【イスタンブール時事】イランで大規模な抗議デモが始まってから16日で1カ月。女性の頭髪を覆うスカーフの着用強制に伴う死亡事件が発端だったが、弾圧に抵抗する反イスラム体制運動の性格が次第に強まった。イラン当局は「外国の関与」(最高指導者ハメネイ師)を主張して鎮圧を図り、流血に歯止めがかからない。オスロに拠点を置く人権団体「イラン・ヒューマン・ライツ」によると、これまでの死者数は201人に達し、このうち23人は18歳未満だ。
◇「弾圧」で反発拡大
クルド系女性のマフサ・アミニさん(22)は9月16日、女性の服装に目を光らせる「風紀警察」の拘束下で死亡した。アミニさんはスカーフの「不適切な着用」を根拠に連行され、警察による虐待を疑う市民がこの日夜から各地で抗議行動を始めた。
現地メディアによると、イラン当局は今月7日、アミニさんの死因について、8歳の時に受けた脳腫瘍の手術との関連を疑う見解を示し、「殴打が原因ではない」と釈明した。当局は一方でデモ隊への強硬対応を続け、連日の衝突でデモ参加者が相次いで死亡。「弾圧への反発」がさらなる抗議行動を招く状況に陥っている。
8日には国営テレビがハッキングされ、炎に包まれたハメネイ師の映像が「その手は若者の血にまみれている」というメッセージと共に出現。アミニさんやデモで死亡したとされる女性も映し出された。
◇クルド系が権利要求も
デモはイラン西部のクルド系居住区で特に激化している。イランの人権状況を監視するクルド系団体「ヘンゴウ」のソマ・ロスタミ氏は「クルド系には民族固有の言語の使用を含め、何の基本的権利も与えられていない」と強調。「デモの要求は、スカーフに関する権利に限られたものではない」と訴える。
これに対し、ハメネイ師は「デモ隊は(米国やイスラエルなど)敵の協力者だ」と断定。イランの精鋭部隊「革命防衛隊」はデモを通じた「テロ支援」を口実に隣国イラクの北部のクルド人自治区にミサイル攻撃を加え、多数の犠牲者が出た。
トルコのクルド人社会でもイラン政府への反発は広がり、クルド系政党、国民民主主義党(HDP)のオヤ・エルソイ議員は「イラン女性の怒りは、われわれの怒りだ」とイラン市民との連帯の意思を示している。