[ワシントン 12日 ロイター] – 世界最大級の暗号資産(仮想通貨)交換業バイナンスに無免許の送金や資金洗浄の共謀による米資金洗浄防止法違反、米国の対外制裁に抵触の疑いがあるとして米司法省が2018年から着手している調査を巡り、告発状を提出できるかどうかの判断が省内で割れ、結論が遅れている。消息筋4人がロイターに語った。

消息筋2人によると、少なくとも検察官6人の一部はこれまでに集めた証拠がバイナンスと同社創業者の趙長鵬(チャンポン・ジャオ)最高経営責任者(CEO)ら幹部に対する刑事訴追に進むのを正当化していると考えている。しかし残りはもっと証拠を検討する時間を取るべきだと主張しているという。

バイナンスは2017年創業。最初に調査を始めたのはワシントン州シアトルの連邦検察で、本部の資金洗浄犯罪担当部署と連携し、内国歳入庁(IRS)の犯罪捜査部署も加わった。昨年10月には仮想通貨犯罪の専門チームも幹部の肝いりで創設。

ここ数カ月で仮想通貨のチームとシアトルの検察はバイナンスだけでなく、趙長鵬氏ら幹部数人の告発を準備する十分な証拠がそろったと考えたが、訴追決定に慎重な傾向があるとされる資金洗浄チームで幹部が難色を示し、同チームで不満が高まっているという。司法省の規則では金融機関に対する資金洗浄の告発は資金洗浄チームのトップが承認する必要がある。バイナンスに関しては公式な措置はいかなるものでも他の当該部署の幹部や同省上層部も裁可が必要な可能性が高いという。

複数の消息筋によると、バイナンス側の弁護士はここ数か月の間に司法省側との協議に参加。バイナンス側は、同社が訴追されれば既に低迷している仮想通貨市場が大混乱に陥ると主張。協議の場では司法取引の可能性も俎上にのぼった。和解や単なる捜査終了に至る可能性もあるという。趙長鵬氏は既に昨年にIRSの犯罪捜査部署の元係官少なくとも5人を採用し、防戦の構えという。

ロイターはバイナンスの件でこれまでに司法省などの現職や元職やバイナンスの元顧問ら10人以上に取材し、バイナンスの会社記録も閲覧。同社の資金洗浄防止の社内規制がぜい弱なことや、米制裁を迂回したいイランの仮想通貨企業やロシアの麻薬業者や北朝鮮のハッカーらのために100億ドル以上の支払いを処理した疑いなどを報じてきた。バイナンスは今回、米司法省の内部作業について何か見通しを持っていることはないとしている。