【シリコンバレー時事】実業家イーロン・マスク氏による米ツイッター買収から半年以上経過したが、同社の経営は不安定さを拭えずにいる。米メディアによると、企業価値が下がり続け、有料会員も伸び悩んでいるという。マスク氏は、自身の後任となる最高経営責任者(CEO)に米メディア大手の元幹部を起用。収益回復に向け、てこ入れを図る。
ツイッターCEOにヤッカリーノ氏 米メディア大手から起用―マスク氏
米ブルームバーグ通信は5月30日、「ツイッターは今、マスク氏の支払った金額の3分の1の価値しかない」と報じた。資産運用大手フィデリティ・インベストメンツ傘下のファンドは、ツイッター運営企業である米X社の株式を保有するが、開示資料によると評価額を大幅に引き下げた。
昨年10月の買収後、投稿管理の緩和で誤情報や問題発言が横行することを懸念した広告主がツイッターから離反し、中核の広告収入が激減した。マスク氏は、収支を安定させるため、大規模な人員削減を敢行し、今年4月時点の従業員数は買収前から8割減の1500人程度に縮小した。人件費は大幅に圧縮されたが、その後も企業価値の向上の兆しは見えないままだ。
減収を補う手だてとして、有料会員サービスを強化し、長文投稿や長編動画も掲載できるようにした。しかし、有料会員は3月時点で月間利用者のわずか1%未満にとどまっているという。
マスク氏は5月、NBCユニバーサルの元広告部門トップ、リンダ・ヤッカリーノ氏を後任CEOに据えると発表した。同氏の人脈で広告収入を回復させたい考えだ。
一方、6月に入り、幹部の相次ぐ辞任も表面化している。1日には投稿管理担当の責任者が辞めた。同職の辞任は、マスク氏の買収後2人目。ツイッターを巡る混迷は収束の気配が見られない。