ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる12日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
プーチン大統領「ロシアへの制裁 世界的危機引き起こしている」
ロシアのプーチン大統領は12日、クレムリンで行われた経済問題についての関係閣僚とのオンライン会合で「ロシアに対する制裁は、世界的な危機を引き起こしている。それぞれの国の利益や経済、国民の幸せを大きく損なっている。特にヨーロッパでは急激なインフレがみられる。貧しい国々は飢きんのリスクに直面している」と指摘しました。
そのうえで「欧米側は世界の支配を維持するため、他の地域を犠牲にしている」と批判しました。
一方、通貨ルーブルについて「為替レートも上昇しており、ことしはおそらく、世界の通貨の中で最高の活力を持っている」と述べ、経済制裁への対応はできていると主張しました。
ロシア外務省「フィンランド政府はその責任と結果を自覚せよ」
北欧フィンランドのニーニスト大統領とマリン首相が、NATO=北大西洋条約機構への加盟を速やかに求めるべきだという立場を表明したことについて、ロシア外務省は12日、声明を発表し「NATOの目的は明確だ。ロシアの国境まで拡張を続けわが国への軍事的脅威のもうひとつの側面を作り出そうとしている」として、ロシアにとって脅威となるという認識を示しました。
そのうえで「フィンランド政府はその責任と結果を自覚しなければならない。ロシアとの2国間関係や、北欧の安定と安全に深刻な打撃を与えるだろう」と警告するとともに、軍事面を含めて対抗措置をとる構えを示し、強くけん制しました。
ゼレンスキー大統領「フィンランドのNATO加盟 称賛した」
ウクライナのゼレンスキー大統領は、12日、ツイッターに投稿し、「フィンランドのニーニスト大統領と電話で会談し、NATO=北大西洋条約機構への加盟を申請する準備ができたことを称賛した」と明らかにしました。
会談では、ウクライナとフィンランドの防衛交流についても協議したとしています。
フィンランド NATO加盟求める方針
フィンランドでは、大統領と政府が協力して外交を進めることになっていて、ニーニスト大統領とマリン首相は12日、共同声明を発表し、NATOへの加盟を速やかに求めるべきだという立場をそろって表明しました。
声明では、「NATOの加盟によって、フィンランドの安全保障は強化される。フィンランドがNATOを強化することもできる。NATOへの加盟を速やかに申請すべきだ」としていて、近く、国としての正式な判断を示すとしています。
NATOをめぐっては、フィンランドの隣国のスウェーデンも加盟を検討していて、両国が加盟すればウクライナ情勢をきっかけにヨーロッパの安全保障の枠組みが 大きく変わることになります。
また、両国が加盟を申請したあと実際に加盟が承認されるまでの間に、反発するロシアが軍事的な行動に出る可能性も指摘されていますが、11日にはイギリスが、有事の際に両国を軍事支援することで合意するなど、支援に向けた議論も進められています。
NATO加盟に向けた動きがロシアとの新たな緊張を招きかねないことについて、フィンランドのニーニスト大統領は11日の記者会見で、ロシアのプーチン大統領に対し「この事態を引き起こしたのは、あなた自身だ。鏡を見ろと言いたい」と厳しく批判しました。【詳しくはこちらから】フィンランド NATO加盟求める方針 ロシアのウクライナ侵攻受け
EU ミシェル大統領「プーチン大統領は多くの間違い犯した」
EU=ヨーロッパ連合のミシェル大統領は、NHKの単独インタビューに応じ「プーチン大統領は多くの間違いを犯した」と述べ、ウクライナへ侵攻を続けるロシアに対してEUとしての結束を強調するとともに、ウクライナの復興における日本の協力にも期待を示しました。
G7外相会合 ドイツで開催へ
G7=主要7か国の外相会合が、ドイツ北部のバルト海に面したリゾート地バイセンハウスで12日夜、日本時間の13日未明から、林外務大臣も参加して14日まで3日間の日程で始まります。
会合には、ウクライナのクレバ外相や、隣国モルドバのポペスク外相も一部の日程で参加する予定で、会場のホテル周辺では大勢の警察官が厳重な警備態勢を敷いています。
会合は、ロシアによるウクライナ侵攻への対応が主な議題で、議長国ドイツの外務省は、侵攻の影響によるエネルギー価格の高騰などへの対応についても話し合うとしています。
ウクライナ検察 ロシア軍21歳兵士を訴追 軍事侵攻後初
ウクライナの検察当局は、ウクライナ北東部で武装していない民間人を殺害した疑いで、ロシア軍の21歳の兵士を訴追したと発表しました。ロシアによる軍事侵攻後、戦争犯罪の容疑でロシア兵が訴追されるのは、これが初めてです。
ウクライナの検察当局によりますと、このロシア兵は、軍事侵攻が始まったことし2月、ウクライナ北東部のスムイ州にある村で、自転車に乗った62歳の男性に対して車の窓から発砲し、殺害した疑いが持たれています。
ウクライナのベネディクトワ検事総長は、兵士が盗難車で村の中を走行していた際に男性が電話をしているのを目撃し、ウクライナ軍への通報を恐れて犯行に及んだとしています。訴追された兵士は、最高で終身刑となる可能性があるということです。
ウクライナの検察当局は、軍事侵攻を続けているロシア軍による戦争犯罪が疑われるケースが今月12日の時点で1万1022件に上っていて、これまでにロシア軍の幹部や政治家など622人の容疑者を特定したとしています。
岸田首相とEU首脳が協議 ウクライナ情勢も
岸田総理大臣と日本を訪れているEU=ヨーロッパ連合のミシェル大統領らとの定期首脳協議が行われました。ウクライナ情勢をめぐって、日本とEUで協力してアジアやアフリカ諸国に連携を働きかけていく方針で一致しました。
共同記者会見で、EU=ヨーロッパ連合のミシェル大統領は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻をめぐって「私たちはともに、人道的や財政的、軍事的な支援をウクライナとその人々に送っている。制裁逃れを防ぎ、偽情報と戦うための協力についても話し合った。さらに私たちは、戦争犯罪の責任者を裁判にかけなければならないと確信している」と述べました。
ウクライナ南部で支配の既成事実化も
ロシアが掌握したと主張するウクライナ南部のヘルソン州では、親ロシア派勢力がプーチン大統領に編入を求める考えを表明し、支配の既成事実化を進めようとしています。
一方、ロシア軍の激しい攻撃が続く東部マリウポリでは、ウクライナ側が負傷兵とロシア側の捕虜との交換を提案し、兵士の解放に向けた交渉が行われているものと見られます。
ゼレンスキー大統領「NATOに加盟していたら戦争なかったと確信」
ウクライナのゼレンスキー大統領は11日、フランスのパリ政治学院で開かれたイベントにオンラインで参加し、NATO=北大西洋条約機構について「残念ながら、この戦争が起きる前、NATOは、ウクライナの居場所を見つけることができなかった。ウクライナがNATOに加盟していたら、戦争が起きることはなかったと私は確信している」と述べました。
そのうえで「ウクライナにとってこの戦争が終結するのは、われわれのものを取り戻したときだけだ。われわれの領土は歴史の一部であり、それを返還することは国際法の尊重を意味する」と強調し、ロシア軍が占領した地域から撤退する必要があると改めて主張しました。
“重傷の兵士避難の代わりにロシア捕虜を引き渡し”提案
ウクライナのベレシチュク副首相は、東部マリウポリのアゾフスターリ製鉄所を拠点にロシア軍と戦闘を続けている部隊について、11日、SNSに「重傷を負った兵士を避難させる代わりに、ロシアの捕虜を引き渡すことを提案した」と投稿し、ロシア側と兵士の解放に向けた交渉を続けていることを明らかにしました。
一方、ウクライナの「アゾフ大隊」は11日、SNSに「製鉄所ではこの24時間で38回の空爆があった」と投稿し、ロシア軍の激しい攻撃が続いているとしました。
ロシア情報機関“米国務省が市民の抗議行動あおっている”
ロシアの情報機関の対外情報庁は11日、声明を発表し、アメリカ国務省がロシア国内での市民の抗議行動をあおっていると非難しました。
声明では「アメリカ国務省がNGOを通じて、ロシア社会でウクライナでの軍事作戦の信用を落とすキャンペーンを始めた」としています。
そして「混乱を引き起こすような文言をSNSで拡散する準備が進められている。ロシアの若者たちが街頭に出て欧米が『自由で民主的』だとする、みずからの利益となるような変化を起こそうとしている」と根拠を示さないまま一方的に主張しています。
これに対し、アメリカ国務省の報道担当者は「ロシアが長年、偽情報やプロパガンダを拡散していたことを考えると、非常に皮肉な声明だ」と反論しています。
ロシアのプーチン政権は、ウクライナへの軍事侵攻を開始して以降、情報統制を強化し、SNSの「テレグラム」を通じて反戦を訴え、抗議行動を呼びかける人々の身柄を拘束するなど、軍事侵攻に異を唱える声が高まることに神経をとがらせています。
ウクライナ軍 東部で押し戻す ロシア 南部で支配既成事実化へ
ロシア国防省は11日、ウクライナ各地の指揮所や弾薬庫などの施設407か所をミサイルなどで破壊したほか、東部ハルキウ州やルハンシク州などで無人機を撃墜したと発表しました。
ロシア軍は東部2州の掌握を目指していますが、ハルキウ州ではウクライナ軍が10日、4つの集落を奪還したと発表するなど、押し戻す動きが見られます。
こうした中、ロシア国防省は、ウクライナ軍がアメリカなどの支援を受け、生物兵器を開発していた証拠が見つかったなどと一方的に主張しました。
ウクライナ側は逆にロシア軍が、東部マリウポリの製鉄所に残るウクライナの部隊に、化学兵器による攻撃を仕掛ける可能性があるとしていて、こう着する戦局を打開するため、ロシア軍が生物兵器や化学兵器の使用に踏み切るのではないかという懸念が上がっています。
アゾフ大隊の兵士の妻たちがフランシスコ教皇と面会
マリウポリのアゾフスターリ製鉄所でロシア軍と戦闘を続ける「アゾフ大隊」の兵士の妻たちが11日、バチカンでローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇と面会しました。
面会したのは、カテリーナ・プロコペンコさん(27)と、ユリア・フェドシュクさん(29)で、教皇に対し「兵士たちは食料も水もなく、多くがけがをして、死んでしまう人もいます。あなたなら命を救うことができます。彼らを死なせないでください」と涙ながらに訴え、製鉄所にいる兵士たちを安全に退避させるようロシアのプーチン大統領への働きかけを求めました。
これに対して、フランシスコ教皇は「できるだけのことをしたい」と答えたということです。
2人のうちフェドシュクさんは2日前に夫から「水がなくなった。水がなくても生き延びる方法を検索してほしい」というメッセージを受け取ったということです。
2人は報道陣に対し「製鉄所にはけがをした兵士が600人から700人いて、手足を失った人もいる。彼らは第三国に退避できるのであれば武器を置くと言っている」と話し、兵士たちの命を救ってほしいと訴えました。
ウクライナの会社 親ロシア派支配地域経由のガス輸送を停止
ロシアからの天然ガスをパイプラインで輸送しているウクライナの会社は11日、東部ルハンシク州の親ロシア派が事実上支配する地域を経由するガスの輸送を停止したと発表しました。
親ロシア派によるガスの抜き取りがあったと説明し「輸送量を維持する責任を持てない」として、ロシア側の妨害行為で停止を余儀なくされたと訴えています。
ロシアからヨーロッパに輸送されるガスのおよそ3分の1はこの地域を通って供給されているということで、ウクライナの会社は別のルートでガスを送るよう求めています。
一方、ロシア側は「そのような状況は確認されていない」としたうえで、別のルートでの供給は技術的に不可能だとしています。
“少なくとも3496人の市民が死亡”国連人権高等弁務官事務所
国連人権高等弁務官事務所は、ロシアによる軍事侵攻が始まったことし2月24日から5月10日までに、ウクライナで少なくとも3496人の市民が死亡したと発表しました。
このうち238人は子どもだとしています。
地域別でみると、東部のドネツク州とルハンシク州で1865人、キーウ州や東部のハルキウ州、北部のチェルニヒウ州、南部のヘルソン州などで1631人の死亡が、それぞれ確認されているということです。
また、けがをした市民は3760人に上るとしています。
ただ国連人権高等弁務官事務所は、東部のマリウポリなど激しい攻撃を受けている地域での死傷者の数については、集計が遅れていたり、確認がまだ取れていなかったりして統計に含まれておらず、実際は大きく上回るという見方を示しています。
ウクライナ国外に避難 約598万人(10日時点)
UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、10日の時点でおよそ598万人に上っています。
主な避難先は、
▼ポーランドがおよそ325万人、
▼ルーマニアがおよそ88万人、
▼ハンガリーがおよそ57万人、
▼モルドバがおよそ45万人などとなっています。
また、
▼ロシアに避難した人はおよそ77万人となっています。
アゾフ大隊 マリウポリ製鉄所の負傷兵士の写真を投稿
ウクライナ東部マリウポリのアゾフスターリ製鉄所を拠点にロシア軍と戦闘を続ける「アゾフ大隊」は10日、製鉄所内にいる負傷した兵士たちの写真をSNS上に投稿しました。
写真には、顔に大きなけがをして口のまわりが大きく腫れた男性や、腕を失った男性、それに片足を失って松葉づえで立つ男性などが写っています。
アゾフ大隊はこの写真とともに「けがをした兵士たちは完全に不衛生な状況の中にいる。写真の中の兵士や製鉄所にいる数百人の兵士は、自分たちの健康を犠牲にしてウクライナと世界を守ったのだ」と投稿し、国際社会に対して、負傷した兵士を早急に救出することが必要だと訴えました。
製鉄所近くに住んでいた男性 避難の困難な道のり語る
ウクライナ東部マリウポリのアゾフスターリ製鉄所の近くに住んでいた男性が、NHKのオンラインインタビューに応じ、町から避難する際の困難な道のりについて振り返りました。
エフゲニー・ソスノフスキーさん(57)は、マリウポリのアゾフスターリ製鉄所の近くに住んでいましたが、ロシア軍による砲撃が激化したことを受けて、先月30日、妻と母と一緒に人道回廊と呼ばれる避難ルートを使って町の外に出ようと決めたものの、迎えのバスが来なかったといいます。
ソスノフスキーさんは「私たちは人道回廊で何度も避難しようとしたが、できなかった。避難のためのバスが来ると発表があり、その場所まで行ったが、その日は夜まで待ってもバスは到着せず、新しい情報もなかった。風が強い日で、90歳の母はとても寒がっていた。翌日も雨の中、朝からバスを待ち、翌々日も待ったが、結局バスは来なかった。最終的にバスを諦めて自分で車を手配し、避難することにした」と当時の状況について語りました。
手配した車でマリウポリから避難する途中、ロシア軍が設置した検問所を何度も通らなければならず「検問所ではスマートフォンの写真まで細かく確認された。少しでもこの戦争に関するものがあれば検問を通れなかった」と話しました。
また「近くにいた人はカーキ色のリュックサックを持っていたという理由で検問を通れなかった。最後の検問所は特に厳しく、若い男性は裸にされ、スマートフォンのメッセージなども詳しく確認されていた。検問所でバスの列を見たが、ほとんど人が乗っておらず、限られた人しかロシア軍の占領地域から出られないのだと感じた」と語りました。
ソスノフスキーさんは途中、数々の町を経由して今月3日に南東部ザポリージャに到着したということですが「マリウポリにいたときはインターネットにつながらなかったが、避難した今、たくさんのメッセージが届くようになった。親類が亡くなったことも今になって知った。私のきょうだいの家族が砲撃で亡くなり、庭に穴を掘って埋めなければならなかった。マリウポリには同じような家族がとてもたくさんいる。マリウポリのすべてが破壊され、非常に悲しく思っている」と苦しい胸の内を語りました。
ドニプロの市長 負傷した兵士や市民受け入れ「満床に近い状態」
ウクライナ東部ドニプロのフィラトフ市長は11日、NHKのインタビューに応じ「ドニプロは、ウクライナ軍とロシア軍が対じする複数の戦線に囲まれ、戦略的に重要な場所にある」と述べました。
また「軍事的な詳細は明らかにできない」と断ったうえで「町を取り囲むように、4つの方面で、厳重な防衛ラインを築いている。われわれは必ずドニプロを防衛する」と徹底抗戦する姿勢を示しました。
ドニプロは、戦闘に巻き込まれた東部の各地から、大勢の市民が避難した町として知られています。
市長は「すでにおよそ20万人が避難しているとみられる。このうち、およそ5万人がマリウポリからの避難民だ」と述べ、食料や住宅が行き渡るよう、支援を進めていると説明しました。
その一方で、負傷した兵士や市民を受け入れるうえでの課題も指摘し「けが人の大部分は銃弾ではなく、砲撃や地雷、それにミサイル攻撃によって負傷している。市内には6つの公立病院のほか、軍の病院などもあるが、すでに満床に近い状態だ」と苦境を明らかにしました。
そして日本からの支援については「これまでに8回、日本を訪れたことがあり、日本について理解しているつもりだ。日本の国民や政府がロシアの軍事侵攻に強く反対していることに、感謝している」と謝意を示しました。
“ウクライナで雇用全体の3割の仕事失われた”ILO推計
ILO=国際労働機関は11日、ロシアによる軍事侵攻以降、ウクライナで雇用全体の3割にあたる480万の仕事が失われたとする推計を発表しました。
先月24日時点で、ウクライナ国外に逃れた523万人のうち、仕事に就いていた人が120万人いて、避難に伴って仕事を失ったということです。
ILOは今後、軍事侵攻が続けば、3か月後には雇用全体の4割を超える700万の仕事が失われる可能性があるとしていて、ロシアに対し直ちに攻撃をやめるよう求めています。