[東京 26日 ロイター] – 日本国債(JGB)の相場に影響力を持つ海外勢の一部から、売りポジションを維持しているとの声が出ている。日銀の政策修正は「予想的中」となったものの、大きく利益確定には動いていない状況という。マイナス金利の解除やYCC(イールドカーブ・コントロール)政策の撤廃などさらなる政策修正を見込み、来年に入って一段のショートが構築される可能性もある。
<「ショートのままでハッピー」>
UBSアセットマネジメントのトム・ナッシュ氏(シドニー在勤)は、今年4月から先物を使ってJGBをショートしているが、「我々はショートのままでハッピーだ」として、日銀サプライズのあった20日にはJGB関連のトレードは一切しなかったと明かす。
「基本的には(長期金利の許容変動幅)0.25%の上限が0.5%に変わっただけ。水準が変わっても我々が考えるべきことは変わらない。日銀が柔軟化してきて今後は総裁も交代するとなれば、自ずと『ショート継続』との結論に至る。今回の政策修正は物語の終わりではなく、中間ステップにすぎない」と同氏は述べる。
以前からJGBをアンダーウェイトにしていた米大手運用会社の債券ディレクターは「政策修正は見込んでいたが今回の会合とは予想していなかったので、20日は既に休みに入っていた。年末には仕事に戻るが、JGBショート・円ロングの見方は変わらず、取り急ぎポジション変更する必要はない」と、休暇先からロイターの電話取材に答えた。
同ディレクターは「今回はあくまで第1ステップで、今後日銀はよりタカ派的になり、1年から1年半かけてYCC修正やマイナス金利解除に取り組むだろう。今の世界の金利環境から10年金利のフェアバリューは0.75─1%とみているが、まずは0.5%をトライし、黒田総裁の退任後もう一段調整するのではないか」との見方を示した。
<10兆円近いショートがさらに拡大か>
サプライズとなった20日の日銀による政策修正を受けて、国債先物には前週売りが殺到し、148円近辺から一時145円台半ばに下落。新発10年国債利回り(長期金利)は0.25%から一時0.48%に上昇した。
StoneXのアジア地区フィクストインカム・クレジット責任者、ロバート・ホン氏(シンガポール在勤)は「日銀による追加的な政策修正の思惑があるほか、事前のJGBショートのポジションもさほど多くなかったため、利益確定ではなく一段の売りポジションを構築する動きが優勢だ。既にショートしていた複数のプレーヤーが同ポジションを積み増しているという話だ」と指摘する。
日本証券業協会のデータによると、外国人は今年3月─6月と9─10月に計15兆1718億円の長期債を売り越した。7─8月と11月で計4兆4464億円買い越したが、11月末時点では、単純計算で10兆円超のショートポジションが残っている。
<1月5日の入札で売りやすくなるか>
米資産運用大手アライアンス・バーンスタインの日本債券ポートフォリオマネジャー、橋本雄介氏(東京在勤)は、次のポイントは10年債入札が予定されている来年1月5日以降との見方を示す。
橋本氏は「日銀の指し値オペの対象となっていた10年カレント3銘柄は現状、マーケットに在庫がなく売る物がない」と指摘。そのうえで「入札で新しい銘柄が出てくれば流動性が改善し、イールドカーブが10年ゾーンだけへこんだ状況から多少正常化し、10年金利もより実勢を反映して0.5%に近付くだろう」とみる。
1月17─18日には、日銀政策決定会合が予定されている。イベントを前に、外国人投資家によるJGBショートの動きが再び活発化する可能性もある。
(植竹知子 取材協力:Tom Westbrook、Rae Wee 編集:伊賀大記)