- 米銀行株が金融危機時の節目に接近、優先株に歴史的な売り
- イエレン氏が債務上限で警告、ウォール街に楽観なし、米CPI予想
先週末に発表された米雇用統計は市場予想を上回り、労働市場の強さが持続していることを浮き彫りにしました。ただエコノミストの間では、これまでの急速な利上げと最近の与信環境を巡る動きを受け、米経済の軟化はこれからだとの声も聞かれます。最新の声明で「与信状況の引き締まり」と「金融政策の遅効性」に言及した米連邦公開市場委員会(FOMC)。ますます難しい情勢判断が求められる局面になりました。以下は一日を始めるにあたって押さえておきたい5本のニュース。
警告シグナル
米銀行株はここ最近の売りでテクニカル上の節目を割り込む恐れがある。ファースト・リパブリック・バンクの破綻を受けて米地銀の支払い能力を巡る懸念が強まりつつある中、金融株が大きく売られており、S&P500種株価指数の金融株指数は2007年のピークを割り込む水準に再び下落する瀬戸際。同指数が07年ピークからの下落分を取り戻すのには、08年の信用危機後10年以上かかった。この水準を割り込めば、株式相場全般にとって不穏なシグナルとなるだろうと、ロッペル・キャピタル・マネジメント創業者でヘッジファンドを運用するジム・ロッペル氏は指摘した。
歴史的ペースでの売り
投資家は優先株を歴史的なペースで手放している。米地銀の健全性を巡る懸念が高まっていることが理由だ。優先証券市場に連動する122億ドル(約1兆6400億円)規模のiシェアーズ上場投資信託(ETF)は先週、週間ベースで5.1%下落。世界金融危機以降で最大級の下げを記録した。ハイブリッド証券の一種である優先株は、株式希薄化を伴わずに資本要件を満たす一助になるため、銀行の間で人気がある。しかし、同市場は地銀の破綻をきっかけとした売りで一変した。銀行の優先株発行は2018年以来の低水準となっており、流通市場での取引が難しいと資産運用会社は指摘している。
イエレン長官の警告
イエレン米財務長官は膠着(こうちゃく)状態に陥っている債務上限問題を解決する上では、議会が上限を引き上げる以外に「良い選択肢はない」とABCの番組で述べた。また、この件で米憲法修正第14条を発動すれば憲法上の危機を招くと警告。修正第14条には公的債務の有効性は「問われてはならない」との記述があり、政権が債券発行を継続できるかを巡って憲法学者やエコノミストの間で解釈が分かれている。マコネル院内総務を含む共和党上院議員43人は6日、無条件で債務上限を引き上げる法案の採決を認めることに反対する考えを書簡で表明していた。
今回は違う結末か
市場は過去40年で最も積極的な米利上げサイクルの最終引き上げを乗り切ったかもしれない。しかし、ウォール街に楽観論はほとんどない。3日の0.25ポイント引き上げが今回の利上げサイクルのピークだったとしても、リスク資産の見通しは暗いようだ。これは最終利上げがほぼ常に株式やリスクの高い社債の上昇につながった過去の引き締めサイクルと著しく対照的。UBSグローバル・ウェルス・マネジメントのシニア株式ストラテジスト、ナディア・ロベル氏は「インフレが依然として高く、銀行セクター内に懸念があり、それを巡る脆弱(ぜいじゃく)さもある。今回は結末が異なるものになるだろう」と述べた。
米CPI予測
10日に発表される4月の米消費者物価指数(CPI)は、コアCPIが前年同月比で5.5%上昇の予想。3月は5.6%上昇だった。基調的な物価上昇圧力のペース鈍化が小幅にとどまっていることが示唆される見通しだ。コアCPIは過去4カ月にわたって5.5-5.7%のレンジで推移しており、インフレの根強さを浮き彫りにしている。今回のCPIはFOMCが6月の政策決定前に入手する2回のCPI統計のうちの1つ目となる。このほか、11日には4月の米生産者物価指数(PPI)も公表される。前月比では物価圧力の強まりが予想されている。
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