24年ぶりの円安が進む中で22日公示された参院選は、金融緩和策の維持を主張する自民・公明両党に対し、円安と物価高を問題視する立憲民主党などが見直しを求める構図だ。来月10日の投開票へ与野党は18日間の選挙戦に入った。
「政府と日銀も全く放置であって、いつ見直すのか」。立憲民主の泉健太代表は21日の党首討論で、政府と日銀が金融緩和策を維持することは物価高の追認だと批判した。
岸田文雄首相は、金融政策は為替だけでなく金利にも影響するため「総合的に判断すべきだ」と述べ、緩和策を維持する姿勢を改めて示した。与党の公明党のほか、日本維新の会、国民民主党も金利上昇による経済への悪影響を理由に緩和維持を主張している。
日本経済新聞社とテレビ東京が17ー19日に実施した世論調査では、岸田内閣の支持率は60%で、5月の調査から6ポイント低下した。円安を背景とした物価上昇について64%が「許容できない」と答えている。政府与党の物価高対策を「評価しない」とした人は69%で、5月から8ポイント上昇した。
SMBC日興証券の森田長太郎チーフ金利ストラテジストは21日付リポートで「野党の支持率低迷を考えると与党優位の構図は変わらない」と指摘。日銀の黒田東彦総裁の「家計許容度」発言が世論の物価高批判をあおったこともあり、予想外の苦戦の場合は「政治サイドから日銀への批判が出てくる可能性もないとは言えない」と分析した。
共同通信によれば、参院定数の半数となる改選124(選挙区74、比例代表50)と、非改選の神奈川選挙区の欠員1を合わせた計125議席を争う。岸田首相は「非改選を含めて与党過半数」が勝敗ラインとしている。
参院選に勝利すれば、岸田首相は国政選挙の予定がなく安定的に政権運営ができる「黄金の3年」を手にすることになる。新しい資本主義もより岸田色が発揮しやすくなる。党首討論では、当初打ち出していた金融所得課税について、子育て世代の所得引き上げなど分配を優先するが、税制調査会での議論は続けると述べた。
SMBC日興証券の丸山義正チーフマーケットエコノミストは20日付リポートで、参院選勝利ならば「名実ともに岸田首相が次期日本銀行総裁を指名する資格を得る」との見方を示した。ただ金融緩和政策は大枠で維持される見通しで、次期総裁には「出口をすぐに目指す人物ではなく、少なくとも当面は金融緩和の継続を志向する人物」が検討されるとみている。