[東京 17日 ロイター] – 経団連は17日、2023年春季労使交渉に向けた経営側の基本スタンスを示す「経営労働政策特別委員会報告」(経労委報告)を公表した。日本経済が約30年ぶりの物価上昇局面を迎え、労働団体の連合が3─5%の賃金の底上げに向けた要求水準を示す中、経団連も転換点との位置づけで、賃上げの検討を企業に促した。
経団連の十倉雅和会長(住友化学会長)は経労委報告の序文で、23年は「特別な状況で春季労使交渉を迎えている」と指摘。報告は久々に物価動向についてに言及しており「大きな転換点になると位置づけている」とした。
会見した大橋徹二経団連副会長(コマツ会長)は「物価動向を特に重視しながら、賃金の引き上げと総合的な処遇改善、人材育成の積極的な推進・対応を呼びかけていく」と述べた。
大橋副会長は「賃金引き上げへのモメンタムは強い」と述べた上で「ベアも一つの選択肢であるが、個社の支払い能力やモメンタムのバランスで決めること」と述べた。水準の判断は個社に任せるとした。
連合は基本給の引き上げ幅(ベースアップ)の賃上げ分を3%程度、定期昇給分を含めた賃上げを5%程度とした要求水準を定めている。衣料品店「ユニクロ」を運営するファーストリテイリングは、日本の従業員の報酬水準を最大4割引き上げると発表しており、賃金上昇に向けた動きが活発化している。
連合の要求に関して経団連は「例年より物価高で数字を増やしたロジックは大変理解できるが、数字そのものは個社が決めること」との見解を示した。(佐古田麻優 編集:石田仁志)