米国の雇用者数は4月も力強いペースで増加したが、賃金の伸びは鈍化した。ただ労働参加率が低下したことで、雇用主は今後あらためて賃上げを迫られ得る。米金融当局の高インフレへの対応が一段と複雑になる可能性が高まりそうだ。
キーポイント |
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・非農業部門雇用者数(事業所調査、季節調整済み)は前月比42万8000人増 ・ブルームバーグ調査のエコノミスト予想中央値は38万人増 ・3月は42万8000人増(速報値43万1000人増)に下方修正 ・家計調査に基づく失業率は3.6%-前月も3.6% ・市場予想3.5% |
平均時給は前月比0.3%増と、エコノミスト予想に達しなかった。前月は上方修正された。前年同月比では5.5%増。これが賃金上昇の持続的な鈍化傾向の始まりなのか、あるいは一時的な減速に過ぎないのか、判断は難しい。
前者であれば、40年ぶりの高インフレの抑制に取り組む米金融当局にとって朗報となる。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は4日、当局は労働需要の抑制を望んでいると述べ、「景気減速やリセッション(景気後退)、失業の大幅増を招くことなく」、賃金の伸びやインフレの鈍化を狙っていると話した。
ハイ・フリークエンシー・エコノミクスのチーフ米国エコノミスト、ルビーラ・ファルキ氏は「労働市場は底堅さを維持し、強い勢いがあるとの米金融当局の見解を、この日の雇用統計は裏付けている」とリポートで指摘。その上で「賃金上昇圧力に注目が集まっており、その高い伸びは依然不足している労働力を巡る競争が続いていることを示唆し、労働コスト上昇につながっている」と言及した。
就業者と求職者を合わせた労働力人口の生産年齢人口に占める割合である労働参加率は62.2%に低下し、3カ月ぶり低水準となった。「プライムエイジ」と呼ばれる25-54歳の働き盛り層の参加率は小幅低下。これは労働需要を供給と同水準に抑制しようとする金融当局の取り組みを一段と複雑にする。
就業をやめ、再就職の意思なく労働力人口から外れた人の数は、新型コロナウイルスがパンデミック(世界的大流行)になった直後の急増期以来、初めて500万人を突破した。この数字は月ごとの変化が激しい。
子どもや老人の介護など、さまざまな要因から参加率はパンデミック前の水準に戻っていない。今後は賃金上昇に加え、食料品や住宅など必要不可欠なものの高騰を受け、労働力人口が増える可能性はある。
雇用者数は娯楽・ホスピタリティー、製造業、運輸・倉庫を中心に幅広い分野で伸びた。
ブルームバーグ・エコノミクスのアナ・ウォン、エレーナ・シュルヤティエバ、アンドルー・ハズビー3氏は「リセッションが差し迫っていると考える人にとって、家計調査の暗い部分はそれを後押ししていると言える。一方、楽観的な人は金融当局が景気のソフトランディングに成功する確率が高まったと判断するだろう。われわれは後者の見方に傾いている」と述べた。
統計の詳細は表をご覧ください。
原題:U.S. Posts Robust Job Gains, Data Offer Mixed Inflation Signs(抜粋)