[ワシントン 3日 ロイター] – 米労働省が3日発表した5月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が前月比39万人増と、市場予想の32万5000人を上回る伸びとなった。多くの人が労働市場に参入したにもかかわらず、失業率は3.6%と3カ月連続で横ばいで推移。米連邦準備理事会(FRB)が労働市場の引き締まり継続を背景に、積極的な利上げを進めていく可能性を示唆した。

4月分は43万6000人増と、従来発表の42万8000人増から上方改定された。

米国の雇用者数は現在、新型コロナウイルスによるパンデミック(世界的大流行)前の水準まであと82万2000人のところまで回復。レジャー・接客、製造、卸売などを除く多くの部門で、パンデミックで失われた雇用の全てが回復された。

FWDBONDSのチーフエコノミスト、クリストファー・ラプキー氏は「雇用増のペースは速く、米経済はリセッション(景気後退)入りから程遠いところにある」と指摘。「インフレ沈静化に寄与する形で減速していないため、FRBは引き続き対応しなければならない」と述べた。

<レジャー・接客など増加、小売は減少>

業種別の雇用者数は、レジャー・接客が8万4000人増と、全体の伸びを主導。レストラン・バーが4万6000人増加したことで押し上げられ、パンデミック前の2020年2月の水準まであと130万人のところまで回復した。

専門職・企業サービス、運輸・倉庫も大きく増加。建設は3万6000人増加した。製造は1万8000人増。パンデミック前の水準まであと1万7000人となった。

政府は5万7000人増加した。

一方、小売は6万1000人減。総合小売が3万2700人減少したことが響いた。小売り大手のウォルマートやターゲットなどは高インフレで収益が圧迫されているとしているほか、アマゾン・ドット・コムは一部で過剰雇用が見られると報告している。

時間当たり平均賃金は前月比0.3%上昇。伸びは前月から横ばいだった。前年同月比では5.2%上昇と、前月の5.5%から減速。伸びの鈍化はカレンダー要因のほか、管理職の賃金の伸びが減速したことを反映したとみられる。

一部のエコノミストは、伸びが鈍化したことでインフレがピークに達した可能性があると指摘。ただ、キャピタル・エコノミクス(ニューヨーク)の米国担当シニアエコノミスト、マイケル・ピアース氏は「賃金の伸びが前年比で4%程度まで鈍化しない限り、FRBはインフレ目標達成に向けて大きく前進したと言うことはできない」と述べた。

<労働参加率上昇>

5月は約33万人が労働市場に参入。労働参加率は62.3%と、前月の62.2%からやや上昇した。

「プライム・エイジ」と呼ばれる年齢層の労働参加率は82.6%と、0.2%ポイント上昇。パンデミック前の20年2月の水準回復に0.4%ポイントのところまで回復した。

20歳以上の女性では、約39万7000人が労働市場に参入。労働参加率は58.3%と、前月の58.0%から上昇した。

経済的な事情によりパートタイムで働く人の数は430万人と、29万5000人増加した。

JPモルガン・アセット・マネジメント(ニューヨーク)のチーフ・グローバル・ストラテジスト、デビッド・ケリー氏は「FRBの利上げの影響を吸収するに十分な勢いが米経済にあることが今回の雇用統計で確認された」としながらも、「労働市場への参入が増加する中で、賃金の伸びが緩やかになっていることは、米経済が低インフレ環境下で、ゆっくりと安定した成長路線に落ち着く可能性があることを示している」と述べた。

バイデン大統領は、5月の雇用統計の内容を歓迎するとし、米国民は経済について自信を持ち、力強い位置からインフレを巡る問題に対処できると指摘。今年の米経済成長率は1976年以降で初めて中国を抜く可能性があるとの見方を示した。

ただ、米国の雇用の伸びは将来的に緩やかになるとの見方も示した。