[東京 20日 ロイター] – 日銀は19―20日に開いた金融政策決定会合で、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の下での10年物国債金利の許容変動幅を従来のプラスマイナス0.25%からプラスマイナス0.5%に拡大することを決めた。政策金利は短期、長期ともに据え置いた。金利のより自由な変動を許容することで市場機能の改善を促し、金融緩和の持続性を高める狙い。

今回の決定は全員一致。日銀は声明文で、海外金利の上昇圧力を日本の債券市場が受け続ける中で「市場機能が低下している」と指摘。国債金利は社債や貸出などの金利の基準となるものであり、市場機能の低下が続けば「企業の起債など金融環境に悪影響を及ぼす恐れがある」とした。

日銀は国債買い入れ額を従来の月間7.3兆円から9兆円程度に増やした上で、長期金利の許容変動幅は拡大する。10年物国債金利の許容変動幅を超える上昇を抑制するための連続指し値オペを0.5%で実施することとし「明らかに応札が見込まれない場合を除き、毎営業日実施する」とした。

金利の誘導目標は据え置いた。短期金利は引き続き日銀当座預金のうち政策金利残高にマイナス0.1%の金利を適用。長期金利は、10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、上限を設けず必要な金額の長期国債の買い入れを行う。

長期国債以外の資産の買い入れ方針は維持したが、社債等などの買い入れ残高の調整は「社債の発行環境に十分配慮して進める」とした。

日銀が発表した債券市場サーベイの11月調査では、市場の機能度判断DIが2015年2月調査以降で最低となっていた。日銀が連続指し値オペを継続する中、新発10年債の取引が成立しない日が目立つ一方、現物と先物の裁定機能が働きにくくなっているとの指摘が市場では出ていた。

<コアCPIの前年比、「来年度半ばにかけてプラス幅を縮小」>

日銀は景気について、資源高の影響などを受けつつも、新型コロナウイルス感染症抑制と経済活動の両立が進むもとで「持ち直している」と改めて指摘。先行きについては、資源高や海外経済減速による下押し圧力を受けるとしつつ、感染症や供給制約が和らぐもとで、緩和的な金融環境や政府の経済政策にも支えられ「回復していく」との見方を示した。

消費者物価(除く生鮮食品、コアCPI)の前年比は、今年末にかけて上昇率を高めた後、「来年度半ばにかけてプラス幅を縮小していく」との従来予想を維持した。

リスク要因は、海外の経済・物価動向、ウクライナ情勢、資源価格や内外の感染症の動向と指摘。日本経済を巡る「不確実性はきわめて高い」とした。金融・為替市場の動向や日本経済・物価への影響を「十分注視する必要がある」と改めて表明した。

(和田崇彦、杉山健太郎編集:田中志保)