私たちの太陽系がある天の川銀河の中心に存在する巨大ブラックホールの輪郭の撮影に成功したと、日本も参加する国際研究グループが発表しました。

天の川銀河の巨大ブラックホールの姿をとらえたのは初めてで、銀河の成り立ちを理解する重要な手がかりになる成果として注目されています。

国際研究グループに参加する日本の研究者が記者会見を開き、天の川銀河の中心の巨大ブラックホールではないかとされている天体を、世界6か所の電波望遠鏡をつないで観測した結果を発表しました。

この天体は、「いて座」の方角に2万7000光年離れているということで、画像には、強い重力に引き寄せられて高温になったガスによって明るい輪のようなものが見え、その中央には、光が脱出できないために黒い穴のようになった「ブラックホールの影」が写しだされていています。

研究グループは天の川銀河の中心に存在する巨大ブラックホールの輪郭の撮影に成功したとしています。

これまでこの天体については、ブラックホールであれば、質量は太陽の400万倍ほどで「ブラックホールの影」の直径はおよそ6000万キロになると予想されていて、今回の観測結果はこれと一致するということです。

この国際的な研究グループは、3年前に別の銀河にあるブラックホールを対象にして、世界で初めてブラックホールの輪郭の撮影に成功したと公表しています。

銀河の中心にある巨大ブラックホールは、その銀河の形成に深く関係していると考えられていて、今回の成果は天の川銀河の成り立ちを理解する重要な手がかりになるとして注目されています。

ブラックホールの輪郭撮影めぐる近年の動き

巨大なブラックホールは近年、ほぼすべての銀河の中心にあると考えられるようになっているほか、銀河中心の巨大ブラックホールとその銀河の質量の大きさに一定の関係があるという指摘もあるなど、銀河の形成に深く関わっていると考えられるようになってきています。

しかし、ブラックホールは重力が極めて強く光さえ脱出できないため観測が困難とされ、巨大なブラックホールがどのようにできたのかや、なぜ、銀河の中心にあるのかなどは謎とされてきました。

こうした、巨大ブラックホールについて、その輪郭を撮影しようと立ち上げられたのが、今回の国際研究プロジェクト「EHT」=「イベント・ホライズン・テレスコープ」です。

アメリカのハワイや南米のチリ、それに南極など世界各地の6か所にある電波望遠鏡を使い、21か国の300人を超える研究者が参加する国際的なプロジェクトで、データの解析を中心に日本人の研究者が重要な役割を担ってきました。

3年前には「M87」という銀河の中心にあるブラックホールの輪郭の撮影に世界で初めて成功し、ブラックホールの姿をとらえる新しい手法として注目されています。

そして、天の川銀河の中心に存在する巨大ブラックホールがどのような姿をしているのか観測結果が期待されていました。

国際研究グループの日本代表 本間教授「すばらしい瞬間」

国際研究グループで日本の代表を務める国立天文台の本間希樹教授は「この日を迎えられて本当によかったと思っています。天の川銀河の中心にあるブラックホールは、私たちにとって非常に特別な天体で、地球からいちばん近い巨大ブラックホールです。相対性理論の検証など、重要な実験や観測をする場になることは間違いないと思います。また、私たちが住む天の川銀河の中心天体ですので、天の川銀河が誕生して今の姿になるうえで何らかの役割を担っていたと思われます。ブラックホールが人類の誕生に間接的に関係しているのではないかといったこともわかってくるかもしれません」と話していました。

そして、「このようにブラックホールという謎めいた天体が目に見える形で姿を現したというすばらしい瞬間に立ち会うことができました。これが科学のだいご味だというのがいち科学者としての正直な気持ちです」と述べていました。

専門家「時代の節目になるもの 歴史に残る成果」

ブラックホールを研究している筑波大学の大須賀健教授は「すごくきれいに写っていて率直に感動した。一般相対性理論が予言する『ブラックホールの影』が見えていて、驚いている」と話しています。

そして、観測の意義については「巨大ブラックホールの存在を追い求める時代はこれでほぼ終わり、今後はいよいよその形成メカニズムや銀河と巨大ブラックホールの進化の関係を解明する時代に変わっていくことなる。今回の成果は時代の節目になるもので、歴史に残る成果だ」と評価しています。