ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が始まって24日で3か月となります。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる24日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
ロシア軍 東部拠点に攻勢を強める
ロシア国防省は24日、ウクライナ東部ドネツク州の各地をミサイルで攻撃し、弾薬庫などを破壊したほか、東部のクラマトルスクでは、ウクライナ軍の戦闘機を撃墜したと発表しました。
ロシア軍は、完全掌握を目指すウクライナ東部の2州のうち、ルハンシク州のおよそ9割を掌握したとみられ、現在、州全域の掌握を目指し、拠点となる都市への攻勢を強めています。
⇒軍事侵攻3か月 ロシア軍 ウクライナ側拠点の都市へ攻勢強める 詳細記事はこちら
ウクライナからの国外避難 659万人に(23日時点)
UNHCR=国連難民高等弁務官事務所のまとめによりますと、ロシア軍の侵攻を受けてウクライナから国外に避難した人の数は、23日の時点でおよそ659万人に上っています。
主な避難先は、
▽ポーランドがおよそ352万人、
▽ルーマニアがおよそ96万人、
▽ハンガリーがおよそ64万人、
▽モルドバがおよそ47万人などとなっています。
また▽ロシアに避難した人はおよそ93万人となっています。
侵攻3か月 日本への避難民は1040人に
ウクライナから日本に避難した人たちは1040人に上っています。
ウクライナから避難した人たちの中には、日本にとどまり続けることに、複雑な思いを抱えている人たちもいます。避難生活が長期化し、言葉や就労などの支援が課題となる中、ニーズに応じた対応が求められています。
マリウポリで「200人の遺体」 市長顧問が明らかに
ウクライナ東部、マリウポリの市長の顧問を務めるアンドリュシェンコ氏は24日、SNSに投稿し「マリウポリ市内のアパートでがれきの撤去を行ったところ、地下からおよそ200人の遺体が見つかった」と明らかにしました。
アンドリュシェンコ氏によりますと、埋葬作業を担う親ロシア派の勢力は、この人たちがウクライナ軍によって殺されたとする内容のビデオを撮影するよう、遺族に求めているということです。
しかし、遺族側はこれを拒否しているため、多くの遺体が放置されたままになっていて、街なかには悪臭が漂っているということです。
ロシア軍の砲撃で東部2州向けガス供給停止
ウクライナで天然ガスの輸送を行っている会社は23日、ロシア軍の砲撃で主要パイプラインが破壊され、東部のドネツク州とルハンシク州向けのガスの供給が停止されたと発表しました。パイプラインの破損は局所的だとする一方、ロシア側の攻撃が続いているため復旧作業ができず、ロシア側に占領された地域ではガスを送る別の方法もないとしています。
この会社は、ロシアで産出された天然ガスをヨーロッパに輸送するためのパイプラインを運営してきましたが、ウクライナ東部の親ロシア派が事実上支配する地域でガスが抜き取られたとして、今月11日にも、一部のパイプラインを停止しており、ロシア側の支配地域で市民生活に大きな影響が出ている可能性があります。
「世界ガス会議」 エネルギーの安定供給めぐり意見交わす
天然ガスについて世界各国のエネルギー企業や専門家などが話し合う「世界ガス会議」が韓国で始まり、ウクライナ侵攻を受けてエネルギー安全保障が国際的な課題となる中、安定供給などをめぐり意見が交わされています。
ゼレンスキー大統領「北部の町で87人の遺体」
ゼレンスキー大統領は、23日に公開した動画で、首都キーウから50キロほど離れた北部チェルニヒウ州の町デスナでロシア軍が今月17日に行った建物への攻撃について「4発のミサイルによる攻撃だった」と述べた上で、「がれきの撤去が完了し、87人の遺体が見つかった」と明らかにしました。
ゼレンスキー大統領は死者が市民なのか兵士なのかなど詳しいことを明らかにしていませんが、AP通信は、軍事侵攻の開始以降に行われた1度の攻撃としては、死者数が最も多い事案の1つになると伝えています。
ロシア軍の砲撃で大けがのウクライナ人男性 日本に避難し治療
ウクライナへの侵攻を続けるロシア軍による砲撃で大けがをしたウクライナ人の男性が、今月21日、来日し、千葉市内の病院で治療を受けていることがわかりました。軍事侵攻以降、ロシア軍の攻撃でけがをしたウクライナの人が、支援者や病院の協力で日本に避難してきたのは初めてとみられます。
病院によりますと、男性は、右足やろっ骨が折れているほか、左足のアキレスけんの一部が切れていて、これから2か月入院して、治療やリハビリを受ける必要があるということです。男性は、NHKの取材に対して「医師から『ゆっくり治していく』という話を聞いた。体調はよくなっていて、必ず体を治して、もし戦争が続いていれば、戦う。戦争が終わっていれば、日本とウクライナの交流を担っていきたい」と話していました。
⇒ロシア軍の砲撃で大けがのウクライナ人男性 日本に避難し治療 詳細記事はこちら
国連安保理 情報戦やサイバー攻撃めぐり非難の応酬
国連安全保障理事会の会合では、ウクライナ情勢での情報戦やサイバー攻撃などをめぐって欧米各国とロシアによる非難の応酬となりました。
このうち、アメリカのトーマスグリーンフィールド国連大使は「人権を制限し、紛争をあおるためにデジタル技術が悪用されている」と指摘した上で、「ロシア政府は、インターネットの接続を制限しコンテンツを検閲し、偽の情報を広めている。侵略に関する真実を報道したジャーナリストを脅迫し、逮捕し続けている」と非難しました。また、フランスのドリビエール国連大使も「ロシアはウクライナへ軍事侵攻する1時間前に衛星ネットワークへのサイバー攻撃を行った」と述べ非難しました。
これに対してロシアのネベンジャ国連大使は「欧米によるロシアに対する偽情報と世論操作の運動は、前例のない規模と強さで行われている」と反発し、「欧米が進めるデジタル空間の軍事化は、直接の軍事衝突の脅威を増大している」と主張しました。
「世界で最も影響力のある100人」にゼレンスキー大統領ら
アメリカの雑誌「タイム」はことしの「世界で最も影響力のある100人」を発表し、「指導者」の部門ではウクライナのゼレンスキー大統領やロシアのプーチン大統領らが選ばれました。
⇒「世界で最も影響力のある100人」ゼレンスキー大統領が選出 詳細記事はこちら
ゼレンスキー大統領「兵器そろっていれば救えた命もあった」
ウクライナのゼレンスキー大統領は23日に公開した動画で「2月24日以降、ロシア軍は1474回のミサイル攻撃を行い、その大半は民間施設を狙ったものだった。航空機やヘリコプターによる空爆は3000回以上に及び、これだけの攻撃に耐えた国はほかにはないだろう」と述べ、侵攻開始から3か月間にわたるロシア軍の戦闘行為を強く非難しました。
そしてロシア軍は、完全掌握を目指す東部2州に戦力を集中させるとともに、南部ヘルソンや、南東部ザポリージャなどでは、さらなる支配の既成事実化を進めるはずだとして「これからの数週間は困難なものになるだろうが、ウクライナには戦うことしか選択肢はなく、私たちの土地と人々を解放しなくてはならない」と述べ、国民に対して、軍への協力を呼びかけました。
また、欧米からの軍事支援に対しては感謝を示す一方で「外国のパートナーに最新兵器や戦闘機が必要だと言い続けているのは、形式的な理由からではない。必要な兵器がそろっていれば救うことができた命もあったからこそ私たちは要求を行っているのだ」と述べ、国際社会は自由の価値を守るため引き続きウクライナを積極的に支援すべきだと訴えました。
コロンビア 地雷除去の専門チームをNATO加盟国へ派遣
南米・コロンビアの国防省は23日、ヨーロッパに地雷除去の専門チームを派遣し、ウクライナ軍の訓練を担う方針を示しました。モラノ国防相がアメリカのオースティン国防長官の要請を受け、地雷除去に精通した軍の11人の専門要員をウクライナの隣国のNATO加盟国へ派遣することを決めたとしています。
ウクライナではロシア軍が各地に地雷を設置し、住民の安全を脅かしているとされ、モラノ国防相は声明で「コロンビア国内には地雷除去の訓練施設もあり、われわれが培ってきた専門的な能力や知識でウクライナ国民が地雷の被害に遭うことがないよう支援していく」と話しています。
ロシア外交官 軍事侵攻に抗議し辞職 スイス
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続く中、スイスのジュネーブにあるロシア政府の代表部に所属する外交官が、軍事侵攻に抗議して辞職したことが明らかになりました。関係者が23日に明らかにしたところによりますと、ロシアの外交官ボリス・ボンダレフ氏はジュネーブにある各国政府の代表部に対して、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシア政府に抗議して辞職する、という内容の声明を送ったということです。
ロシア大統領府「ボンダレフ氏はわれわれの敵」
抗議の辞職について、ロシア大統領府のペスコフ報道官は24日、「ボンダレフ氏はもはやわれわれの味方ではなく、むしろ敵だと言える」と述べ、強く非難しました。
その上で「彼はロシアの指導部の行動を非難しているが、実際は、すべての国民に支持されているもので、つまりわが国の統一意見に反している」と主張しました。
⇒「ロシア外交官 ウクライナへの軍事侵攻に抗議し辞職」詳細記事はこちら
米国防長官「デンマークが対艦ミサイル『ハープーン』供与」
アメリカのオースティン国防長官は23日、ウクライナの防衛について話し合う関係国による会議をオンラインで開きました。オースティン長官は会議のあと記者会見し「ウクライナの沿岸を守るため、デンマークが対艦ミサイル『ハープーン』を供与すると表明したことに感謝する」と述べ、ウクライナへの軍事支援の一環として、対艦ミサイルが供与されることを明らかにしました。
対艦ミサイル「ハープーン」は、ロシア軍の艦船が黒海の港を封鎖するなどして海上輸送を妨害し、ウクライナからの小麦などの輸出が滞るなか、ゼレンスキー大統領が供与を求めていました。今回の会議には47か国が参加し、およそ20の国が新たな軍事支援を表明したということで、このうちイタリアとギリシャ、それにノルウェー、ポーランドが砲撃システムの供与を表明したということです。
スターバックス ロシアでの事業から撤退と発表
アメリカのコーヒーチェーン大手、スターバックスは23日、ロシアのウクライナ侵攻を受けてロシアでの事業から撤退すると発表しました。声明では「ロシアからの撤退を決めた。ロシア市場にわれわれのブランドは存在しなくなる」と説明しています。
アメリカメディアによりますと、スターバックスは現在、ロシアに130店舗を展開していて、会社は2000人の従業員について、今後半年にわたって資金的な援助を行うほか、再就職の支援にあたるとしています。スターバックスはことし3月、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けてロシア国内における商品の出荷や店舗の営業などすべての事業を停止していましたが、戦闘の長期化を受けて撤退を決めたものとみられます。
戦闘長期化 ロシア国内にも変化 国営メディアで批判的発言も
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「特別な軍事作戦」だと訴えてきた国営メディアが、一部の番組で批判的な内容を伝え始めるなど、戦闘が長期化するなかでロシア国内にも変化が見られるようになっています。
ロシアの国営テレビは今月16日、討論番組に出演したロシア軍の元大佐で軍事評論家のホダリョノク氏が「ロシア軍の戦況は悪化することも考慮しなければならない」とした発言を放送しました。またホダリョノク氏は戦況が悪化する原因について「最大の問題は、ロシアが軍事的、政治的に孤立していることで、世界全体がわれわれを敵視している。この状況を解決する必要がある」と訴えました。
プーチン政権に近く「ロシアの宣伝者」とも呼ばれる著名なキャスター、ウラジーミル・ソロビヨフ氏も4月、討論番組内で、ロシアの黒海艦隊の旗艦「モスクワ」が沈没したあと「『モスクワ』に何が起きたのか、私は激怒している」と述べたうえで、ロシア海軍は、対艦ミサイルなどに対する防衛対策を行っていたのかと批判しました。
イギリス国防省は今月23日に発表した分析で、ロシア軍は、この3か月間で旧ソビエトがアフガニスタンに侵攻した9年間で確認された、およそ1万5000人の死者が出ている可能性が高いと指摘しました。そのうえでロシア軍の損害が増え続ければ軍事作戦に対する不満を表明する社会の機運が高まるかもしれないと分析しています。
ウクライナ 少なくとも市民3930人が死亡
国連人権高等弁務官事務所はロシアによる軍事侵攻が始まったことし2月24日から5月22日までにウクライナで少なくとも3930人の市民が死亡したと発表しました。このうち257人は子どもだとしています。地域別では、東部のドネツク州とルハンシク州で2200人、キーウ州や東部のハルキウ州などそのほかの地域で1730人の死亡が確認されているということです。けがをした市民は4532人に上るとしています。ただ東部のマリウポリなどでの死傷者については、まだ確認が取れていないなどとして、実際の死傷者の数はこれを大きく上回るという見方を示しています。