[ワシントン 4日 ロイター] – 米労働省が4日発表した10月の雇用統計によると、非農業部門雇用者数は市場予想を上回ったが失業率は3.7%に上昇、労働市場の緩みを示した。連邦準備理事会(FRB)による12月以降の利上げ幅縮小が可能なことを示唆する内容となった
非農業部門雇用者数は26万1000人増。9月の増加幅は前回発表の26万3000人から31万5000人に上方修正された。ロイター調査によるエコノミスト予想は20万人増、レンジは12万人ー30万人増だった。失業率は9月の3.5%から3.7%に上昇した。
JPモルガンの米国チーフエコノミスト、マイケル・フェローリ氏は「労働市場の活動ペースは減速しているが、減速ペースは緩やかで、FRBは今回の統計を踏まえ、来月の会合で少なくとも0.50%ポイントの利上げに踏み切るだろう」と述べた。
時間当たり平均賃金は前月比0.4%上昇、9月は0.3%上昇だった。日数の変化が影響したとみられている。
前年比は4.7%増、9月は5.0%増だった。前年の大幅上昇分が計算上、抜け落ちた。他の賃金指標も過熱状態を抜け出しており、インフレ面で良い兆候となっている。
FWDBONDSのチーフエコノミスト、クリストファー・ラプキー氏は「労働市場の強さの根拠は、細部を見ると少し薄れる。FRBの利上げが続いていることから、企業もその影響を受け、雇用の伸びは今後数カ月間は鈍化するだろう」との見方を示した。
労働省によると、9月下旬にフロリダ州などに上陸したハリケーン「イアン」は、10月雇用統計に目立った影響を与えなかったという。
雇用増をけん引したのはヘルスケアで、5万3000人増となった。専門職および企業サービスの雇用は4万3000人増加した。
製造業は3万2000人、レジャー・接客業は3万5000人増となった。しかし、レジャー・接客の雇用は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)前の水準をなお110万人下回っている。
政府部門の雇用は2万8000人増。一方、金融業や小売業など、金利の影響を受けやすいセクターでは小幅な増加にとどまった。
建設業はほぼ横ばい、運輸・倉庫業は8000人増だった。
新設される企業や破綻する企業の数を推測する「バース・デス(生死)」と呼ばれるモデルは、新設される企業の推定値の急増を示した。この要素を考慮した雇用者数は45万5000人と、10月としては最高だった2021年の36万3000人を上回った。
ウェルズ・ファーゴのシニアエコノミスト、サラ・ハウス氏は「18年間の平均である14万人を大きく上回っている」と指摘。「バース・デスモデルに絡むテクニカル要因は、非農業部門雇用者数を実際よりも良く見せている可能性がある」という見方を示した。
家計調査によると、10月は約2万2000人が労働市場から退出した。その結果、労働参加率は62.2%と、9月の62.3%から低下した。
また、27週間以上失業している人の数も増加した。経済的な理由によるパートタイム労働者は前月から18万3000人減少し、366万人となった。
25━54歳の人口に占める雇用者の比率は0.4ポイント低下の79.8%と、20年4月以降で最大の下げとなった。
失業者の就職率は26.7%と、前月の28.6%から低下した。
ワシントンのインディード・ハイアリング・ラボで経済調査のトップを務めるニック・バンカー氏は「就職率は低下しているが、労働市場が死に体になっているのではなく、より正常なペースに戻りつつあるに過ぎないと考えている」との見方を示した。