ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。

ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる23日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。

(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)

核兵器禁止条約 初の締約国会議「行動計画」と宣言採択し閉幕

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻によって核兵器が使用されることへの懸念が高まる中で開かれていた、核兵器禁止条約の初めての締約国会議は、日本時間の先ほど23日午後11時半すぎ、核兵器廃絶を目指すための条約の運用の方針をまとめた「ウィーン行動計画」と、「核なき世界」の実現を国際社会に呼びかける宣言を採択し、閉幕しました。

プーチン大統領 BRICSの首脳会議で欧米諸国などを念頭に非難

23日、BRICSの首脳会議にオンライン形式で参加したロシアのプーチン大統領は「一部の国々の身勝手な行動によって、世界経済に問題が起きている。誠実で互恵的な協力によってのみ、危機的状況は打開できる。真に多極的なシステムを作るために、これまで以上にBRICSの指導力が求められている」と述べ、ロシアへの経済制裁を強化している欧米諸国などを念頭に非難し、友好国との結束を重視する姿勢を強調しました。

ロシア軍総司令官 更迭されたか

ロシアがウクライナへの軍事侵攻を始めてから今月24日で4か月となり、戦闘が長期化するなか、4月に軍事侵攻の指揮をとっていたと伝えられた、南部軍管区のトップ、ドボルニコフ氏が総司令官を更迭されたという見方がでています。

ドボルニコフ氏は、2015年からロシアが軍事介入し、多くの市民が犠牲になったシリア内戦で司令官をつとめ、ことし4月、ウクライナ東部の戦況を打開するため、軍事侵攻の指揮をとることになったと伝えられていました。

ロシア軍の動向に詳しい軍事評論家のワレリー・シリャエフ氏は、NHKの取材に対し「情報源によると、ドボルニコフ氏に代わって、事実上、別の人物が指揮している。ロシア軍の軍事政治総局長だ。彼は別の軍事紛争に参加したことがあり、経験がある人物だ」と述べ、ドボルニコフ氏が更迭されたとしたうえで、軍のゲンナジー・ジトコ軍事政治総局長が指揮をとっていると指摘しました。

ジトコ軍事政治総局長は、ドボルニコフ氏と同じくシリアへの軍事介入で司令官をつとめた経験があるということです。

またシリャエフ氏はロシア軍のエリート部隊とされる空てい部隊の司令官も更迭されたという見方も示したうえで「ロシア軍の中で力を発揮できなかった司令官は代えなければならないということだ」として、ロシア軍が態勢の見直しを余儀なくされていると指摘しています。

アメリカのシンクタンク「戦争研究所」も、21日、ウクライナ側の分析として、プーチン大統領がドボルニコフ氏からジトコ氏に交代させたとする見方を示しています。

そのうえで「戦争研究所」は「主要な戦闘の最中での司令官の交代は、ロシア軍の上層部の深刻な危機を物語っている。この劇的な交代が事実であれば、大成功を前にした軍隊がとる行動ではなく戦争を継続しようとするプーチン政権の機能不全が続いていることを示している」と指摘しています。

東部ハルキウ州でロシア軍砲撃相次ぐ 15人死亡

ウクライナの公共放送は、東部ハルキウ州でここ数日、ロシア軍の砲撃が相次ぎ、8歳の女の子を含む15人が死亡したと22日、伝えました。

砲撃された現場の写真では、鉄道の駅とみられる建物の屋根が崩れ落ち、列車の上にがれきが積み重なっています。

また別の建物では、屋根や壁の残がいから煙が上がり、激しい攻撃を受けたものとみられます。

ハルキウ州のシネグボフ知事は「ここ数日、ハルキウ州とハルキウ市への敵の砲撃が増加している。特に工業地帯への攻撃が激しい」と述べ、ロシア軍を非難しました。

避難者受け入れるポーランド支援で寄付金

ポーランドなどの周辺国が多くの避難者を受け入れる中、23日、在日ポーランド商工会議所が現地で避難した人たちを受け入れているキリスト教の団体の東京本部に寄付金を贈呈しました。

東京 世田谷区にあるカノッサ修道女会の東京本部を訪れたのは、在日ポーランド商工会議所のメンバーです。

商工会議所は多くの避難者をウクライナから受け入れているポーランドの人たちの活動を支援しようと日本で募金を集めてきました。

この修道女会のポーランドの支部は、7家族14人を受け入れているということで、商工会議所のメンバーは、集まった寄付金およそ2000万円のうち200万円を贈呈しました。

寄付金は修道女会を通じてポーランドなどに避難している子どもたちの教育費や医療費、就業などのために語学を学んでもらう費用などに充てられるということです。

寄付金を受け取ったカノッサ修道女会日本管区長のヴァレリア・マルティネス修道女は「大変な思いをして避難して来た人が安心して暮らし、自立できるように支援に役立てたいです」と話しています。

在日ポーランド商工会議所のピーター・ロバート・スシツキ会頭は「寄付をしてくれた人たちに感謝します。長期的な支援が必要なのでこれからもいろいろなところに寄付金を贈りたいです」と話しています。

ウクライナ人ジャーナリスト ロシア軍が殺害と調査報告

ウクライナで取材中に行方不明になりその後、遺体で見つかった現地のフォトジャーナリストがロシア軍に殺害されていたとする調査報告書を国際的な団体が公表しました。

ウクライナ人のフォトジャーナリスト、マクシム・レビン氏(40)はことし3月、取材中に行方不明となり、4月1日に首都キーウ近郊の森の中で遺体で見つかっていました。フランスに本部を置く「国境なき記者団」は5月から6月にかけて現地で調査を行い、22日報告書を公表しました。

それによりますと遺体の状況などからレビン氏が至近距離から頭部を撃たれていたほか、一緒に遺体で見つかった友人のウクライナ軍兵士は生きたまま焼かれた可能性があることが分かったということです。「国境なき記者団」のクリストフ・ドロワール事務局長は「集められた証拠はレビン氏と友人の兵士がロシア軍に処刑されたことを示していて、拷問された可能性もある。2人を処刑した者の特定に全力で取り組む」とコメントしています。

ゼレンスキー大統領「加盟候補国に」EU会議前に働きかけ

23日からEU=ヨーロッパ連合の首脳会議でウクライナを「加盟候補国」として認めるかが協議される見通しで、ゼレンスキー大統領はEU各国の首脳に電話で協力を働きかけていることを明らかにしました。

ゼレンスキー大統領は22日、動画を投稿し「ウクライナにとってよい決定をしてもらうため、各国の首脳たちに朝からずっと電話をかけ続けている」と述べました。

大統領は「加盟候補国」として認めるよう、23日も電話での働きかけを続けるとしていて、EUとの関係強化に期待を示しています。

核兵器禁止条約会議 オブザーバー参加のNATO各国が発言

核兵器禁止条約の初めての締約国会議では2日目の会合で、条約には参加せずオブザーバーとして出席したNATO=北大西洋条約機構の加盟国が相次いで発言しました。

ノルウェーの代表は、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻によってヨーロッパの安全保障環境が激変したとしたうえで「NATOの核政策を完全に支持している。同時に核軍縮に向け禁止条約の締約国とも建設的な対話を続けたい」と述べ、条約には参加しないものの、締約国との協力を模索していく姿勢を示しました。

またオランダの代表は、禁止条約と核保有国も参加するNPT=核拡散防止条約との関係に言及し「禁止条約がNPTを強化し補完するよう、改めて求める」と述べ、2つの条約が補完し合って現実的な核軍縮が進むよう、改善を求めました。

さらにドイツの代表は「『核なき世界』という目標は完全に共有している。ロシアが核による威嚇を行い、中国が核戦力を強化するいまこそ、同じ目的のために対話と議論を進めたい」と述べ、核廃絶を目指す条約の理念は共有する考えを強調しました。

ロシアと中国 欧米による制裁をともに批判 BRICS首脳会議前に

ロシアのプーチン大統領と中国の習近平国家主席は、23日開かれるBRICS・新興5か国の首脳会議を前にそれぞれビデオメッセージを寄せ、ウクライナ侵攻をめぐる欧米によるロシアへの制裁をともに批判しました。

プーチン大統領は、欧米によるロシアへの制裁を改めて批判したうえで「結果として世界では食料安全保障の問題の深刻化や農作物の価格高騰などが生じている」と述べ、食料危機の責任はあくまで欧米側にあると主張しました。

一方、中国外務省によりますと、習主席は、NATO=北大西洋条約機構の東方拡大を念頭に「軍事同盟を拡大し、他国を犠牲にして自国の安全を追求すれば、必ず安全保障上の苦境に陥るだろう」と述べて、欧米を批判しました。

さらに、習主席は「制裁はブーメランであり、もろ刃の剣であることが何度も証明されている」と述べた上で欧米によるロシアへの制裁は世界に悪影響を及ぼすことになると主張して、プーチン大統領と足並みをそろえました。

ロシア軍 ウクライナ南部への攻撃も強化

ロシア軍は、ウクライナ東部ルハンシク州の完全掌握を目指してウクライナ側の拠点、セベロドネツクなどへの攻撃を続けていて、ロシア国防省は22日、ルハンシク州やドネツク州のウクライナ軍の弾薬庫などを攻撃したと発表しました。

またウクライナ南部への攻撃も強化していて、21日にはミコライウ州の造船所をミサイルで攻撃し、ウクライナ軍の武器などを破壊したとしているほか、オデーサ州の沖合にあり、ロシア軍が攻撃の拠点とするズミイヌイ島の近くでウクライナ軍の無人機を撃墜したと明らかにしました。

これに対しウクライナ側も各地で反撃を試み、激しい戦闘が続いているもようです。

カリーニングラード巡りロシア側が反発

ロシア外務省のリャプコフ外務次官は22日、リトアニアが、ロシア本土と飛び地のカリーニングラードを結ぶ鉄道貨物輸送の制限を始めたことをめぐり、アメリカ国務省のプライス報道官がリトアニアを支持する姿勢を示したことにコメントしました。

この中でリャプコフ外務次官は「今のヨーロッパ情勢におけるアメリカの影響は大きい」としたうえで「NATOやEUがロシアに対して仕掛けるハイブリッド戦争の一環だ」と欧米側を批判しました。

この問題をめぐってはロシアのプーチン大統領の最側近の1人、パトルシェフ安全保障会議書記も「適切な措置が検討されており、近く実施されるだろう」と述べ、対抗措置をとる構えを示しています。

インドネシア大統領 今月末ウクライナとロシア訪問 首脳会談へ

G20=主要20か国の議長国を務めるインドネシアのジョコ大統領は、今月末にウクライナとロシアを相次いで訪問し、首脳会談を行うことになりました。ことし11月の首脳会議への両国の参加などをめぐって意見を交わすとみられます。

インドネシアのルトノ外相は22日の記者会見で、ジョコ大統領が今月末にウクライナとロシアを相次いで訪問し、ゼレンスキー大統領とプーチン大統領のそれぞれと首脳会談を行うと発表しました。

軍事侵攻以降で両国を訪れるアジアで初めての首脳になるとしています。

ルトノ外相は「ウクライナをめぐる状況は困難で複雑な問題を抱えているが、ジョコ大統領は沈黙せず、貢献しようとすることを選んだ」としたうえで、訪問の目的について「人道的な問題に懸念を示し、戦争によって引き起こされ、すべての国に影響が及んでいる食料危機への対応に貢献する」と説明しました。

ロシア外相 イラン大統領と会談

ロシアのラブロフ外相は22日、イランを訪問し、ライシ大統領と会談しました。ロシア外務省によりますと、ラブロフ外相は会談の冒頭で「プーチン大統領は西側の攻撃的で利己的な政策により出てきた現実に適応するため、社会や経済分野などに関して日々議論している」と述べました。

そして「アメリカやその同盟国の身勝手な行動の影響を受けているすべての国は、欧米側の気まぐれに依存しないよう経済関係を調整し直す必要がある」と述べて、ともに欧米から制裁を受けるイランとの関係を強化する姿勢を示しました。ロシア外務省によりますと、ラブロフ外相は、23日までの訪問でアブドラヒアン外相とも会談する予定で、ウクライナ情勢やイランの核合意をめぐって協議するとしています。

ドイツ首相 G7前にウクライナ支援を強調

今月26日からG7サミット=主要7か国首脳会議が始まるのを前に、議長国ドイツのショルツ首相が議会で演説し、各国が結束してロシアへの圧力の強化とウクライナへの兵器の供与などの支援を続ける重要性を訴えました。

ドイツのショルツ首相は議長国として臨むG7のほか、NATO=北大西洋条約機構など一連の首脳会議が始まるのを前に22日、連邦議会で演説し、ウクライナへの軍事侵攻を続けるプーチン大統領を非難したうえで「われわれは武力による秩序ではなく、法に基づく秩序を守るためにこれまで以上に取り組むという姿勢をプーチンに見せつけ続けなければならない」と述べました。

そして「プーチンが大きな過ちを犯したと自覚するまで、制裁、それにウクライナへの兵器の供与と財政的支援をしっかり続けることが非常に重要だ」と述べ、侵攻が長期化する中、各国が結束してロシアへの圧力の強化とウクライナへの兵器の供与などの支援を継続する重要性を訴えました。

また、ショルツ首相は、G7サミットにオンラインで参加するゼレンスキー大統領とウクライナの復興支援も協議するとして「復興にはばく大な資金と時間がかかる。一丸となって取り組まないと実現できない」と述べ、各国に協力を呼びかけました。

モスクワ アメリカ大使館の隣「ドネツク人民共和国広場」に

ロシアの首都モスクワで、22日、アメリカ大使館に隣接する広場の名称が「ドネツク人民共和国広場」に変更されました。

モスクワ市によりますと、これに伴い、アメリカ大使館の住所は「ドネツク人民共和国広場1番」になったということで、大使館の周辺には早速新しい地名がロシア語で書かれた看板が掲げられていました。

「ドネツク人民共和国」とは、ウクライナ東部ドネツク州で親ロシア派の武装勢力が名乗っている地域の名称で、ロシアのプーチン大統領はことし2月、この地域を、独立国家として一方的に承認しました。

親ロシア派の武装勢力は、その後、ウクライナに軍事侵攻したロシア軍とともに、戦闘を続けています。4年前にはアメリカで、首都ワシントンにあるロシア大使館の前の通りの名称が、プーチン政権を批判し、2015年、何者かに殺害された野党指導者の名前をとって「ボリス・ネムツォフ・プラザ」と名付けられました。

このときロシアでは、対抗措置としてモスクワのアメリカ大使館前の通りの名称を変更するよう求める動きも出ていて、今回、ロシア側が地名を変更した背景には、意趣返しの側面もあるとみられます。

キーウ近郊に東部から逃れてきた人の避難所

ウクライナの首都キーウ近郊には、ロシア軍が攻勢を強める東部から逃れてきた人たちの仮設の避難所が設けられ、激しい攻防が続くルハンシク州のセベロドネツクからの住民などがいまも逃れてきています。

このうち、キーウの南のオブーヒウ地区には、仮設のプレハブの避難所が4月上旬につくられ、東部から逃れてきた避難民およそ200人が一時的に身を寄せています。

避難所では、食堂や子どもの遊び場所も設置され、地元のボランティアから寄せられた食料や日用品などが避難してきた人たちに配られていました。

4月中旬に、セベロドネツクから逃れてきたという27歳の女性は「セベロドネツクでは、地下のシェルターを移動し、41日間にわたってシェルターで過ごしました。親族は全員避難しました。ここの避難施設は充実していてとてもありがたいです」と話していました。

同じく、セベロドネツクから逃れてきた63歳の男性は「バスで避難する際に砲撃が始まり、逃げながら集合場所に向かいました。セベロドネツクで生まれ育ちましたが、私の家も破壊され、もはや街は存在しません。先に避難した家族が住む西部のリビウにこれから向かいます」と話していました。

また、2週間前、1歳と7歳の子ども2人と、夫とともに、東部ドネツク州から避難してきた29歳の母親は「電気も水道も、ガスもなく、砲撃が続いて、子どものことが心配でした。車やバス、列車を乗り継いで、丸2日かけて避難しましたが、おむつを替える余裕もなく、大変でした。こちらに避難してから、家が破壊されたと聞き、なんとか間に合ったという感じです。戦争が早く終わって、故郷に戻りたいですが、家がなくなり、帰る場所もありません」と話していました。

避難所を運営するオブーヒウ地区の行政責任者のオレクサンドル・ゴーモンさんは「住居、食事、衣類などの支援とともに、避難してきた人たちの精神的なサポートが必要です。仕事を見つけるための支援も続けていきたい」と話し緊急の支援とともに自立に向けた支援の重要性も強調していました。