[フランクフルト 16日 ロイター] – 欧州中央銀行(ECB)は16日の理事会で0.5%ポイントの大幅利上げを決定した。利上げは6会合連続。金融市場の混乱で世界的な銀行危機への懸念が高まる中でも、インフレ対応を優先させた。
ラガルドECB総裁は理事会後の記者会見で「インフは過度に長期間、高すぎる水準にとどまる見通し」という認識を示し、「理事会は現在の市場の緊張を注意深く監視し、ユーロ圏の物価安定と金融安定を維持するために必要に応じ対応する用意がある」と言明した。
政策金利は2008年終盤以来の高水準となる。
ECBは声明で「このところ見られている緊張は、インフレと成長に関する基調的な評価を巡る一段の不確実性が存在していることを示している」と指摘。「不確実性が高まる中、インフレ見通しの評価で決定される理事会の政策金利決定において、データに依存するアプローチの重要性が増している」とし、今後の動きは入手されるデータ次第になるとの姿勢を示した。
ラガルド総裁は「不確実性が低下し、われわれの基本シナリオが維持されれば、さらに多くのことに対応しなければならない」としつつも、「基本シナリオが維持される」というのは「大きな注意書き」とし、現時点で将来の金利の道筋を決定するのは不可能という認識を示した。
米シリコンバレー銀行などの破綻やスイスの金融大手クレディ・スイスの経営不安が高まる中、市場では理事会前、0.25%ポイント利上げの確率を50%織り込んでいた。
ラガルド総裁は、銀行セクター全体が08年の金融危機時よりも「はるかに堅固な状況にある」と強調した。
デギンドスECB副総裁も、欧州の銀行業界は強靭とし、米金融機関に対するエクスポージャーは限定されているという認識を示した。
さらに、ラガルド総裁は今後のECBの決定プロセスについて、経済データだけでなく金融データも考慮し、インフレとインフレ抑制に向けた取り組みが実体経済においてどのように展開すかを精査するという「全く新しい」枠組みを提示。同時に「物価安定と金融安定はトレードオフの関係にあるわけではない。今回の決定でECBはこれを実証した」と言明した。
今回の理事会での決定は理事会メンバーの「かなりの多数」によって採択されたと明らかにした。
ECBはまた、ユーロ圏のインフレ見通しを下方修正。今年は5.3%、24年は2.9%、25年は2.1%とし、インフレが25年までECBの目標である2%を上回って推移すると想定した。
一方、今年の成長率見通しは1%とし、従来予想の0.5%から引き上げた。いずれも現在の金融市場における混乱前の状況を踏まえた予測。
ラガルド総裁は、とりわけ信用チャネルを通じ、ECBの金融引き締め効果が経済に波及しつつある兆候が見え始めたと指摘した。
クインテット・プライベートバンクのチーフエコノミスト兼マクロストラテジスト、ダニエレ・アントヌーチ氏は「金融不安のリスクを踏まえると、ECBが事前に示唆している利上げ以降の将来の措置を巡る不透明性は高まっている」と指摘。同時に「金融不安が今後の利上げの道筋を大幅に逸脱させるとは現時点で想定していない。コアインフレはピークに達しておらず、追加利上げは続く見通しだ」と述べた。
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▽ECB、クレディ・スイス救済で大幅利上げに自信=関係筋<ロイター日本語版>2023年3月17日3:26 午前