ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる27日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

ロシア地方議会の野党議員 議会で軍の即時撤退求める

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について、地方議会の野党議員が公然と、撤退すべきだと訴えるひと幕があり、軍事侵攻に対する不満の広がりもうかがえる事態となっています。

ロシア極東の中心都市ウラジオストクがある沿海地方の議会で27日、野党・共産党に所属する議員が追加議題の発言として、プーチン大統領に宛てたとする文書を突然、読み上げました。

この中では、はじめにウクライナへの軍事侵攻で死亡した兵士などの家族に対する支援策について言及したうえで、「軍事作戦をとめなければ、さらに孤児が増える」と訴えました。

これに対して、議長が即座に発言をやめるよう求めましたが、議員は立ち上がってさらに読み続け、「国に大きく貢献できたであろう若者たちが軍事作戦で亡くなったり、負傷したりしている」と述べました。

そのうえで、「軍事的な手段での成功は不可能だ」として、ロシア軍の即時撤退を求め、同じ共産党に所属する別の議員1人が拍手しました。

親ロシア派武装勢力 プシリン氏「行政機関の設置が必要」

国営のロシア通信は26日、ウクライナ東部の一部を事実上支配する親ロシア派の武装勢力の指導者、プシリン氏が、ロシアが軍事侵攻で掌握した地域に新たに行政機関を設置することが必要だと述べたと伝えました。

この中でプシリン氏は「住民投票や選挙の実施のためには行政機関の設置が必要だ。これこそ私たちが今、力を注いでいることだ。ヘルソン地域や解放されたザポリージャ地域の住民を支援し、経済を構築するために管理システムが必要だ」と話しています。

ロシアは武力で掌握した地域で支配の既成事実化を進めていて、プシリン氏の発言はいわゆる「ロシア化」をいっそう進める狙いもあると見られます。

ルハンシク州の地元当局「セベロドネツクで4人死亡 」

ルハンシク州の地元当局は、ロシア軍が攻勢を強めるセベロドネツクで26日、ロシア軍の攻撃によって4人が死亡したとSNSへの投稿で明らかにしました。

地元メディアに出演したセベロドネツクの当局者は「市内にはおよそ1万5000人がとどまっていて、シェルターで生活している。ガスや電気、水道が使えない状態が続いていて精神的に追い詰められている」と窮状を訴えています。

ルハンシク州 セベロドネツクなどでは

ロイター通信は、ロシア軍が攻勢を強めるルハンシク州のセベロドネツクや周辺の様子を伝えています。

このうち今月22日にセベロドネツク市内を走る車から撮影された映像には、砲撃などを受けたと見られる集合住宅で多くの窓が壊れたり、電線が垂れ下がったりしている様子が写っていて、ほかの車や人通りは全く見られません。
また、隣接するリシチャンシクで同じ日に撮影された映像では、工場とみられる敷地内から黒煙が激しく立ちのぼっている様子が写っています。

セベロドネツクから南に30キロ余りのポパスナで26日に撮影された映像では、ロシア側の戦車が土煙を上げながら道路を走ったりヘリコプターが低い高度で飛んだりするなど、一帯の支配を強めている様子がうかがえます。

自宅を破壊されたという地元の女性は「攻撃におびえることに疲れ果てています。それでもまだ状況が少しでもよくなってほしいと願っています」と話していました。

総務省 ウクライナに消防機材や通信機器など25品目を支援へ

総務省は、ウクライナ政府からの要請を受けて、戦地での人命救助に必要な消防機材や通信機器を支援物資として送ると発表しました。

支援物資は全国の消防本部や民間企業などからの協力で調達したもので、消防服およそ1300着や、倒壊した建物の下敷きになった人などを救出するための油圧ジャッキ50台、けが人などを運ぶストレッチャー150台、衛星携帯電話25台など合わせて25品目です。

国連機関を通じて今月中にも輸送を開始し、隣国のポーランドでウクライナ政府に引き渡されるということです。

金子総務大臣は、閣議のあと記者団に対し「武力攻撃による火災や建物倒壊が続きインフラに深刻な被害が発生している中、ウクライナの消防活動や政府活動などに従事する方々が支援物資を活用し、任務の遂行に貢献することを期待している」と述べました。

ゼレンスキー大統領「EUは一日も早く追加制裁案に合意を」

ウクライナのゼレンスキー大統領は26日、新たに動画を公開し、EU=ヨーロッパ連合がロシアからの石油の輸入を年内に禁止することを含む追加の制裁案に合意できていないことについて「EUがロシアへの追加制裁案に合意するのにどれだけ時間を費やしているか、見てほしい。こうしている間にもロシアは、エネルギー代金としてヨーロッパから1日およそ十億ユーロも受け取っている」と述べ、批判しました。

そのうえで「ロシアへの圧力は命を救うことと同じだ」と述べ、追加制裁案に一日も早く合意するよう訴えました。

東部ルハンシク州で攻防激化か

ロシア軍はウクライナ東部2州のうちルハンシク州で全域の掌握をねらって、中心都市セベロドネツクを包囲しながら攻勢を強めていて、親ロシア派の指導者は州の95%を掌握したと主張しました。
セベロドネツクの当局者はイギリスの公共放送BBCに対し、ここ数日で市内の住宅の9割が破壊され、今もおよそ1万3000人が地下や避難所に身を寄せていると話しています。ルハンシク州の知事は「今週が決定的なものになるだろう」と述べ、ロシア側との攻防が重要な局面に差しかかっているという認識を示していて、攻防が激しくなり、被害が拡大することが懸念されています。

また、ルハンシク州の北西に位置するハルキウ州のシネグボフ知事は26日、ウクライナ第2の都市ハルキウでロシア軍の砲撃により7人が死亡し、9歳の子どもを含む17人がけがをしたと明らかにしました。

ロシアが掌握したと主張する地域では支配の既成事実化が進んでいて、国営タス通信は、東部の要衝マリウポリで26日、ロシア政府が大型モニターを備えたトラックを中心部に運び込んで国営テレビのニュース放送を始めたと伝え、ロシア側のプロパガンダを拡散するねらいがあるものと見られます。

こうした中、ロシアのプーチン大統領は26日、イタリアのドラギ首相と電話会談を行い、ロシア大統領府によりますと、ウクライナ南部に面した黒海とアゾフ海の港で、民間の船が出られるように「海の人道回廊を毎日開放する」と伝えたということです。さらに、世界的な食糧危機の問題について「西側諸国の政治的な動機による規制が解除されれば、穀物と肥料の輸出によって食糧危機への対処に大きく貢献する用意がある」と述べたということで、解決のためには欧米による厳しい制裁の解除が必要だと主張しました。

ウクライナ外相 東部 “状況は悲惨” 追加の軍事支援を訴え

ウクライナのクレバ外相は26日、自身のツイッターに寄せられた質問に答える形で動画を投稿し、攻防が激化しているウクライナ東部について「人々が言うよりも状況は悲惨だ」と述べました。
その上で「私たちには重火器が必要で、それがロシアに唯一負けている点だ。もしウクライナのことを本当に心配しているなら、とにかく武器、武器、そして武器だ」と述べ、各国に対して追加の軍事支援を訴えました。

WHO年次総会 ロシアの軍事侵攻を非難する決議採択

スイスのジュネーブで開かれているWHO=世界保健機関の年次総会で26日、ロシアの軍事侵攻について、ウクライナで医療の緊急事態を引き起こしているなどとして、非難する決議が採択されました。
ウクライナ、日本、そしてアメリカなど46か国が共同提案した決議は、ロシアの軍事侵攻について「最も強いことばで非難する」とした上で、ロシアに対し、▽病院や医療施設への攻撃を直ちにやめ、▽民間人を含む傷病者のほか医療従事者や人道支援関係者を保護することなどを求めています。
そして、WHOに対しては▽ウクライナの医療施設や医療従事者、そして患者などへの攻撃を監視し、情報を収集することや、▽ウクライナのほか、避難民を受け入れている国々への人的・財政的な支援などを要請しています。
採決では、賛成が88、反対が12、棄権が53でした。
一方、ロシアはこれに対抗する形で、ウクライナでの▽民間人の保護や▽国際人道法の順守などを求める決議案をシリアとともに提出しましたが、みずからの軍事侵攻については触れておらず、採決で否決されました。

米国防総省高官 “ロシア軍 ウクライナ東部2州で攻勢強める”

アメリカ国防総省の高官は26日、記者団に「ロシア軍の部隊がスラビャンスクとクラマトルスク方面に向けて前進したようだ」と述べ、ロシア軍がウクライナ東部2州のうち、ドネツク州の交通の要衝に対し、攻勢を強めているという分析を示しました。
また、2州のうちもう1つのルハンシク州で、ウクライナ側が拠点としているセベロドネツクについては「激しい戦闘が続いているが、ロシア軍が北東部の大部分を制圧したようだ」と述べました。

一方、同じ東部の、ウクライナ第2の都市ハルキウ周辺では、引き続き、ウクライナ軍の部隊がロシア軍の部隊を押し戻していると分析しています。
また、南部では、ヘルソンとミコライウの間で、ロシア軍とウクライナ軍の衝突が続いているとしています。

フィンランド マリン首相 キーウでゼレンスキー大統領と面会

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻を受けてNATO=北大西洋条約機構への加盟を申請した北欧フィンランドのマリン首相が26日、ウクライナの首都キーウを訪れ、ゼレンスキー大統領と面会しました。

ウクライナの大統領府によりますと、この中でマリン首相は「自分たちの自由とヨーロッパ全体のために戦うウクライナの人々の勇敢な精神は、称賛に値する」と述べたということです。

これに対しゼレンスキー大統領は、フィンランドによるウクライナへの軍事支援とロシアに対する制裁について感謝の意を示しました。

そのうえで「各国のリーダーがウクライナを訪れることは直接的なメッセージとして非常に重要で、すばらしい」と述べ、国際的な支援などにつながるとして、訪問を歓迎しました。

また、ウクライナのEU=ヨーロッパ連合への加盟をめぐり「フィンランドの投票がウクライナの人々を失望させないことを確信している」と述べ、加盟に向けた後押しに期待を示しました。

フィンランド政府によりますと、マリン首相は首都キーウ近郊のブチャやイルピンを訪れて地元の住民からロシア軍の残虐行為について聞き取りを行い「責任逃れをする余地はないだろう」と述べたということです。

キーウ中心部の広場 ロシア軍の戦車などを展示

4月初旬にかけてロシア軍の激しい攻撃を受けた首都キーウの近郊では、ウクライナ軍によって破壊され、動かなくなったロシア軍の戦車や装甲車などが路上に放置されています。

ウクライナ軍は、展示などのためにこれらを運び出していて、26日も、兵士たちが重機でつり上げて戦車などを車両に積んでいました。

これまでに数十台がキーウ市内などに運ばれたということで、このうちキーウ中心部のミハイル聖堂前の広場には、5月21日から戦車など5台が置かれ、砲弾やロシア軍の軍服、焼けた缶詰も展示されています。

多くの市民が破壊された場所などの説明を読んだり、写真を撮ったりしていて、6歳と9歳の子どもを連れて訪れた男性は「子どもにもこの事実を見せたいと思ってきました。戦車を見ると悲しい気持ちになりますが、国を守ってくれているウクライナ軍を誇りに思います」と話していました。

また18歳の女性は「ほんの少し前まで、この戦車がキーウにも迫ってきていたと考えるととても怖いです」と話していました。

東部のドンバス地域では激しい戦闘が続いている一方、キーウでは店舗やレストランが営業を再開するなど、市民の生活が次第に元に戻り始めているところもあります。

国立軍事史博物館のネチョソフ・パブロさんは「これは、戦う姿を見てもらうためにやっています。テレビで『敵と戦っている』と伝えられるだけでなく、どうやって敵と戦っているのかを自分自身で見ることができるのです」と話していました。

戦車などは1か月ほど展示し、そのあとは博物館に移す予定だということです。

ドイツ ショルツ首相 “ロシアは帝国主義”と強く非難

ドイツのショルツ首相は26日、スイスで開かれていた世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」で演説し、ウクライナへの軍事侵攻を続けるロシアについて「核武装した大国が国境線を変えようと企てている。これは帝国主義だ」と述べ、強く非難しました。

その上で、第2次世界大戦をはじめ、過去の戦争を経て築かれてきた国際協調に基づく秩序が危機に直面しているとして「プーチンは戦争に勝ってはならない。私は彼が勝たないと確信している」と述べ、ロシアの侵攻を容認しないよう各国に一致した対応を呼びかけました。

さらに「プーチンが和平に向けて真剣に交渉するのはウクライナの守りを突き崩すことができないと自覚した時だけだ。だからこそわれわれはウクライナを支援している」として、プーチン大統領を交渉の席につかせるためにも、兵器の供与をはじめウクライナへの支援の継続が必要だと訴えました。