【北京時事】中国の新首相に習近平国家主席の側近で共産党序列2位の李強・政治局常務委員が選ばれた。民間投資を活用して景気の下支えを図るとみられるが、約3年続いた新型コロナウイルスの感染拡大を徹底的に抑え込む「ゼロコロナ」政策で、民間企業の体力は低下。財政も悪化する中、政府は大幅な赤字拡大を容認しない方針で、李氏の打ち出せる選択肢は限られている。
「国有企業の改革をさらに推進し、民間経済の発展や成長を支援しなければならない」。国営新華社通信によると、李氏は全国人民代表大会(全人代)開幕日の5日、出席した雲南省の分科会でこのように強調した。
政策の指針となる今年の政府活動報告には、外資の誘致に注力する方針が盛り込まれる一方、格差是正を目指す社会主義的なスローガン「共同富裕」への言及はなかった。李氏は上海市トップを務めた経験から「市場への理解が深い指導者」(政府関係者)と見なされている。規制緩和を進めつつ、限られた資金をインフラ投資や科学技術などに集中的に投下する可能性が高い。
もっとも、長期的な方向性については不透明感も漂う。中国ではハイテク企業への締め付けを主導してきたともされる習氏への権限集中が進む。李氏も習氏の意向を無視できないとの見方が支配的で、「習氏が社会主義的な政策を求めた場合、李氏は抵抗できるのか」(エコノミスト)との懸念がくすぶる。中央政府での勤務経験もほとんどなく、巨大な官僚組織をうまく運営できるかも未知数だ。