[ニューヨーク 10日 ロイター] – 米証券取引委員会(SEC)が提案した株式取引の改革案を巡り、個人投資家が大手金融機関との対決姿勢を鮮明にしている。

SECは昨年12月、個人投資家の株式売買注文についてオークションを通じて執行することを証券会社に義務付ける新規則を提案。顧客注文が最善の形で執行され、取引がより円滑に行われる状況を確保するためで、市場の透明性や公平性、競争を促進する狙いがある。

実現すれば、SECにとっては2005年の「全米市場システム」導入以来の大規模な株式市場構造の改革となる。

SECには、個人投資家からこの改革案に関するコメントが殺到。1300件以上に上るコメントの大半は改革案への支持を表明する内容だ。

テクノロジーの進歩で個人投資家は市場に参加することが容易になったばかりか、団結して声を上げることも容易になった。

個人投資家の権利を主張する団体「ウィー・ザ・インベスターズ」の共同設立者デーブ・ラウア氏は「多くの人々が怒っている」と指摘。「これまでは(取引を仲介する機関が)長年にわたってルールを作ってきた。(個人投資家は)改革を求めている」と述べた。

個人投資家の取引高は市場の取引高全体の20%以上を占めることが多く、総じて10%未満だった18─19年から急増。19年後半に大手証券会社が取引手数料を撤廃したことや新型コロナウイルス流行に伴う在宅勤務や低金利がきっかけだ。

ウィー・ザ・インベスターズは昨年12月以降、SECのゲンスラー委員長と2回のオンライン会議を開催。ゲンスラー氏は、個人投資家から改革案に関する質問を直接受けた。

一方、ニューヨーク証券取引所、シタデル・セキュリティーズ、チャールズ・シュワブは、SECの改革案の一部に反対を表明。オークション・最良執行ルールを導入すれば、市場の流動性が脅かされ、市場の進歩が妨げられる恐れがあると主張している。

3社は共同のコメントで「現在の市場構造を劇的に変える多数の広範な提案をSECが同時に発表したことを懸念している。市場への累積的な影響や意図せぬ結果をもたらす可能性が適切に評価されていない」との見解を示した。

米証券業金融市場協会(SIFMA)も、改革案のさまざまな点に懸念を示し、公聴会の開催やコメント募集期間の延長を求めた。