Japanese yen and U.S. dollar banknotes are arranged for a photograph in Tokyo.Photo: Bloomberg

約24年ぶりの安値水準が続く円相場の今後について、海外勢を中心に円の反転上昇を予想する声が目立ち始めた。一方、国内勢の間ではなお円売りの余地があるとの見方が根強い。

  今年に入り「円売り」は外国為替市場で最も旬なマクロトレードとなってきたが、1ドル=140円の大台が近づく中、同取引が既に行き過ぎかどうかに関心が高まってきた。バンク・オブ・アメリカがまとめた最新のファンド・マネジャー調査によると、円売りは最も限界に達した取引と見なす向きが増えている。  

  6カ月後に126円、1年後に120円まで円が反発すると予想するのはピクテ・ウェルス・マネジメントの為替ストラテジスト、リュック・リュイエ氏だ。同氏はリポートで、円安をけん引してきた内外金利差の拡大余地は限定的と分析。経済見通しの悪化により世界的に金利が抑制されることで、低金利の円にとって潜在的に支援材料になるとみている。

  実際、こうした流れはすでに始まっている可能性がある。日本と米国の5年債実質利回り格差は6月中旬まで拡大した後、縮小に転じており、上昇を続けるドル・円とかい離している。

  ナショナルオーストラリア銀行(NAB)の通貨ストラテジスト、ロドリゴ・キャトリル氏は、米金融当局がインフレの押し下げに成功すればドルは年末ごろにピークを付け、米国の利上げサイクルの休止と日本銀行が刺激策を徐々に解除すると示唆することにより、ドル・円は年末までに130円台前半に向かうと予想。「その前に145円に向けてオーバーシュートする可能性は排除できないが、上昇が大きくなればなるほど、下落も激しくなる」とみている。

  国内勢の一部も呼応する。大和証券の石月幸雄シニア為替ストラテジストも140円を超える円安には懐疑的で、ドル・円は7-9月期にピークを付けた後、年末に135円程度まで下落すると予想する。「世界的なエネルギーの供給不安がすぐ解消するとも思えず、商品市況高が再燃すれば実需の円売りが出やすい面はあるが、米金利先安観との綱引きでもあり、円をショートするチャンスは長くは続かないだろう」と話す。

円弱気派

  一方、「日銀が金融緩和を続けているので、円安は仕方がない」と、外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は話す。今後米金利が上昇すればドル・円ももう少し上がる余地があるとし、「142円程度で天井を打つ」ことをメインシナリオに、場合によっては147円まで円安が進む可能性があると予想。「円をショートするチャンスはまだある。逆張りはまだ早い」とみる。

  ニッセイ基礎研究所の上野剛志上席エコノミストも「遠からず日本だけがマイナス金利国になり、円が調達通貨の筆頭になる」中で、「ドル高の転換が起きるまでは円売り回転が効く」と指摘する。米国のインフレのピークアウト、将来の利下げや景気後退のさらなる織り込みといったドル安材料が出てくるのは9月以降で、それまでは日本の貿易赤字を背景に143~145円までいく可能性があるとみている。

  円は今年に入り対ドルで主要10通貨で最悪の約16%下落。日本と海外との金利差や原油価格の高騰による貿易赤字拡大、急速な金融引き締めによるドル高が背景で、今月14日には一時1998年9月以来となる139円台を付けた。

  ファイブスター投信投資顧問の岩重竜宏シニアFXアナリストは、今後数カ月で147円までドル高・円安が進むと予想するが、そこが最終到達点ではないという。「本当のオーバーシュートは150円を抜けてからで、むしろリアルなターゲットは1990年に付けた160円だ」とし、「139円ではまだまだ十分円売りポジションを積み増す余地はある」と話す。

   ブルームバーグが集計したアナリストの予想によると、9月末のドル・円相場の予想中央値は135円、年末は132円となっている。

  HSBCのストラテジスト、ジョーイ・チュー氏はどのような円取引がベストなのかの判断を避け、柔軟に臨む構えだ。同氏は、円はすでに割安であるため、現在の水準で円をショートにすることには慎重になるが、円をロングにするほどの確信があるわけではないと説明。「われわれは7-9月の予想を140円に引き上げたばかりだが、オーバーシュートのリスクは依然ある」と述べた。