ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる30日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
ロシアが掌握主張のメリトポリの市長が会見 危機感示す
ロシアが掌握したと主張する南東部ザポリージャ州の都市、メリトポリは軍事侵攻後まもない2月下旬からロシア軍が掌握したと主張していて、フェドロフ市長は、3月11日にロシア軍によって拉致され、6日間にわたって拘束されたあと解放されました。
30日に避難先からオンラインで記者会見したフェドロフ市長は、「当初は人々が避難できていたが、2週間前からは封鎖されていて、400台ほどの車が立ち往生している。生まれたばかりの赤ちゃんも避難できないままでいる」と危機感を示しました。
また、先週からロシアのパスポートを配る準備が始まったほか、ロシアの通信事業者が携帯電話のSIMカードを配り始めていて、市民は、通信環境を得るために、ロシアのSIMカードを買わざるをえないとしています。
さらに、ATM=現金自動預け払い機で現金が引き出せず、ロシアが一方的に併合した南部のクリミアから食料が運ばれているものの、3倍から4倍近くに高騰しているということです。
一方で、フェドロフ市長は29日にウクライナを支持する集会が開かれるなど、抵抗の動きも出ているとしたうえで「パスポートを配るといった動きは誰も協力しようとせず、失敗するだろう」と述べました。
ゼレンスキー大統領 保安庁のハルキウ州トップを解任
ウクライナのゼレンスキー大統領は、東部ハルキウ州を訪れ兵士たちを激励した29日に公開したビデオ演説で、治安機関にあたる保安庁のハルキウ州のトップを解任したことを明らかにしました。その理由についてゼレンスキー大統領は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まって以降、保安庁のハルキウ州のトップが「街を守るために働かず、自分のことばかり考えていた」と述べ、今後さらに詳しく調べる考えを示しました。
障害のあるウクライナからの避難者支援 学生ボランティア出発式
ロシアの軍事侵攻を受け、ウクライナから避難した障害のある人などを支援しようと日本財団が派遣する学生ボランティアの出発式が行われ、ウクライナの隣国のポーランドに向けて出発しました。
出発式は30日、東京都内で開かれ、日本財団ボランティアセンターに応募があったおよそ230人から選ばれた人のうち25人が出席しました。式では財団の樺沢一朗常務理事が「コロナの影響で国内にも海外にも出られていないと思うが、今、世界がどう動いているか知る貴重な経験にしてほしい」と述べました。これに対しボランティアを代表して2週間余りポーランドに派遣される、早稲田大学2年の齋藤凛花さん(19)は「私は生まれつき難聴がありますが、障害者の1人として避難した人たちがどれだけ不安で感情を押し殺しているか想像するだけで心が苦しいです。心細さや生活の不便さを減らしたいです」と抱負を語っていました。
財団によりますと、ウクライナ国内にはおよそ270万人の障害者がいて国外に避難した人もいますが、支援は行き届いていないとみられ、学生たちはポーランド南部のクラクフを拠点に現地のNGOと協力しながら障害者や子どもの支援、それに医薬品や食料品の配布などを行うということです。
ウクライナからの避難者支援で家財道具運び込み 愛知
ウクライナから日本に避難してきた人たちを支援するため愛知県大府市に寄付されたたんすなどの家財道具が30日、避難してきた人たちが暮らす予定の市営住宅に運び込まれました。
大府市ではウクライナから避難してきた3家族・9人が生活しています。市には一連の報道を見た人から避難したウクライナの人たちに家財道具を寄付したいという申し出が相次いでいて、30日は市が無償で提供している市営住宅に寄付されたたんすが運び込まれました。この部屋では市内に住んでいるウクライナ人のドブレーリヤ・ビクトリアさんを頼って避難してきた女性2人が暮らすことになっていて、たんすの搬入に立ち会ったビクトリアさんは「少しずつものがそろってきて、もう少しで暮らせるようになります。すごくうれしいです」と話していました。
市によりますと、たんすのほかにも冷蔵庫や洗濯機などが寄付され、すでに市営住宅に運び込んだということです。
ウクライナから避難した夫婦が開発手伝ったパン発売 愛知
ウクライナから愛知県に避難してきた夫婦が商品開発を手伝ったウクライナ伝統のパンが30日、県内の販売店で発売されました。
先月、ウクライナから日本に避難してきたルスランさんとリディアさん夫婦は、県内のパン製造販売会社がウクライナ伝統のパンを商品開発するにあたって母国の味についてアドバイスするなどしてきました。できがったパンが30日、愛知県安城市の販売店で発売され、2人も店を訪れて店頭に並んだパンを確認していました。
販売されているのはウクライナで主食として食べられている黒パンと、ジャムが入った揚げドーナツ「ポンチキ」の2種類で、ルスランさんは「日本人が私たちのパンを味わうことはとてもよいことです。文化の交流に向けた1歩になると思います」と話していました。パンを購入した65歳の男性は「ウクライナのパンはどんな味なのか気になり、少しでも支援につながればと思って手にとりました」と話していました。
パンは県内の6店舗で年末まで販売される予定で、利益はウクライナの支援に充てられるということです。
ウクライナからの避難民に就職相談窓口開設 東京都
東京都はウクライナから日本に避難し、仕事を探している人などを支援しようと新たに就職相談に対応する専用窓口を開設しました。
専用の相談窓口は新宿区四谷にある「東京外国人採用ナビセンター」に今月25日から東京都が新たに設けました。ロシアによる軍事侵攻を受けてウクライナから避難した人で仕事を探している人たちを支援するため、ハローワークを通じて仕事探しを行うほか、無料で受けられるビジネスマナー講座などを案内します。英語やロシア語などで相談することができ、ウクライナ語は音声翻訳機やオンラインで通訳を介した相談に対応します。また避難している人の採用を検討する都内の中小企業などに対しても、雇用に向けた手続きの相談に応じたり、外国人を採用する際のノウハウを学ぶセミナーなどを紹介したりするということです。
相談は対面のほか電話やオンラインでも対応していて、月曜日から金曜日の午前9時から午後5時まで受け付けています。
ゼレンスキー大統領「重要なインフラ すべて破壊された」
ウクライナのゼレンスキー大統領は29日に公開したビデオ演説で、ルハンシク州でのウクライナ側の最後の拠点とされるセベロドネツクの状況について触れました。
この中で大統領は「ロシア軍による攻撃で街の重要なインフラはすべて破壊された。建物の90%が損傷を受け、住宅の3分の2以上が完全に破壊された。通信も失われている」と述べ、街が激しい攻撃にさらされていることを明らかにしました。そのうえでセベロドネツクの掌握はロシア軍にとって最重要課題になっていると指摘し「彼らは大通りにロシア国旗を掲げるために何人が犠牲になろうと気にしない」と述べ、ロシア側を非難しました。
一方で「われわれは自分たちの土地と国民を守るためにより多くの近代的な兵器を手に入れようとしている。セベロドネツクの前線を守っているすべての人に感謝する。最後にはわれわれが平和を取り戻す」と述べ、ロシアの攻勢を前に徹底抗戦を呼びかけました。
【解説動画】ルハンシク州“最後のとりで” ウクライナ軍 なぜ劣勢
ゼレンスキー大統領がハルキウ州へ 軍事侵攻後 東部を初訪問か
ウクライナのゼレンスキー大統領は29日、東部のハルキウ州を訪問しました。複数のメディアによりますと、ロシアによる軍事侵攻が始まってからゼレンスキー大統領がウクライナ東部を訪れるのは初めてだということです。
ゼレンスキー大統領は第2の都市ハルキウで大きく破壊された集合住宅を視察し、ハルキウ州のシネグボフ知事から被害状況などについて説明を受けました。ウクライナ大統領府の発表によりますと、ウクライナ側はハルキウ州の5%をロシア軍から奪い返したものの今も31%をロシア軍が占拠しているということです。
ゼレンスキー大統領は前線で戦う兵士と面会し「国のために命をかけ、ウクライナの独立を守るために戦ってくれて感謝している」などとねぎらいのことばをかけ激励しました。