ロシアによるウクライナに対する軍事侵攻が続いています。
ウクライナの各地でロシア軍とウクライナ軍が戦闘を続けていて、大勢の市民が国外へ避難しています。戦闘の状況や関係各国の外交など、ウクライナ情勢をめぐる28日(日本時間)の動きを随時更新でお伝えします。
(日本とウクライナ、ロシアのモスクワとは6時間の時差があります)
プーチン大統領 侵攻後初の外遊 欧米けん制か
ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ侵攻に乗り出して以降初めてとなる外国訪問を始めました。
旧ソビエトの中央アジアの国々を歴訪して引き締めを図り、対立する欧米側をけん制する思惑もあるとみられます。
プーチン大統領 侵攻後初の外遊 中央アジア諸国へ 欧米けん制
G7首脳声明 ロシア軍事侵攻「違法で不当な侵略だ」と非難
ドイツ南部のエルマウで今月26日から3日間の日程で開かれていたG7サミットは、日本時間の28日夜閉幕し、先ほど一連の会議の成果文書である首脳声明が発表されました。
この中で、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻について「違法で不当な侵略だ」と厳しく非難するとともに「われわれはウクライナの側に立ち、必要な財政的、人道的、そして軍事的支援を提供していく」として、G7としてウクライナ支援に結束して取り組む姿勢を打ち出しました。
そのうえで「ウクライナの防衛を支援し、自由で民主的な未来を確保するため、関係国や関係機関と調整する用意がある」として、ウクライナの将来的な安全保障の強化に向け、支援する方針を示しました。
バイデン大統領の家族など25人 入国禁止に ロシア外務省
ロシア外務省は28日、ウクライナ情勢をめぐってアメリカから制裁を科されていることに対する報復措置として、バイデン大統領のファーストレディー、ジル夫人や娘のアシュリーさんを含む25人のアメリカ市民をロシアへの入国禁止措置のリストに新たに追加したと発表しました。
ロシアが入国禁止措置のリストに加えたアメリカ市民は、バイデン大統領を含めすでに1000人を超えていて、アメリカへのけん制を繰り返しています。
国連安保理 緊急会合開催へ
国連の安全保障理事会は、28日午後、日本時間の29日午前に緊急会合を開くことを決めました。
6月の議長国、アルバニアのジャチカ外相は27日、自身のツイッターに「ウクライナのショッピングセンターに対するロシアの攻撃は、罪のない市民に対するロシアの戦争犯罪の一つだ。状況の重大さから安保理議長国として緊急会合を開催する」と投稿しました。
緊急会合では、市民に対する攻撃だとして、欧米のメンバー国が改めてロシアを厳しく非難することになりそうです。
ウクライナ商業施設にミサイル攻撃 少なくとも18人死亡
ウクライナの非常事態庁によりますと、ウクライナ中部・ポルタワ州のクレメンチュクにあるショッピングセンターがロシア軍のミサイル攻撃を受け、これまでに少なくとも18人が死亡し、59人がけがをしたということです。
またウクライナの検察当局は、家族などから40件以上の行方不明の届け出が寄せられているとしています。
けがをした男性「地獄のようでした」
現地からの映像では消防隊による消火作業や救助活動のほか、けがをした人たちが病院で手当てを受けている様子が確認できます。
このうち頭などにけがをした45歳の男性は「やけどをしたり、血まみれになったりした人を大勢見ました。地獄のようでした」と話していました。
また一緒にいてけがをした妻は買い物をしていたところ爆風で吹き飛ばされたとしたうえで「地面にたたきつけられたあと意識がはっきりしませんでした。気が付いたときには2つの大きながれきが覆いかぶさっていて、助けてと叫んでいました」と話していました。
ウクライナ空軍「爆撃機発射のミサイルによるもの」
ウクライナ空軍は27日、ロシアの首都モスクワの南西にあるカルーガ州を飛び立った爆撃機、ツポレフ22M3がウクライナと国境を接するロシア西部クルスク州の上空から発射したミサイルによるものだったと発表しました。
ゼレンスキー大統領「欧州の歴史上 最も挑発的なテロ」
ゼレンスキー大統領は「ロシアによるショッピングセンターへの攻撃はヨーロッパの歴史上、最も挑発的なテロ行為の1つだ」と述べたうえで「このような対象にミサイル攻撃ができるのは完全に常軌を逸したテロリストだけだ。これは誤爆ではなく計算された攻撃だ」としてロシア側を厳しく非難しました。さらに「私はアメリカに対し、ロシアをテロ支援国家に指定するよう訴えた」と述べるとともに、各国に対してロシアへの圧力の強化やウクライナへのミサイル防衛システムの供与などを呼びかけました。
国連安保理 緊急会合へ
ウクライナのショッピングセンターがロシアによる攻撃を受けたことをめぐって国連の安全保障理事会では対応を協議する緊急会合が28日午後、日本時間の29日午前に開かれることになりました。今月の議長国、アルバニアのジャチカ外相は27日、自身のツイッターに「ウクライナのショッピングセンターに対するロシアの攻撃は罪のない市民に対するロシアの戦争犯罪の1つだ。状況の重大さから安保理議長国として緊急会合を開催する」と投稿しました。
アルバニアの国連代表部によりますと、緊急会合でははじめに国連で政治問題を担当する事務次長から最近の現場の状況について報告を受けるということで、その後、各理事国が発言を行う予定です。
ハルキウ ルハンシクでも攻撃
ウクライナでは27日、中部ポルタワ州のショッピングセンター以外にも各地でロシア軍による攻撃が相次ぎました。
ウクライナ大統領府のティモシェンコ副長官によりますと、ウクライナ第2の都市、東部ハルキウの2つの地区が砲撃を受け、5人が死亡、22人がけがをしたということです。また東部ルハンシク州のハイダイ知事によりますと、州内でウクライナ側の最後の拠点とされるリシチャンシクでロシア軍のロケット砲による攻撃があり、8人が死亡、20人以上がけがをしたということです。ハイダイ知事は「市民が給水を受けていたところを攻撃された」としてロシア側を非難しました。
米バイデン大統領 ロシアからの輸入品 関税35%に引き上げと発表
アメリカのバイデン大統領は27日、ロシアからの輸入品に対する関税を35%に引き上げると発表しました。アメリカはロシアからの石油やダイヤモンドの輸入をすでに禁止していますが、残りの輸入品についても市場からの締め出しを強化します。
今回のG7の首脳会議では、各国がロシア産品に高い関税を課すことで得られる収入をウクライナの支援に回す方針が確認されています。
米国防総省高官“ここ数日ロシア軍のミサイル攻撃が激化”
アメリカ国防総省の高官によりますとロシア軍はウクライナの首都キーウのほか西部のリビウ、北部のチェルニヒウ、それに南部のオデーサなど広い範囲に合わせて60発のミサイルを発射したということです。この高官は「この週末は過去数週間に確認した数を上回る攻撃が行われた」と述べ、ロシア軍のミサイル攻撃の勢いに危機感を示しました。
ロシア軍のミサイル攻撃が激しさを増した理由については「正確な狙いはわからない」とする一方
▽G7サミット=主要7か国首脳会議の開催や
▽アメリカが供与した高機動ロケット砲システム=ハイマースがウクライナに到着したことに対する反発の可能性があるとの見方を示しました。
一方、ロシア軍が攻勢を強めている東部ルハンシク州のリシチャンシクについては「ウクライナ側の抵抗によって、ロシア軍は都市を包囲できていない」と分析しました。そしてロシアが掌握したとする南部のヘルソン近郊の情勢についても「ウクライナ側がヘルソン周辺の小さな集落を複数解放した」としてロシア軍への抵抗を強めていると指摘しました。
リトアニアに大規模サイバー攻撃
リトアニア国防省は27日、政府機関や民間企業が大規模なサイバー攻撃を受けていると発表しました。「DDoS攻撃」と呼ばれる手口で、ウェブサイトやサーバーなどに大量のデータを一斉に送り続けることで大きな負荷をかけ、機能停止に追い込むことをねらったとみられます。
リトアニア国防省によりますと、国のデータシステムの一部にアクセスできなくなる被害が出ているものの、関係機関と連携し復旧作業を行っているということです。国防省の担当者は「サイバー攻撃は通信やエネルギー、それに金融機関を標的に数日間続く可能性が高い」と警戒しています。
これに先立つ25日にはロシアのハッカー集団「KILLNET」がSNSに犯行予告ともとれる動画を掲載し「48時間以内にカリーニングラードの封鎖を解除しなければ、リトアニアの500以上の企業がとんでもない状況に陥るだろう」と主張しました。
ロシア政府は隣国のリトアニアが、ロシア本土と飛び地のカリーニングラードを結ぶ鉄道貨物輸送を制限したことに反発を強めてきました。大統領府のウシャコフ補佐官は27日「われわれはこのような非友好的なやり方に対抗する用意があると再三、言ってきた。今後の推移を見守りたい」と述べ、リトアニアや欧米各国をけん制しました。
米大統領補佐官 “先進的防空システム供与へ最終調整”
アメリカのホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は27日、G7サミットが開かれているドイツ南部のエルマウで今後のウクライナへの軍事支援について「先進的な防空システムの供与に向けて、最終調整を行っている」と述べました。
ゼレンスキー大統領の求めに応じて、地対空ミサイルシステムを供与する方針だということです。
ウクライナではロシア軍によるミサイル攻撃が相次ぎ、今月26日にはロシア空軍のミサイルが首都キーウに着弾し少なくとも1人が死亡、6人がけがをしました。
ゼレンスキー大統領 G7の会議にオンラインで出席
ウクライナ政府の発表によりますと27日、G7サミット=主要7か国首脳会議にオンラインで出席したゼレンスキー大統領は各国の首脳にこれまでの支援への感謝を表明しました。その一方でロシアがミサイルによる攻撃を激化させていると説明し、近代的なミサイル防衛システムが必要だと訴えたということです。
またゼレンスキー大統領は、ロシア産の石油の取り引き価格に強制的に上限を設ける措置などを通じてロシアへの圧力を強化することが必要だと強調しました。これに関連して大統領は各国が凍結したロシアに関係する資産を没収する国際的メカニズムを構築すれば、今後ロシア以外の国による他国への軍事侵攻を思いとどまらせる大きな抑止力になると指摘したということです。さらにゼレンスキー大統領はウクライナ産の穀物の輸出再開のための支援を呼びかけたほか、ウクライナの復興に対しても各国の積極的な支援を求めたということです。
モルドバの大統領 キーウ訪問
ロシア軍がウクライナ東部2州の完全掌握を目指して攻勢を強める中、隣国モルドバのサンドゥ大統領は27日、首都キーウを訪れたことを明らかにしました。
サンドゥ大統領は激しい攻撃で大きな被害を受けたボロジャンカや、一時ロシア軍に占拠され多くの住民の遺体が見つかったブチャ、それにイルピンを訪れたということで「私たちが見た暴力と破壊にことばを失った。想像を絶する悲劇だ」というコメントとともに、破壊された建物や町の様子を見て回る写真を自身のツイッターに投稿しました。
モルドバはロシアの強い影響下にある沿ドニエストル地方を抱えるなどロシアに対する警戒感が高まっていて、今月23日に開かれたEU=ヨーロッパ連合の首脳会議でウクライナとともに交渉開始の前提となる「加盟候補国」の立場が認められました。
NATO 即応部隊を30万人規模へと大幅に増強 事務総長
NATO=北大西洋条約機構のストルテンベルグ事務総長は今月29日から首脳会議が行われるのを前に27日、ベルギーの本部で記者会見し「首脳会議では多くの重要な決定が行われNATOは変革するだろう」と述べました。具体的には首脳会議で採択される予定の今後およそ10年のNATOの活動指針などを定めた「戦略概念」で、ロシアの位置づけをこれまでの「戦略的パートナー」から「最も重大で直接的な脅威」へと変更する見通しだということです。そしてストルテンベルグ事務総長は不測の事態にすみやかに対応するNATOの即応部隊を現在の4万人から30万人規模へと大幅に増強することで合意するという見通しを明らかにしました。
ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナについては、ウクライナ軍の装備を旧ソビエト時代のものからNATO加盟国が使用しているものへと移行できるよう長期的に支援するとしています。
またストルテンベルグ事務総長によりますと、北欧のフィンランドとスウェーデンの加盟申請を巡って、これに難色を示しているトルコも含めて3か国の首脳に呼びかけて28日にマドリードで会談するということです。
ウクライナから日本への避難者1420人
出入国在留管理庁によりますと、ウクライナから日本に避難した人は26日時点で1420人となっています。
内訳は
▽ことし4月に政府専用機で避難してきた人が20人、
▽政府が座席を借り上げた民間の航空機で避難してきた人が合わせて137人、
▽そのほかの手段で避難してきた人が1263人です。
性別は
▽男性が355人、
▽女性が1065人となっています。
年代別では
▽18歳未満が326人、
▽18歳以上で60歳以下が899人、
▽61歳以上が195人です。
入国日を月別にみると
▽3月が351人
▽4月が471人
▽5月が332人
▽6月は26日までに266人です。
このうち少なくとも22人はすでに日本から出国しているということです。
避難生活長期化 ニーズに応じた支援を
政府は避難してきた人たちに90日間の短期滞在を認める在留資格を付与し、本人が希望すれば就労が可能で1年間滞在できる「特定活動」の在留資格に変更することができます。
この在留資格に変更すると、住民登録をして国民健康保険に加入したり銀行口座を開設したりすることができ、今月26日時点で1125人が「特定活動」に資格を変更したということです。またこれまでに3人が難民申請を行ったということです。
政府はウクライナから避難した人たちのうち日本に親族などの受け入れ先がない人については一時的な滞在先としてホテルを確保し、受け入れ先となる自治体や企業などを探していて、これまでに23世帯46人の受け入れ先が決まっています。
日本での避難生活が長期化がする中、ことばや就労、教育などについてそれぞれのニーズに応じた支援が求められています。