ロシアのプーチン政権は、最大100万人規模とも言われる予備役の部分動員令で動揺が広がる中、世論の引き締めに必死だ。24日も全土で抗議デモがあり、国民の間で厭戦(えんせん)ムードが高まれば、ウクライナ侵攻で戦況を好転させるどころか、逆に足をすくわれかねない。再燃した反戦デモには「愛国デモ」で対抗し、あくまで主戦論をあおっている。
「仲間を見捨てない」。プーチン大統領の政治運動体「全ロシア人民戦線」は23日、こう銘打った官製デモをモスクワ中心部で開催した。ウクライナ東・南部4州でロシア編入に向けた「住民投票」が始まったのに合わせ、国民の「支持」を演出。プーチン氏は姿を見せなかったが「5万人」(警察発表)を動員した。
国内では大統領令が出された21日から、地方を中心に早くも動員が活発化。対象の「経験豊富な予備役」(ショイグ国防相)の男性らが、集団でバスに乗り込む映像などがインターネットに投稿された。軍参謀本部は「初日だけで約1万人が自主的に招集に応じた」と発表し、徴兵忌避の声をかき消すのに躍起だ。
「動員計画を254%上回って達成している」。南部チェチェン共和国の独裁者カディロフ首長は22日、既にウクライナにチェチェン兵2万人を投入してきたと地元メディアで主張。ロシア軍の劣勢を覆すため、地方単位の「自主動員」が持論だったこともあり、プーチン氏への忠誠心を数字でアピールした。
だが、国民の間では一方的な負担の押し付けへの不満がくすぶっている。ペスコフ大統領報道官の息子ニコライ氏が21日、独立系放送局「ドシチ」の生放送で、おとり取材の電話で「翌朝10時に出頭するように」と通告された際、招集に応じない考えを明らかにすると、父子ともども厳しい批判を浴びた。
反発を恐れる政権与党「統一ロシア」幹部は23日、通信アプリに「所属する下院議員4人から、特別軍事作戦(侵攻)に派遣してほしいと申し出があった」と投稿した。もっとも、政治家を動員できるかどうかは「国防省が判断する」とも付け加えており、国民向けのポーズにとどまる可能性も排除できない。