【カイロ時事】サウジアラビアとイランが10日、外交関係を修復することで合意した。サウジは、米国との間に生じた溝が埋まらず、国際社会での立ち位置を求めて外交を多角化。中国の仲介によるサウジとイランの歩み寄りは、そうした動きを反映している。
バイデン米政権に痛手 中東での影響力低下警戒―サウジとイラン関係修復
ただ、関係修復で合意したとしても、イスラム教スンニ派の盟主を自任するサウジと、イスラム教シーア派の大国イランは長年対立を深めてきた間柄。「代理戦争」の様相を呈し、停戦期限が切れたままになっているイエメン内戦に終止符が打てるかが両国関係の修復を見極める焦点となりそうだ。
サウジ、イラン、中国3カ国の声明によれば、サウジとイランは外交関係を再開し、2カ月以内に両国の大使館を開設する。また「主権の尊重と内政不干渉」を確認した。
サウジは、2018年の記者殺害事件を巡り、実力者ムハンマド皇太子の関与を指摘するバイデン米政権との関係が急速に冷え込んだ。「脱石油」を目指し経済改革を進めるサウジにとっては米国の技術や投資が遠のき、痛手となった。関係改善が見通せない中で、サウジは、米国以外にも活路を探した。
こうした中、昨年12月には、中東への影響力拡大をもくろむ中国の習近平国家主席をリヤドに迎え、両国の「包括的戦略パートナーシップ協定」を締結。米国に代わるサウジの強力なパートナーとして中国が浮かんだ。
サウジとイランの関係を巡っては、サウジが15年にイエメン内戦に軍事介入し、イランが支援する武装組織フーシ派と激しい戦闘に突入。しかし、サウジが多額の戦費を投じてもフーシ派は倒れず、内戦は泥沼化した。
後ろ盾のイランとの対立緩和が必要となったサウジと、核開発問題による制裁に苦しみ、外交的孤立からの「抜け道」を模索するイランは、21年4月から協議を開始。イラクが仲介したこの交渉が下地となり、今回、中国が合意を取り持つことになったとみられる。
一方、サウジは、米国と共にイラン包囲網の構築を目指すイスラエルとの国交正常化への動きがささやかれている。米紙ニューヨーク・タイムズは9日、正常化の見返りとして、サウジが米国に、安全の確約を要求していると報じた。
米シンクタンク「大西洋評議会」のカーミル・アービット非常勤シニアフェローは「サウジはあらゆる場面で日和見主義を取る」と指摘。「一度に幾つもの手を打っている」と語った。