[ニューヨーク 3日 ロイター] – 3日の米国債市場で、2─10年ゾーンの「逆イールド(長短利回り逆転)」がさらに拡大し、一時1981年以来42年ぶりの大きさになった。そのため景気後退(リセッション)の予兆とされる逆イールドに再び注目が集まっている。 

逆イールドは「目先金利が上昇する一方、借り入れコスト増大を通じて最終的には経済が打撃を受け、米連邦準備理事会(FRB)は金融緩和を迫られる」と投資家が考えていることを示す。

◎イールドカーブとは

全ての年限の米国債の利回りをつなぐ形で形成されるのがイールドカーブで、通常は右肩上がりとなる。年限が長いほどリスクプレミアムが高くなるからだ。

イールドカーブがスティープ化(急傾斜化)するのは、経済活動が強まって物価と金利が上がると想定される場合。フラット化(平担化)するのは、当面利上げが実施されて経済成長の先行きに悲観的な見方が出てくる場合となる。

◎現在のイールドカーブ

リセッションの到来を占う上で投資家が主に注視するのは、3カ月─10年と2─10年のゾーン。

このうち2─10年ゾーンは昨年7月以降ずっと2年債利回りが10年債よりも高くなっている。

そして今月3日、逆イールドの幅が一時109.50ベーシスポイント(bp)と、1981年以来の大きさに達した。当時は1982年11月まで続いたリセッションの初期で、これは大恐慌以降では最悪の経済悪化局面となった。

オールスプリング・グローバル・インベストメンツのシニア投資ストラテジスト、ブライアン・ジェイコブソン氏は「逆イールド化は珍しくないが、これほど大幅になるのは異例で、われわれは久しく目にしていない」と述べた。

もっとも足元の逆イールド拡大は、6月上旬の連邦債務上限問題決着後に短期国債発行が急増したのに伴うヘッジファンドなどの機関投資家のポジション構築に影響された可能性もある。

またジェイコブソン氏は、逆イールドが深まったからといって必ずしもリセッションがより深刻化したり、期間が長引いたりするわけではないと説明した。

◎逆イールドの意味

逆イールドは、短期金利上昇が見込まれるものの、それで果たしてFRBが経済成長を著しく損なわずにインフレを制御できるのか、と投資家が不安感を抱いている表れとも言える。

サンフランシスコ地区連銀の2018年のリポートによると、1955年以降に起きた各リセッションの半年から2年前には2─10年ゾーンで逆イールドが発生している。このうちシグナルが間違っていたのは1回だけ。

コモンウェルス・ファイナンシャル・ネットワークのグローバル投資ストラテジスト、アニュ・ガガー氏は今年6月、1900年以降に2─10年が逆イールド化したのは計28回あり、うち22回でその後リセッションが到来したと明らかにした。

ガガー氏の分析では、直近6回のリセッションは平均して逆イールドの半年から3年後に始まっている。

前回2─10年が逆イールドになったのは2019年で、その翌年に米国は新型コロナウイルスのパンデミックが引き金になってリセッションに突入した。

◎実体経済への影響

米国の銀行は、短期金利が上昇すると消費者や企業向けの貸出基準金利を引き上げ、彼らの借り入れコストは跳ね上がる。住宅ローン金利も上昇する。

イールドカーブがスティープ化する局面では、銀行は比較的低い金利で資金を調達して、より高い金利で融資ができる。フラット化なら逆に銀行の利ざやは縮小し、融資活動の制約になる場合がある。