ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる5月5日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
プーチン大統領側近がマリウポリ訪問
プーチン大統領の側近の1人、キリエンコ第1副長官が4日、ロシア軍が掌握したと主張するウクライナ東部の要衝マリウポリを訪問しました。
親ロシア派の武装勢力の指導者プシリン氏によりますと、キリエンコ氏はプーチン大統領の政権与党「統一ロシア」のトゥルチャク上院副議長とともに住民との会合に出席し、生活への支援を強調したということです。
またインターファクス通信は、キリエンコ氏がロシア軍の包囲するアゾフスターリ製鉄所の周辺や港などを視察したと伝えています。
エリツィン政権で首相を務め、プーチン大統領に近いキリエンコ氏は、ロシアが併合を企てているとされるウクライナ東部2州を担当する政府高官に任命される可能性があるとロシアの一部メディアは伝えています。キリエンコ氏のマリウポリ訪問は、ロシアが掌握したと内外に強調し、支配を既成事実化する思惑があるとみられます。
一方、キリエンコ氏はマリウポリで行った演説で「ドネツクやルガンスク(ルハンシク)での勝利のパレードは、5月9日の実施は無理だが、近いうちには実現できるだろう」と述べ、東部2州の完全掌握は9日の「戦勝記念日」のあとにずれ込む見通しを示しました。
ウクライナで少なくとも3280人死亡 うち231人は子ども 国連
国連人権高等弁務官事務所は、ロシアによる軍事侵攻が始まったことし2月24日から5月4日までに、ウクライナで少なくとも3280人の市民が死亡したと発表しました。このうち231人は子どもだとしています。
地域別でみると、東部のドネツク州とルハンシク州で1727人、キーウ州や東部のハルキウ州、北部のチェルニヒウ州、南部のヘルソン州などで1553人の死亡が確認されているということです。また、けがをした市民は3451人にのぼるとしています。
一方、国連人権高等弁務官事務所は、東部のマリウポリなど激しい攻撃を受けている地域での死傷者の数については、集計が遅れていたり、確認がまだ取れていなかったりして、統計には含まれておらず実際の死傷者の数はこれを大きく上回るとの見方を示しています。
ウクライナから約570万人が国外避難 国連
UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、4日の時点でおよそ570万人となっています。
主な避難先は、ポーランドがおよそ311万人、ルーマニアがおよそ85万人、ハンガリーがおよそ54万人、モルドバがおよそ45万人などとなっています。
また、ロシアに避難した人はおよそ71万人となっています。
英国防省 “ベラルーシ軍の部隊展開を確認”
イギリス国防省は5日、ツイッターでウクライナの戦況分析を公表し、ロシアと同盟関係にあり、ウクライナ北部と国境を接するベラルーシの軍の部隊が駐屯地を出て展開しているのが確認されたとしています。
部隊の展開は通常の演習との見方を示したうえで「ロシアとしては、ウクライナに対する脅威を増やすことにより、ウクライナ軍の部隊を北部にとどまらせ、東部ドンバス地域の戦闘に投入できないようにしている可能性がある」と分析しています。
【画像】ハルキウの遊園地で爆発
ウクライナ第2の都市のハルキウの遊園地に設置された監視カメラで3日、撮影された映像では、攻撃により園内で爆発が起こり、小屋のような建物が跡形もなくなる様子や、遊具の脇にロケット弾が落ち火の手が上がる様子などが確認できます。
【画像】アゾフスターリ製鉄所で大規模爆発
また、ウクライナ国内の親ロシア派が4日、公開した動画では、ロシア軍の攻撃が続くマリウポリの「アゾフスターリ製鉄所」で大規模な爆発が連続して起きている様子が確認できます。
アゾフ大隊司令官「製鉄所内で血みどろの戦闘」
ウクライナの「アゾフ大隊」の司令官は4日、テレグラムに投稿した動画で「われわれは4月25日以降、アゾフスターリ製鉄所で全方位の防御を続けている。敵が製鉄所の敷地内に侵入してすでに2日目に入り、激しい、血みどろの戦闘が行われている」と述べ、製鉄所内でロシア軍と激しく交戦していることを明らかにしました。
ウクライナ側は、製鉄所内には今も多くの市民が残っているとしています。
ゼレンスキー大統領「マリウポリと郊外から344人救出」
ウクライナのゼレンスキー大統領は新たに公開したビデオメッセージで「マリウポリからの避難の第2段階が4日完了した。マリウポリと郊外から344人が救出され、南東部のザポリージャへ出発した」と述べました。
その一方でマリウポリや、市内のアゾフスターリ製鉄所には依然として女性や子どもが残されているとして、救出に向け交渉を続けていることを明らかにしました。
“ロシア軍 東部地域で停滞している” 米国防総省高官
アメリカ国防総省の高官は4日、ウクライナ東部2州の完全掌握に向け攻勢を強めるロシア軍について、東部地域の北側で地上部隊が南下しようとする動きが続いていると指摘しました。ただウクライナ側の激しい抵抗を受けその動きは非常に遅く、全体的に停滞しているという見方を示しました。また東部地域の南側ではマリウポリ周辺から北上しようとする部隊にもこの24時間で大きな前進は見られず態勢を整えるために停止している可能性があると指摘しました。そしてそのマリウポリについてロシア側は掌握したと主張していますが、今も空爆を集中的に行い周辺にはおよそ2000人の兵士を配置しているとしました。
さらにこの高官はロシア軍によるウクライナ西部のリビウ近郊へのミサイル攻撃が確認され電力や鉄道施設などをねらったのではないかという見方を示しましたが、ウクライナ側の補給能力を損なうような大きな影響は見られないと指摘しました。
ゼレンスキー大統領 製鉄所からの避難に支援継続を要請
ウクライナ大統領府はゼレンスキー大統領が国連のグテーレス事務総長と電話会談を行い、マリウポリのアゾフスターリ製鉄所からの避難について支援の継続を要請したことを4日、公式ホームページで明らかにしました。この中でゼレンスキー大統領は製鉄所からの市民の避難に対するこれまでの国連の支援に感謝を伝えたほか「製鉄所に残る人たちの命が危険にさらされている。全員がわれわれにとって重要だ。彼らを助けるための支援を求めたい」と訴えました。
ブラジル元大統領 “停戦に向け速やかな交渉を”
ことし10月に行われるブラジル大統領選挙で有力候補の1人となっているルーラ元大統領はアメリカメディアのインタビューで、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について双方の指導者を非難したうえで停戦に向けた速やかな交渉を呼びかけました。
アメリカの雑誌「タイム」は4日、ブラジルで2003年から2期8年にわたって左派政権を率いたルーラ元大統領のインタビューを公開しました。この中でルーラ氏はロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「プーチン大統領は侵攻するべきではなかった」と批判した一方で、ウクライナのゼレンスキー大統領については「プーチン大統領と同じくらい責任がある。彼は戦争を望んでいた。もし戦争を望まないならもっと交渉をしていたはずだ」と非難し、双方に停戦に向けた速やかな交渉を呼びかけました。
さらにアメリカのバイデン大統領については「モスクワに行ってプーチン大統領と対話することもできた。リーダーに求められるのはこうした態度だ」と述べ、アメリカが対話の仲介に乗り出すなど外交的な解決の余地があったという認識を示しました。
ルーラ氏はことし10月に行われる大統領選挙に向けた世論調査で40%を超える支持を集め、ボルソナロ大統領を引き離してトップに立っていることから、ブラジルのメディアが発言を大きく伝えています。
米バイデン大統領 “さらなる制裁へG7首脳と今週協議”
EU=ヨーロッパ連合がロシアからの石油の輸入を年内に禁止する追加の制裁方針を発表したことに関連してアメリカのバイデン大統領は4日、記者団に対し「われわれには追加の制裁をする用意が常にある。今週中にG7=主要7か国と何をして、何をしないかを協議する」と述べ、G7の首脳とさらなる制裁について今週協議することを明らかにしました。
モルドバ大統領 “ロシア軍介入も念頭に対応進める”
ウクライナの隣国モルドバのサンドゥ大統領は「差し迫った危機はないがより悪いシナリオになっても準備はできている」として、一方的に独立を宣言している沿ドニエストル地方にロシア軍が介入することも念頭に今後の対応を進める考えを示しました。
モルドバの沿ドニエストル地方は1990年に一方的に分離独立を宣言し、現在ロシア軍が駐留するなどロシアの強い影響下にありますが先月下旬、電波塔が破壊されるなど複数の爆発が起きています。これについてモルドバのサンドゥ大統領は4日、首都キシニョフを訪れているEU=ヨーロッパ連合のミシェル大統領と会談し「沿ドニエストル地方での出来事は憂慮すべきことだ。この地域を不安定化させたい勢力が引き起こしたとみている」と述べ、警戒感を示しました。そのうえで「モルドバ側だろうが沿ドニエストル地方側であろうが、モルドバの不安定化のもくろみを防ぐ最善の努力をしている。今のところ差し迫った危機はないが、より悪いシナリオになっても危機に対応する準備はできている」と述べ、沿ドニエストル地方にロシアが介入することも念頭に今後の対応を進める考えを示しました。
一方、ミシェル大統領は「EUはモルドバへの支援をさらに強化するため追加の軍事物資の提供やサイバー攻撃に対する情報面での支援を行う」と、具体的な内容は明らかにしませんでしたが軍事面でのさらなる支援を約束しました。
ドネツク州の工場 攻撃受けたとされる映像公開
ウクライナ東部のドネツク州の警察は工業都市のアウディーイウカにあるヨーロッパ最大級のコークス工場が攻撃を受けたとされる当時の映像を4日、公開しました。映像からは敷地内から黒い煙が立ち上っている様子や、近くのバス停で何かが突然爆発する様子が確認できます。ドネツク州のキリレンコ知事は自身のSNSで攻撃はロシア軍によるものだとし、少なくとも10人が死亡し、15人がけがをしたと明らかにしました。
一方、ウクライナ東部の親ロシア派の武装勢力は4日、支配地域にある燃料の貯蔵施設がウクライナ軍からの攻撃を受けて破壊されたとしています。ロイター通信が配信した映像では貯蔵施設とみられる建物が激しく燃え真っ黒な煙が立ち上る様子が確認できるほか、消防隊が放水をして消火活動に当たる様子がうつっています。ロシア側はこの施設がウクライナ軍のミサイル攻撃の標的になっていたと主張しているということです。
マリウポリ市長「製鉄所の兵士との連絡が途絶えた」
ウクライナ東部の要衝、マリウポリのアゾフスターリ製鉄所で戦闘が再開する中、マリウポリのボイチェンコ市長は4日、ウクライナのテレビ局の取材に対し「製鉄所の兵士との連絡が途絶えた。そこで何が起きているのか、彼らが無事かどうか確認することができない」と述べ、現地の詳しい状況を把握できなくなったことを明らかにしました。また市長は「製鉄所の中には避難を待つ子どもが30人以上いる。彼らの命を助けるために国際社会は結束する必要がある」として、市民の避難を進めるため各国に支援を求めました。
ウクライナ国防省 “ロシア 軍の再編成や強化を進めている”
ウクライナ国防省の報道官は4日「ロシア軍はウクライナ東部への攻勢を強めようとしている」と述べ、ロシアがさらなる攻撃のため軍の再編成や強化を進めているという分析を明らかにしました。またロシア軍に包囲され市民の避難が始まったウクライナ東部マリウポリの製鉄所についても「周期的に砲撃や空爆が続けられている」として、今もロシア軍からの攻撃が行われているという認識を示しました。
さらにウクライナ各地では3日だけで「およそ50回の空爆が行われ誘導ミサイルによる攻撃もあった」として、西部のリビウや南部のオデーサなども攻撃を受けたということです。
ウクライナ市民 少なくとも3238人死亡 うち227人は子ども 国連
国連人権高等弁務官事務所は、ロシアによる軍事侵攻が始まったことし2月24日から今月3日までにウクライナで少なくとも3238人の市民が死亡したと発表しました。このうち227人は子どもだとしています。
地域別でみると、東部のドネツク州とルハンシク州で1700人、キーウ州や東部のハルキウ州、北部のチェルニヒウ州、南部のヘルソン州などで1538人の死亡が確認されているということです。またけがをした市民は3397人にのぼるとしています。
一方、国連人権高等弁務官事務所は、東部のマリウポリなど激しい攻撃を受けている地域での死傷者の数については集計が遅れていたり、確認がまだ取れていなかったりして統計には含まれておらず、実際の死傷者の数はこれを大きく上回るとの見方を示しています。
ウクライナからの国外避難者 約565万人 国連
UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は3日の時点でおよそ565万人となっています。
主な避難先はポーランドがおよそ309万人、ルーマニアがおよそ84万人、ハンガリーがおよそ53万人、モルドバがおよそ44万人などとなっています。またロシアに避難した人はおよそ70万人となっています。