[シャルムエルシェイク(エジプト) 20日 ロイター] – エジプトで開催された国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)は20日、嵐や洪水など気候変動による直接的な「損失と被害」を受けた途上国を支援する基金の創設で合意した。ただ、災害を引き起こす原因となっている二酸化炭素(CO2)の排出削減に向けた対応を強化するには至らなかった。

当初18日までだった会期は基金の創設を巡り交渉が難航、延長2日目でようやく成果文書の採択にこぎ着けた。

一方、この基金に関する最も議論を呼ぶ決定の多くは来年に持ち越された。「移行委員会」が2023年11月のCOP28での採択を各国に勧告する。どの国が新たな基金に拠出すべきかといった問題に対処し、「財源の特定と拡大」に関する勧告を行う。

ケリー米大統領特使(気候変動問題担当)は、脆弱な国への気候変動の影響に対処する枠組み創設を歓迎するとした上で、地球の気温上昇を1.5度以内に抑える目標を存続させるため、中国など主要排出国に大幅な目標引き上げを引き続き求めていくと表明した。

<化石燃料削減巡る進展なく>

インドや他の一部の代表団が要求した「全ての化石燃料」の使用を段階的に削減するとの文言は、合意に含まれなかった。

代わりに、昨年のCOP26グラスゴーサミットで合意された「未対策の石炭火力の段階的削減と非効率な化石燃料補助金の段階的廃止」に向けた措置を取るよう各国に求める内容となった。

COP26では1.5度の目標維持が協議の焦点となった。各国にはCOP27までに自国の目標を見直すよう求めたが、実行したのは約200カ国のうちごくわずかにとどまった。

多くの国はCOP27について、損失と被害に関する合意を評価する一方、排出削減や化石燃料の使用削減に向けた取り組みが強化されなかったことを批判。一部の国が「グラスゴー気候合意」に盛り込まれた目標を弱めようとしたとの声も聞かれた。

COP26の議長を務めた英国のアロック・シャルマ氏は「グラスゴーでの合意内容を維持するため懸命に闘わねばならなかった」とし、成果文書には25年までの排出ピークアウトも、石炭使用削減の明確な実行も、全化石燃料の段階的廃止に向けた明確な約束も盛り込まれなかったと不満をあらわにした。

成果文書では「低排出」エネルギーや再生可能エネルギーの拡大にも言及しており、天然ガスの使用増大に道を開いたとの懸念の声が一部で出ている。

気候変動による海面上昇リスクに直面するモルディブのシャウナ環境相は全体会議で、損失と被害を巡る進展を認識しつつも、排出削減に関しては成果が得られなかったとし、「25年までの排出ピークアウトに向けてより野心的な取り組みが必要だ。化石燃料を段階的に廃止せねばならない」と訴えた。

非営利団体である世界資源研究所のアニ・デスグプタ代表は「損失と被害に関する進展は心強かったが、今回の決定は重要な新たな措置を取るのではなく、排出量の抑制に関するグラスゴーの文言をほとんど踏襲したもので失望している」と述べた。