ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交などウクライナ情勢をめぐる20日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
“ロシア 戦争犯罪の裁判利用し主張を強調” 米シンクタンク分析
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は19日の分析で「ロシア当局は、捕らえたウクライナ兵、特にマリウポリを防衛していた部隊に対する戦争犯罪の裁判を利用して、今回の戦争をめぐるみずからの主張を強調しようとしている」と指摘しました。
「戦争研究所」は、ウクライナのドネツク州の一部を事実上支配する親ロシア派の武装勢力が、ことし8月末までに戦争犯罪の裁判を開くことを計画し、少なくとも裁判のひとつはウクライナ東部のマリウポリで開かれる予定だと伝えられているとして「こうした裁判は、国際法における戦争捕虜を戦争犯罪人として裁こうとする試みであるとともに、ウクライナへの一方的な侵略行為を非ナチ化の作戦だとする、ロシアの偽りの主張を支えようとするものだ」と批判しています。
そして「ロシア当局は、こうした裁判を占領した地域での法的支配を強めるために利用し、厳しい判例を作ることで、ウクライナ軍の士気を低下させようとしているとみられる」と分析しています。
米シンクタンク“セベロドネツクめぐり一進一退の攻防続く”
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は19日に発表した分析で「セベロドネツク市内の支配に向けた作戦は19日はほとんど成果をあげられなかった。ロシア軍が前進するには歩兵部隊などの戦力が不十分だ」と指摘し、セベロドネツクをめぐり一進一退の攻防が続いているとみられます。
NATO事務総長 ロシアの軍事侵攻 長期化の可能性との見方示す
NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は19日に公開されたドイツのメディア「ビルト」とのインタビューの中で、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「われわれはそれが数年にわたるかもしれないという事実に備えなければならない」と述べ、長期化する可能性があるとの見方を示しました。そのうえで「われわれはウクライナへの支援をやめてはならない。軍事支援、それにエネルギーと食料の価格の高騰でコストが高くなったとしてもだ」と述べ、負担にかかわらず支援を継続すべきだと訴えました。
一方でストルテンベルグ事務総長は「NATOはウクライナに直接兵士を送ることはない。加盟国の領土、領海、領空を保障するために兵力を増強している。われわれの立場について誤解を抱かせないためのモスクワに対する明確なメッセージだ」と述べ、ロシアに対して一定の配慮を示しました。
ウクライナ ロシア人入国者のビザ取得免除措置を停止
ウクライナのシュミハリ首相は17日、入国するロシア人にこれまで認めていたビザの取得を免除する措置を停止することを閣議決定したとSNSで明らかにしました。理由についてシュミハリ首相は、ゼレンスキー大統領の意向だとしたうえで「わが国の安全保障や主権、領土の保全について前例のない脅威に対抗するためだ」とし、来月1日から適用されるとしています。
ウクライナ議会 ロシア ベラルーシの出版物輸入禁止法案など可決
ウクライナの議会に当たる「最高会議」は19日、ロシアやベラルーシからの出版物の輸入を禁止する法案やロシア人の歌手などの音楽を公共の場で演奏したり、流したりすることを禁止する法案を相次いで可決しました。今後ゼレンスキー大統領の署名をへて成立する見通しです。
一連の動きはウクライナにおける反ロシア感情の高まりを反映し、ロシアの影響力を排除するねらいがあるとみられます。
ウクライナ支援策など協議 今月末にかけて国際会議
ロシア軍による軍事侵攻が長期化する中、ウクライナへの支援策などについて欧米の首脳らが話し合う一連の国際会議が今月末にかけて開かれます。
このうちEU=ヨーロッパ連合の首脳会議は23日から2日間の日程で開かれ、ウクライナに「加盟候補国」としての立場を認めるかどうか協議する見通しです。
またG7サミット=主要7か国首脳会議は26日から3日間の日程でドイツで行われ、ウクライナへの軍事侵攻で食料危機への懸念が高まる中「食料安全保障」が主要な議題となる見通しです。
そしてNATO=北大西洋条約機構の首脳会談は29日から2日間、スペインで開かれる予定で、岸田総理大臣が日本の総理大臣として初めて出席することにしています。
ゼレンスキー大統領「ロシアの敵対的行動 ヨーロッパにも」
ウクライナのゼレンスキー大統領は19日に公開した動画の中で「侵略者はハルキウ方面とザポリージャ地域にも軍を集めている。彼らは燃料インフラを攻撃し燃料事情を悪化させようとしている」と指摘しました。そして「ドンバスでは激しい戦いが続いている。ロシア軍はそこで最も多くの大砲を使っている」と述べたうえで、東部ルハンシク州の拠点となっているセベロドネツクなどでウクライナ軍が踏みとどまっていると強調しました。
またEU=ヨーロッパ連合の執行機関、ヨーロッパ委員会がウクライナの「加盟候補国」としての立場を認めるよう加盟国に勧告したことについて、今週開かれる首脳会議で協議されるという見通しを示したうえで「本当に歴史的な1週間が始まる」と述べました。さらに「われわれはロシアの敵対的な行動がウクライナだけでなくほかのヨーロッパの国々に対しても、まさに今週強まると予想すべきだ」として、ロシアからの圧力に警戒を呼びかけました。
ロシア国防省 セベロドネツク郊外の集落を掌握したと発表
ロシア軍がウクライナ東部ルハンシク州の完全掌握を目指す中、ロシア国防省はウクライナ側の州内の拠点となっているセベロドネツクについて、郊外の集落を掌握したと発表するなど攻勢をさらに強めています。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻開始から今週24日で4か月となる中、戦闘は長期化しています。ロシア軍はウクライナ東部ルハンシク州の完全掌握に向けてウクライナ側の州内の拠点となっているセベロドネツクを包囲しようと攻撃を続けています。
ロシア国防省は19日、ルハンシク州の親ロシア派勢力とともにセベロドネツク郊外の集落を掌握したと発表しました。
ロシア軍 ウクライナ軍の施設攻撃
ロシア軍は東部ハルキウ州にあるウクライナ軍の戦車の整備施設を短距離弾道ミサイルの「イスカンデル」で攻撃したほか、東部ドニプロペトロウシク州ではウクライナ軍の施設を巡航ミサイル「カリブル」で攻撃し、ウクライナ軍の将校など50人以上を殺害したなどと発表しました。
ロシア軍の攻撃による被害の状況 地元知事がSNSに投稿
ロシア軍はウクライナ東部を中心に各地で攻撃を続けていて、ドニプロペトロウシク州のレズニチェンコ知事は19日、SNSに投稿し、ロシア軍による石油備蓄施設へのミサイル攻撃で大規模な火災が発生しこれまでに2人が死亡したことを明らかにしました。
激戦地となっているルハンシク州のセベロドネツクについて地元のハイダイ知事は19日、ウクライナメディアとのインタビューの内容をSNSに投稿し「セベロドネツクの大部分はロシア軍に掌握されている。セベロドネツクや周辺の地域にロシア軍が戦力を集中させている」としています。
ハイダイ知事はウクライナ側が拠点とするセベロドネツクの「アゾト化学工場」にウクライナ側の兵士とともに子ども38人を含む市民568人が取り残されていると明らかにしていて、ウクライナ側が徹底抗戦する姿勢を示す中、こうした人たちの安全な避難が課題となっています。