【ワシントン時事】米連邦準備制度理事会(FRB)など米金融当局が27日、銀行に対する資本規制の強化案を打ち出した。地銀の相次ぐ破綻で揺らいだ金融システムの安定性を高める目的だ。しかし、商業用不動産市場の悪化など経営環境が厳しさを増す中、金融界は規制で「競争力が低下する」(大手銀首脳)と悲鳴を上げている。
規制案は、保有債券の含み損を考慮して資本の積み増しが求められる対象を、これまでの大手銀から、総資産1000億ドル(約14兆円)以上の中堅銀に広げる。中堅銀シリコンバレー銀行(SVB)の破綻では、債券含み損のリスクが顕在化し、市場の動揺を引き起こした。
ただ、中堅銀は金融不安時にFRBなどから借り入れた資金の利払い負担で収益が圧迫されている。力を入れてきた商業用不動産向け融資の焦げ付きも懸念されている。規制強化に伴う追加資本は業界全体で計1700億ドル(約24兆円)に達し、苦境に拍車を掛けかねない。
規制案はまた、サイバー攻撃や市場変動のリスク評価も厳しくし、それに備えた資本増強も要求。大手行は現在より2割近く資本を増やす必要があると試算されている。
こうした規制案に米銀行政策研究所のベアー最高経営責任者は、しっかりとリスク管理に取り組んできた銀行には「最悪のタイミングだ」と問題視。FRB高官の中にも、過度な規制は「中堅銀に合併や統合を強いる可能性がある」(ボウマン理事)と異論がある。
米当局は、規制強化は2028年7月までに段階的に行われ、利益の積み上げによって「2年以内に対応できる」(バーFRB副議長)と楽観的な見方を示す。しかし金融業界団体は、規制に対応するため銀行が融資を減らすなど、「経済を支える金融サービスの提供を減らす可能性がある」と警告している。