[東京 24日 ロイター] – 内閣府は24日、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)について、高成長を前提とした場合は2026年度に黒字化するとの試算を経済財政諮問会議に提出した。26年度の黒字化は昨年7月の試算でも示しており、見通しを維持した。一方、23年度の実質国内総生産(GDP)成長率見通しは1.5%程度とし、前回の1.1%から引き上げた。
内閣府は年に2回、今後10年程度のPBの推移などを含む「中長期の経済財政に関する試算」を諮問会議に提出している。試算では実質2%・名目3%程度の成長を前提とする「成長実現ケース」と、実質・名目ともに0%台半ば程度で推移することを前提とする「ベースラインケース」の2パターンを提示した。
プライマリーバランスは、社会保障関係費や公共事業など毎年の歳出(除く国債費)と税収など歳入との差額で、財政健全化の目安となる。今回の試算(グリーントランスフォーメーション対策の経費・財源を除く)によると、25年度は成長実現ケースで1.5兆円程度の赤字、ベースラインケースで5.1兆円の赤字が残る。
内閣府は、成長実現ケースで1年あたり1.3兆円程度の歳出改革を継続していけば、PB黒字化は25年度へ1年程度の前倒しが視野に入るとしている。一方、ベースラインケースでは32年度においても目標達成は難しい。
国・地方の公債等残高(対GDP比)は23年度に216.0%程度となる見込み。成長実現ケースでは32年度の171.7%程度まで安定的に低下していくシナリオだが、「長期金利の上昇に伴い、低金利で発行した既発債についてより高い金利による借り換えが進むことには留意が必要」とした。長期金利が継続的に0.5%ポイント程度上振れた場合は、32年度のGDP比残高は175.0%となる。
ベースラインケースでは、32年度で216.8%程度(長期金利0.5%ポイント程度上振れなら220.1%)でほぼ横ばいの見通しだ。
<23年度の実質GDP成長率、1.5%程度見込む>
22年度のGDP成長率見通しは、実質1.7%程度、名目1.8%程度とし、前回の実質2.0%程度、名目2.1%程度からそれぞれ引き下げた。コロナ禍からの緩やかな持ち直しが続く一方、エネルギー・食料価格の上昇や世界経済の減速が懸念されている。23年度は、政府の経済対策の効果が本格化することなどから、実質1.5%程度、名目2.1%程度の成長を見込んでいる。
成長実現ケースの先行きでは、「新しい資本主義」の実現に向けて「人への投資」や成長分野への投資が促進され、潜在成長率が着実に上昇する見通し。所得の増加が消費に結びつくことで、実質2%程度、名目3%程度の成長を実現する。
消費者物価上昇率は、成長実現ケースで26年度に2%程度に達し、32年度まで同水準を維持。ベースラインケースでは、23年度を1.7%程度とし、24─32年度にかけて0.6─1.0%程度で推移するシナリオとなっている。
(杉山健太郎)