岸田総裁の日銀新総裁人事に関連した発言が腑に落ちない。以下はその具体例。1月22日付けでBloombergが配信した記事だ。BSテレ東の番組に出演した首相は、政府と日銀のアコード(共同声明)について「新しい日銀総裁が決まってからの話であり、今は何も決まっていない」と発言した。
これが腑に落ちない。新総裁の人事は「アコード」を改訂するかどうかをまずきめ、これを実現するために最適な人を選ぶというのが“王道”ではなかろうか。まず政策があって、それに合わせて人選をする、これが一般的なやり方だろう。
岸田総理の発言はそうではない。まず人事があって、そのあとで「アコード」をどうするか、新しい総裁と話し合って決めると言っている。これだと新しい総裁の考え方はどうでもいいように聞こえる。人柄や経歴、人脈などで決めるのだろうか。
もっと意地悪な見方をすれば、岸田総理は「金融政策に関する知見がない。だから新しい総裁と相談して決める」と言っているようにも解釈できる。
黒田総裁は「アコード」を踏まえて異次元緩和を10年にわたって推進してきた。その金融政策の限界が見え始めている。そのタイミングで総裁交代という人事に直面している。総理は総裁を代えると言っている。人が代われば政策も代わる。
善意に考えれば政策の変更を示唆することは、マーケットに大きな影響を与える可能性がある。それを避けるためにあえて、「政策は人事が決まっていから」と言っている可能性もある。だとすれば一連の発言も納得できる。そうであってほしい。何かと後手に回ってきた総理である。まず人選ありきという判断が、後手にならなければいいが・・・。
<以下はブルームバーグが配信したニュース>
岸田首相、日銀アコード議論は時期尚早-2月に新総裁案を国会へ<bloomberg日本語版>2023年1月22日 10:59 JST
三浦和美
・アコードを見直すかどうかも含め、新しい総裁と話す必要-首相
・「まずは人選。人は代わる」、日銀正副総裁人事で首相
岸田文雄首相は22日放送のBSテレ東の番組で、政府と日本銀行によるアコード(共同声明)について、新しい日銀総裁が決まってからの話であり、今は何も決まっていないと明言した。
首相は、政府・日銀は構造的な賃上げを伴う経済成長と物価安定目標を安定的かつ持続的に維持していくために連携するとの基本方針で取り組んできたと説明。基本的な部分は変わらないとした上で、アコードについては「新しい総裁がまだ決まっていない段階で何か申し上げるのは時期尚早」と語った。
首相は3日に、「アコードを見直すかどうかも含めて新しい日銀総裁と話をしなければならない」と声明を見直す可能性に言及している。
また、首相は日銀の新しい正副総裁人事の政府案は2月中旬に国会へ提出しなければ間に合わないのではないかとの質問に対し、「国会日程を考えると、そういったことだと思う」と発言。「新総裁は4月時点の経済状況をしっかり考えた上で誰がふさわしいのかをこれから判断しなければならない」とし、「まずは人選。人は代わる」と述べた。
黒田東彦総裁は4月8日、雨宮正佳氏と若田部昌澄氏の両副総裁は3月19日にそれぞれ5年の任期満了を迎える。
衆院解散・総選挙、「今は何も決まっていない」
今後の政治スケジュールなどを踏まえ、来年の通常国会までに衆院解散・総選挙を決断する可能性があるかとの質問に対しては、首相は「結論はもちろん今は何も決まっていない」と答えた。
首相は、今は防衛やエネルギー問題、少子化対策、賃上げなど、国民生活に関わる先送りできないさまざまな重要課題に取り組み、「新たな政策を打ち出さなくてはならない時期」だと言明。「こうした課題に取り組みながら、適切な選挙の時期、国民の審判をいただく時期を考えていかなければならない」と話した。
首相は昨年12月、防衛費増の財源を確保するため、2024年度以降に行う増税の実施前に衆院解散・総選挙に踏み切る可能性を示唆。自民党の萩生田光一政調会長も「もし増税を決めるということであれば、国民の皆さんに信を問う。明確な方向性が出た時には、いずれ国民の皆さんにご判断いただく必要も当然ある」と述べていた。
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