるということです。

昭和天皇とヒトラーらの顔写真を並べた動画 批判相次ぎ写真削除

ウクライナ政府の公式とされるツイッターに、昭和天皇とナチス・ドイツの指導者だったヒトラーらの顔写真を並べた動画が投稿され、その後、批判が相次いで、写真が削除されていたことがわかりました。

動画は、ロシアの全体主義や言論の自由の制限などを批判するもので、4月1日、ウクライナ政府の公式とされるツイッターに投稿されました。

この動画の後半に「ファシズムとナチズムは1945年に敗北した」と指摘する場面があり、昭和天皇の顔写真とともにヒトラーやイタリアの指導者だったムッソリーニの顔写真が並べられていました。

これについて、SNS上で批判が相次ぎ、写真は削除されました。

動画が投稿されたツイッターでは「友好的な日本の人たちの気分を害するつもりはなかった。間違いをしてしまい、心からおわび申し上げる」と謝罪しています。

また、日本にあるウクライナ大使館はツイッターで「現在、投稿があったアカウントはウクライナ政府と関係がありません」としたうえで「制作者の歴史認識不足と思われます。ご不快に思われた日本の皆さまに深くおわび申し上げます」などと投稿しています。

“ヒトラー、ムッソリーニと同列に扱うこと 不適切で遺憾”

磯崎官房副長官は、記者会見で「ヒトラー、ムッソリーニと昭和天皇を同列に扱うことは全く不適切で、極めて遺憾だ。在京ウクライナ大使館とウクライナ大統領府に対し、不適切であり、直ちに削除するよう申し入れを行った。その結果、現在では動画の関連部分は削除されたと認識している」と述べました。

その上で「ウクライナ政府側からは外交ルートで謝罪の意が表され、謝罪のツイートも投稿された。わが国としては、こういう状況ではあるが、今後とも困難に直面するウクライナの人々に寄り添った支援を実施していきたい」と述べました。

イギリス国防省「ロシアが南部で住民投票を計画」と指摘

イギリス国防省は、24日公表したウクライナでの戦況の分析で「ロシアはウクライナ南部のヘルソンで、占領を正当化するための住民投票を計画している」と指摘しました。

そのうえで「この都市は、クリミアへとつながる陸続きのルートを確立し、ウクライナの南部を支配下に置くというロシアの目標にとって非常に重要だ」と分析しています。

イギリス国防省は、ロシアは2014年にも、クリミアの一方的な併合を正当化するため違法な住民投票を行ったと指摘しています。

“米国務・国防長官 キーウ訪問 ゼレンスキー大統領と会談”

ロイター通信など複数のメディアは、ウクライナ大統領府の顧問の話として、アメリカのブリンケン国務長官とオースティン国防長官がウクライナの首都キーウを訪れ、ゼレンスキー大統領と会談を行ったと伝えました。ロシアによる軍事侵攻後、両長官がキーウを訪問するのは初めてです。

事前に行われた記者会見で、ゼレンスキー大統領は、両長官との会談でアメリカによる軍事支援などをめぐって協議が行われるという見通しを示しています。

ゼレンスキー大統領 国民に団結を呼びかけ

ウクライナのゼレンスキー大統領は、キリストの復活を祝う復活祭の24日に公開した動画の中で、ロシア軍との戦闘を念頭に「私たちは恐ろしい戦争の現場を目の当たりにしている。平和の光景を見せてほしい」と訴えました。

そして「私たちは、非常に困難な試練に立ち向かっている。私たちの魂は、侵略者が行ってきたすべてのことに対して、激しい憎しみに満ちている」と述べたうえで「自由を求める心、さらに、勝利への希望を失ってはいけない」と国民に団結を呼びかけました。

ウクライナ首相「復興費用はロシアによって支払われるべき」

ウクライナのシュミハリ首相は、アメリカのCBSテレビが24日放送したインタビューのなかで「差し押さえたロシアの資産をいかにウクライナの復興に役立てるかが重要だ」と述べたうえで、ロシアの軍事侵攻で破壊されたインフラや住宅の復興費用について「すべてロシアによって支払われるべきだ」という考えを示しました。

さらにシュミハリ首相は「ロシアのような核大国との戦闘に勝利することは不可能だと個人的には思う」と述べ、厳しい見方を示す一方で「この戦争は、ロシアの占領者がわれわれの領土から一掃されたときに終わるべきだ」と述べ、ロシア軍のウクライナからの完全な撤退が必要だという認識を示しました。

また、国連のグテーレス事務総長が今月26日にロシアでプーチン大統領と会談することについて、シュミハリ首相は「世界の多くの指導者や国際機関が交渉に臨んだが、ロシア政府とプーチン氏は交渉に興味がないようだ。彼らが興味があるのはウクライナ人に対するジェノサイドだ」と述べて、会談の成果に懐疑的な見方を示しました。

グテーレス事務総長のロシア訪問をめぐっては、アメリカのNBCテレビに出演したウクライナの大統領顧問も「モスクワを訪れてプーチン氏と話をする意図がわからない。成果は疑わしい」と述べて不快感を示しました。

ローマ教皇「平和望む人たちの声に耳を傾けて」

ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇は、ロシア正教会やウクライナ正教会の復活祭にあたる24日、バチカンのサンピエトロ大聖堂でスピーチを行いました。

この中でフランシスコ教皇は、ウクライナの状況について「戦争が始まってからきょうで2か月になるが、戦いは終わるどころかより深刻さを増している」と述べました。

そして「すべてのキリスト教徒にとって最も神聖で厳粛なこの時期に、キリストの復活を告げる鐘の音よりも人を殺す武器の音が聞こえ、武器が言葉に取って代わってしまったのは悲しいことだ」と述べて戦闘の停止を求めました。

また、ローマ教皇は「政治指導者たちは、対立をエスカレートさせるのではなく、平和を望む人たちの声に耳を傾けてください」と訴えました。

ウクライナ大統領府顧問 復活祭にあわせ戦闘停止求める

ウクライナのポドリャク大統領府顧問は24日、キリストの復活を祝う復活祭を迎えた東部マリウポリの状況について、ツイッターに投稿しました。

この中で、ウクライナ側の部隊が拠点としてきたアゾフスターリ製鉄所のある地域について「復活祭の日を迎えたまさに今も、ロシア軍はアゾフスターリを攻撃し続けている。市民や部隊がいる場所が攻撃にさらされている」と投稿しました。

そのうえで「ロシア軍が、攻撃に向けて部隊と装備を増強している」と強調しました。

さらにポドリャク大統領府顧問は、復活祭にあわせての戦闘の停止や、市民を避難させるための人道回廊の即時設置などをロシア側に求めました。

ウクライナ大統領府長官「マリウポリは最も悲劇的で緊張状態」

ウクライナのイエルマク大統領府長官はフランスのメディアのインタビューに応じ、東部の要衝マリウポリについて「ウクライナで最も悲劇的で緊張状態にある」と指摘しました。

そのうえで「ロシアがマリウポリを掌握したという情報は事実ではない。彼らはまちにはいるが、ウクライナの英雄たちが立っている所は、私たちの兵士の管理下にある。マリウポリはウクライナのまちだ」と述べました。

さらに、ロシアに効果的に立ち向かうためには、重火器など武器が必要だとして、武器の供与と強い制裁を改めて国際社会に求めました。

国外の避難民518万人余りに

UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、23日の時点で518万人余りとなっています。

主な避難先は、▽ポーランドがおよそ289万人、▽ルーマニアがおよそ77万人、▽ハンガリーがおよそ48万人、▽モルドバがおよそ43万人などとなっています。

また、21日の時点で、▽ロシアに避難した人は、およそ57万人となっています。

トルコ エルドアン大統領 「保証国」に前向きな考え示す

トルコ大統領府は24日、エルドアン大統領がウクライナのゼレンスキー大統領と電話会談したと明らかにしました。

発表によりますと、エルドアン大統領は、東部の要衝マリウポリの状況が日に日に悪化しているとして、住民やけが人の避難ルートの確保が必要だと訴え、トルコは、双方の停戦交渉にできるかぎりの支援をすると述べたということです。

そのうえで、ウクライナが提案する新たな集団的な安全保障の枠組みで、トルコがウクライナの安全を確保する「保証国」になることに前向きだという考え方を示したということです。

ロシアとウクライナの双方と黒海を挟んで隣り合うトルコは仲介役として、3月には両国の外相会談と停戦交渉を相次いでトルコで実現させてきました。

エルドアン大統領は近くプーチン大統領とも電話会談をするとしているほか、25日には、両国訪問を前にした国連のグテーレス事務総長とも首都アンカラで会談する予定で、事態打開に向けた仲介外交が続いています。

イギリス国防省「ドンバスでロシアの攻撃 幾度も退けた」

イギリス国防省は24日公表したウクライナでの戦況の分析で「ウクライナ側はこの1週間、ドンバス地域の戦線でロシアからの攻撃を幾度も退けた」としたうえで、「ロシア軍はいくつかの地域を支配下に置いたものの、ウクライナ側はすべての方面で強力に抵抗していて、ロシア軍に深刻な損害を与えた」と指摘しています。

ロシア軍が効果的に戦闘を進められていない理由については「兵士の士気の低下や、前回の攻勢のあとの部隊の再編成や装備の準備に十分な時間がとれていないことが原因とみられる」と分析しています。