- 米企業年金、長年にわたる積立不足を解消-リスク軽減目指す
- 米大手企業100社の年金基金、平均積み立て比率は110%に上昇
米国の大口債券購入者の一部には、経済のソフトランディング説とハードランディング説を巡るウォール街での論争は取るに足りないことかもしれない。経済がどう転ぼうとも、彼らは最大1兆ドル(約130兆円)の資金を持って市場に乗り込む構えだ。
年金基金の柱の一つは、20年間にわたり積み立て不足に苦しんでいたが、ここにきて潤沢な資金を有している。企業の確定給付型年金は、金利急上昇のおかげで珍しく積み立て余剰状態にあり、株式よりも変動の少ない債券に資金を再配分し、業界用語でいう「リスク軽減」を図ることができるようになっている。
今年はすでに「債券の年」と呼ばれているが、こうした年金積み立て余剰の影響は広範囲に及ぶとJPモルガン・チェースやバンク・オブ・アメリカ(BofA)、ウェルズ・ファーゴなど米銀大手のストラテジストらは指摘する。債券に流れ込む資金からみて、そうした動きは始まったばかりだ。
ウェルズ・ファーゴのマクロ戦略責任者、マイク・シューマッハー氏はインタビューで「年金基金は良い状態にある。株式から資金を引き揚げ債券に投資し、資産と負債のマッチを目指すことができる」と指摘。「ここ3、4週間に債券相場が上昇したことの一部はそれで説明される」と付け加えた。
米調査会社ミリマンが米大手企業100社の年金基金を対象にまとめた指数によれば、積み立て比率の平均は約110%で、過去20年余りで最高の水準。これは何年にもわたる低金利で運用難に見舞われ株式市場でのリターン追求を余儀なくされたファンドマネジャーにとっては歓迎すべきニュースだ。
ファンドマネジャーにとって今はこうした不均衡を巻き戻すチャンス。彼らが余剰資金をどう使うかについてはウォール街の見方はほぼ一致しており、債券を買い、株を売ってさらに債券を買うことになるという。
債券への資金流入は今年、株式ファンドへの資金フローを上回っており、昨年7月以降で最も偏った状態にある。
このうち、年金基金によるリスク軽減の動きがどの程度影響しているかは、誰にも分からない。最近の債券高の一部は景気低迷に備えたトレーダーのヘッジに起因するとも言えるが、長期の年金債務に最もマッチする期間長めの債券を彼らが選好していることは明白だ。
JPモルガンのストラテジスト、マルコ・コラノビッチ氏は、リスク軽減のため年金運用者の債券購入が1兆ドルに上ると予測。BofAのブルーノ・ブライジニア氏は5000億ドルの債券買いがほぼ妥当なところだろうと述べた。
原題:Pension Funds in Historic Surplus Eye $1 Trillion of Bond-Buying(抜粋)