UNITED STATES – JUNE 15: Robert Shiller, chief economist at MacroMarkets LLC and an economics professor at Yale University, speaks during a panel discussion in New York, U.S., on Monday, June 15, 2009. The event, sponsored by Time Warner Inc., focused on the outlook for the economy. (Photo by Jin Lee/Bloomberg via Getty Images)

ノーベル経済学賞受賞者である米エール大学のロバート・シラー教授は、米国がリセッション(景気後退)入りする「可能性は十分ある」とみている。投資家や企業、消費者が景気低迷への懸念を強める中、「自己充足的予言」が少なくともその一因になるとの見方を示した。

  「不安は現実になり得る」とシラー氏は電話インタビューで述べた。同氏の著書には2019年出版の「ナラティブ経済学:経済予測の全く新しい考え方」などがある。

  インフレ加速やその抑制を目指す米金融当局の取り組み強化を背景に、景気後退の可能性を巡る懸念が最近高まっている。多くの企業経営者が米経済への警戒感を表明し、株価も下落。米国ではまた、経済が間違った方向に進んでいるとみる消費者も増えている。これらは全て、消費者と企業が慎重姿勢を一段と強め、景気低迷の種をまくという結果につながり得る。

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Turning Gloomy

Americans consumers are more downbeat than they’ve been for years

Source: University of Michigan

  シラー氏は今後数年のどこかでリセッション入りする確率について、「通常よりもはるかに高い」50%だと予想。

  米金融当局が金利を引き上げるとともに追加利上げへの戦略を示していることも、こうしたシナリオ形成の重要な部分だと、同氏は話した。

  金利軌道が高くなるとの見通しはまず、住宅購入を急ぐ動きにつながり得ると、シラー氏は説明。住宅ローン金利がさらに上昇する前に、買い手が利率を確定しようとするためだという。しかし、不動産市場が崩れれば、前回これが起きた当時の記憶がよみがえる可能性があると続けた。

  さらに、目下の米国民は景気悪化に関する自己充足的予言に屈する可能性が高いとも指摘。米国が全体として新型コロナウイルス禍による「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」に苦しんでいるためだと語った。

原題:Nobel Laureate Shiller Sees ‘Good Chance’ of a US Recession(抜粋)

<参考>自己充足的予言(DIAMOND ONLINEより)

人は自分が心に描く通りの人間になる。自己啓発系の本に頻出する考え方です。社会学に似た考えがあります。社会学者ロバート・K・マートンが提唱した「自己充足的予言」(self-fulfilling prophecy)です。

 人には自分の未来に対する思い込み(予言)があり、それにそった行動をとる傾向があり、結果的に、自分の予言した通りの現実が目の前に現れてくることです。