[ニューデリー 4日 ロイター] – インドで9─10日に開かれる20カ国・地域(G20サミット)首脳会議は、ロシアのウクライナ侵攻を巡る西側諸国とロシア、中国などとの溝が一層深まっていることを受け、食料安全保障や途上国債務、気候変動に関する国際的な協力といった懸案解決に向けた話し合いが進展しない恐れが出ている。

今年のG20議長国であるインドの下では、これまで行われた幾つもの閣僚会合でいずれも共同声明を採択できなかったが、サミットで「首脳宣言」を打ち出せるかどうかが注目される。

ただ中国は首脳会議に李強首相が出席すると発表し、習近平国家主席は欠席する見通し。ロシアもプーチン大統領が欠席を表明しており、両国がG20の合意形成に積極的に関与する公算は乏しい。

結局はバイデン米大統領をはじめとする西側諸国の首脳が会議の主導権を握る形となり、G20内の協調を促進するどころか、「分断化」が加速しかねない。

米シンクタンク、ウィルソン・センターの南アジア研究所ディレクター、マイケル・クルーグマン氏は、世界的な脅威となる問題に取り組む上で、西側と非西側のブロックに分かれることは決して望ましくないと指摘した。

議長国インドのモディ首相にとっては、首脳間の合意形成に失敗すれば外交手腕に疑問符が付くことになる。首脳宣言が採択されなければ、2008年の会議発足以降初めての事態だ。

インド政府高官の1人は、昨年インドネシアのバリ島で開催されたG20サミット時点よりも「ロシアと中国の姿勢は強硬になっているので、合意を取り付けるのは非常に難しいだろう」とみている。

昨年のサミットでは、インドネシアのジョコ大統領による働きかけなどにより、土壇場でウクライナでの戦争を巡る西側とロシア双方の主張を盛り込む形で首脳宣言の内容がまとまった。

これに対して別のインド政府高官は、昨年はロシアと中国はもっと柔軟な態度だったものの、戦争開始から1年半が経過した今、当時の首脳宣言で使われた言い回しでさえ各国の同意を得られなくなったと明かした。