[東京 31日 ロイター] – 経済産業省は31日、蓄電池産業戦略検討官民協議会を開催し、日本の蓄電池技術や製造基盤強化に関する戦略をとりまとめた。2030年までに蓄電池の製造能力向上を図るとともに、関連人材を3万人確保。世界市場で2割のシェアを獲得するなど、蓄電池の国際競争力向上を図り、脱炭素社会実現に向けた対応を急ぐ。
西村康稔経済産業相は協議会後に「戦略の実行目標の達成に向けて、政府が前面に立ち、施策を総動員する」と述べた。全固体電池などの技術開発に集中投資していた従来の政策を改め、現行世代である液系リチウムイオン電池の投資支援についても上流資源の確保を含めて強化する。
今回の蓄電池産業戦略では、日本のリチウムイオン電池の製造能力を2030年までに国内で150ギガワット時(GWh)、世界で600GWhに向上させる。現状の国内での製造能力はおよそ22GWhとなっている。開発や製造に関連する人材を同年までに3万人確保する。人材育成のため、蓄電池産業が集積する関西で、産学官による「関西蓄電池人材育成等コンソーシアム」を設立する。
600GWhの製造能力(世界全体のシェア20%を達成する水準)を確保するには、年間でリチウム38万トン、ニッケル31万トン、コバルト6万トン、黒鉛60万トン、マンガン5万トンなど、膨大な非鉄金属が必要となる。政府は資源会社への支援のほか、オーストラリア、南米、アフリカ等の資源保有国との連携も強化し、サプライチェーンの構築や鉱山権益の確保も目指す。
かつて日系企業は蓄電池において世界市場で高いシェアを占めていたが、近年は中韓メーカーが勢いを増している。2015年時点での車載用リチウムイオン電池の世界シェアは約51%となっていたが、2020年時点では21%まで低下。定置用リチウムイオン電池も2016年の27%から同5%まで低下しており、電池産業での国際競争力低下が目立つ。
蓄電池は電気自動車(EV)において重要技術となっているほか、再エネの主力電源化のための需給調整に活用できるため、2050年の脱炭素社会実現のために欠かせない。5G基地局やデータセンター、各種IT機器にも用いられるため、社会インフラや経済活動を支える重要物資となっている。