ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる22日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

“日本政府の支援で改修の音楽学校が攻撃で破壊”

ウクライナ東部ドネツク州のキリレンコ知事は自身のSNSで、21日にロシア軍が行った攻撃による州内の被害状況を報告しました。
それによりますと、リマンやミコライフカなどで、合わせて7人の市民が死亡したほか、10人以上がけがをしたということです。
さらにスビャトヒルスクでは、日本政府の支援を受けて2016年に改修が施された音楽学校も、攻撃を受けて破壊されたことを明らかにしました。知事が投稿した動画には、柱や外壁の一部を残して激しく破壊された建物がうつっていて、周辺には崩れ落ちたがれきが散乱している様子が確認できます。
キリレンコ知事は「日本をはじめ支援してくれた国々に感謝している」としたうえで、将来的に音楽学校の再建を目指す考えを示しました。知事は、ロシアが侵攻を開始してからこれまでに、ドネツク州で死亡した市民の数は407人にのぼるとしています。

UNHCR「ウクライナから国外避難した人の数は約644万人」

UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、20日の時点でおよそ644万人に上っています。主な避難先は、ポーランドがおよそ346万人、ルーマニアがおよそ94万人、ハンガリーがおよそ63万人、モルドバがおよそ46万人などとなっています。また、ロシアに避難した人はおよそ88万人となっています。

ウクライナ大統領府顧問 “領土の譲歩には賛成しない”

ウクライナのポドリャク大統領府顧問は21日、ロイター通信のインタビューに応じ、ロシアとの停戦交渉をめぐって「ロシアに譲歩すれば即座に戦争の激化につながる。しばらく戦闘が停止したとしても、少し時間がたつと、ロシアは武器や人員を増強するなどして新たな攻撃を開始する」と指摘しました。
そのうえで「西側諸国からは『即時停戦のためには領土の譲歩も含めた何らかの妥協が必要だ』という主張があるが、ウクライナはそれには賛成しない。ロシアがウクライナで行ってきた戦争犯罪を考えると、ウクライナの人たちはいかなる譲歩も支持しない」と述べ、徹底抗戦を続ける姿勢を強調しました。

米がウクライナ支援へ“過去20年で最大規模”の追加予算

韓国を訪問中のアメリカのバイデン大統領はウクライナへの兵器の供与や人道支援などを強化するため、およそ400億ドル、日本円にして5兆円余りの追加の予算案に署名し、法律が成立しました。アメリカの有力紙ニューヨーク・タイムズは議会が承認した外国政府への支援としては少なくとも過去20年間で最大規模だと伝えています。
これについてウクライナのゼレンスキー大統領は、21日に公開した動画で「直ちに署名したバイデン大統領に感謝する。これはヨーロッパでの自由の保護に対する歴史的な貢献だ」と評価しました。

キーウでオペラ劇場が再開

ウクライナの首都キーウでは、ロシアの軍事侵攻によって休館が続いていた国立オペラ劇場が21日、およそ3か月ぶりに再開し、多くの観客が訪れました。
150年以上の歴史があるキーウの国立オペラ劇場は2月24日のロシアの軍事侵攻の開始から休館を余儀なくされていましたが、劇場のスタッフのおよそ7割がキーウに戻る中、21日、公演を再開しました。

初日の公演はウクライナで人気の喜劇で、会場には軍服を着た人も多くみられ、時折、笑い声も起こるなどおよそ3か月ぶりとなるオペラを楽しむ様子が見られました。

ロシア 東部2州で攻勢もウクライナ反撃

ロシア国防省は21日、ウクライナ各地をミサイルで攻撃し、北西部ジトーミル州では巡航ミサイル「カリブル」でウクライナ軍の兵器などを破壊したと発表しました。
破壊した兵器についてロシア側は、欧米側から供与され東部2州のウクライナ軍に移送されようとしていたと、主張しています。
また南部オデーサの港もミサイルで攻撃したと発表し、ウクライナ軍の装甲車用の燃料施設を破壊したとしています。

ロシア国防省は20日には、東部の要衝マリウポリ全域を掌握したと発表していて、今後は東部2州の完全掌握に向けてマリウポリから部隊を進軍させるとともに、近く掌握する見通しと主張する東部ルハンシク州で攻勢を強めるねらいとみられます。
これに対して、ウクライナ軍は欧米の軍事支援を受けて反撃していて、アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は、20日、「ロシア軍はウクライナ側の大規模な反撃と紛争の長期化にも備えているようだ」とも分析しています。

北欧2か国首脳がNATO加盟に難色のトルコ大統領と電話会談

トルコ大統領府の発表によりますと、このうち、スウェーデンのアンデション首相に対しては、「テロ組織への政治的、財政的支援や、武器供与をやめなくてはならない」として具体的な行動を求め改めてNATOへの加盟に難色を示しました。
これに対してアンデション首相は、「平和や安全保障、そしてテロとの戦いを含む両国の関係を強化していくことを楽しみにしている」とツイッターに投稿しました。
また、フィンランドのニーニスト大統領は「電話会談はオープンで直接的なものだった」とツイッターに投稿し、フィンランドは、あらゆる形のテロリズムを非難すると強調しました。
両国の加盟にはNATOの加盟国すべての同意が必要で、今後のトルコの出方が焦点になっています。

南部オデーサの企業関係者「輸出量は10分の1程度に」

ロシア軍による海上輸送の妨害で、小麦などの輸出が滞っていることによる世界的な食料不足への懸念が高まっています。
ウクライナ最大の港がある南部オデーサで小麦などの穀物の輸出を手がける企業のアレクサンドル・ポリシェンコ社長はNHKの取材に対し、輸出量は10分の1程度に減っている実情を明らかにしました。

ポリシェンコ社長によりますと、ことし2月24日以降は港の周辺にロシアの艦艇が7隻から15隻ほど集まり、港湾機能が停止したということです。

このためこの企業はしばらくの間、輸出を停止し、現在はトラックを使ってルーマニアやポーランドなどを経由して外国の港からの輸出を試みているということです。
またポリシェンコ社長は「輸出量は通常の10分の1程度まで減少していて、鉄道を含めても海上輸送に匹敵する量はとても運べず、解決法はない」と説明しました。

さらに「毎週のようにオデーサの海水浴場にロシア軍の機雷が打ち上げられていると聞いている。これは戦争が終わっても残る問題だ」と述べ、戦闘が終わった後も輸出の再開は容易ではないという考えを示しました。