[シンガポール 1日 ロイター] – アジア地域の外貨準備高が今年上半期に計3720億ドル目減りした。減少率は6.2%で、半年間としては2015年8月から16年1月以降で最大だった。ドル高に伴って持続的な下げ圧力にさらされている自国通貨を守らなければならない各国の政策担当者にとっては試練の時を迎えた形だ。
最も落ち込んだタイの減少率は10.4%、6月末の準備高は2014億ドルになった。次いでフィリピンが7.3%減の1009億ドル、インドと日本はともに約7%減で、準備高はそれぞれ5292億ドルと1兆2000億ドル。
オックスフォード・エコノミクスのシニアエコノミスト、アレックス・ホームズ氏は「通常ならアジア諸国は通貨安を懸念しない。ほとんどの国は大幅な輸出超過となっているからだ。しかし準備高の減少規模はかなり大きく、不安を誘うだろう。さらに重要なのは大半の国が歴史的な物価高と苦闘し、通貨安が物価高を助長するという問題があることだ」と述べた。
インド準備銀行(RBI、中央銀行)は、通貨ルピーが急落すればさらに外貨準備を取り崩して対応する構えを示している。ただANZのエコノミスト兼外為ストラテジスト、ディラジ・ニム氏は、RBIが外貨準備を急速に、あるいは前のめり的に取り崩すことはないと予想。「米国の政策金利が今のサイクルでどこまで上がるかまだ正確に分からない。だからそうした不確実性のため、RBIは外貨準備を駆使した為替介入政策の運営について慎重さを保つ必要がある」と指摘した。
逆に米政策金利の最終到達水準がより明確に見えてくれば、アジア通貨の下げ圧力は和らぎ、外貨準備を大幅に取り崩す必要も薄れるとみられる。